都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
三鷹天命反転住宅たてもの見学会
三鷹天命反転住宅の見学会に参加してきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/e4/a6262580e40a1856c1f6b3b0982e363d.jpg)
武蔵境駅からバスに揺られること約10分、三鷹市内の住宅街の幹線道路沿いに突如出現するのが、この色鮮やかな三鷹天命反転住宅です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/27/c90c31dcd73a006b584674ce36ad8765.jpg)
まずはたくさんの窓が幾何学的に合わさり、球体と四角形を積み上げたかような独特の外観が目を引くのではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/7c/b01bde1e7d032adec3c559a82ffa3680.jpg)
また強い黄色や緑色など、否応無しに飛び込んで来る色の強さにも圧倒されます。その姿はまるで細胞分裂する一種の生物のようでした。
設計は言うまでもなく芸術家の荒川修作とマドリン・ギンズです。彼らの作品としては1995年に岐阜県に出来た公園の養老天明反転地が有名ですが、それより約10年後の2005年、ここ東京西郊の地に集合住宅の三鷹天命反転住宅を完成させました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/4f/4675fa3da1dfca70f5ccd8677803077f.jpg)
住宅は全部で9棟ありますが、そのうちの1棟を除き、居住者がおられます。今回は荒川修作事務所の方のガイドのもと、唯一、空いたスペースである301号室に案内させていただきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/78/6d06ff729a963d7c397eed362429a37c.jpg)
中に入ってまず襲われるのは何とも言い難い平衡感覚の喪失です。住宅の内部の床面はフラットではなく斜めになっている上、土踏まずに入り込んでくる凹凸が無数にあり、歩く際にはかなりの注意が必要となります。本来的に日常である住居の中に、そうした非日常の感覚を呼び込むということ自体も、この反転住宅の一つの面白さでした。
(床面)
301号室は3DLKタイプです。円形のキッチンを中心に、その周囲を3つの四角いブロック、つまりは畳部屋と寝室とバスルームと、球体のスペースの4つの部屋が囲む構成となっていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/cb/b7c25becf699e9bceab1a7736f6b3d49.jpg)
畳部屋と寝室は完全な立方体ということもあり、いわゆる通常の居住体験が得られますが、この黄色い球形の部屋だけはあきらかに非日常を志向しているのではないでしょうか。また音の反響が独特で聴覚までを揺さぶってきます。寝転ぶと沈み込むような感覚を得るのも興味深く思えますが、よじ上ったり座ったりしながら、一体この空間をどう使えばよいのかと考えるのもまた楽しいところでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/52/b531b9c0bdde8ad70c711d2ac30886c5.jpg)
据え置きの収納はほぼありませんが、荷物は何と天井に無数に吊るされたフックにかけておくのだそうです。もちろん畳部屋などに本棚などを置くことは可能ですが、その発想には驚かされました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/d0/9355b7006beedeafac6c20443b22061f.jpg)
驚くと言えばもう一つ、バスルームも特異です。シースルーのシャワールームを回り込んだ奥にトイレがあって、空間そのものが他と完全に区切られていません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/c1/3570b6148173530a7c5df37f6cbdc229.jpg)
凸凹で斜めに傾斜した床面と同様、天井もまた同じく斜めになっています。しかしながらその勾配は床と逆です。入った瞬間に感じた若干の目眩は、そうした床と天井の仕掛けにあったのかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/68/cf1746671ad617cfe40b03a5d42f9868.jpg)
住居内には何本もポールがありますが、これはいずれも柱ではなく、あくまでも配管やポールそのものに過ぎないのだそうです。そこにフックをかけて収納にしたり、また単にポールとして上によじ上るかは、使う側の自由に任されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/04/3e279d4de6f88b974dddb654fe47264c.jpg)
シンク、IHヒーター、また冷蔵庫などが円形に並ぶキッチンは意外と効率的かもしれません。まるで宇宙船の司令室のようでした。
あたかもパレットの中の絵具のように色が溢れていますが、使われている色は意外にも14色ほどです。その配色については、一つの場所を見た際に6色が見えるようになっているとのことでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/ea/740b04843cd427c3b164b05ed0263037.jpg)
ディテールがまた凝っています。イヤホンが斜めになって設置されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/57/63fcf4191c917e63f8b828e4982d29e1.jpg)
室内の中の後は屋上を見学しました。上から見下ろすと、有機的に連なる全体像がよく見えてきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/03/6d3ae9b733a9c784bdba89859fca6534.jpg)
三角、四角、さらに球が複雑怪奇に組み合わさっています。なお建物は完全な壁式です。コンクリートの分厚い壁が部屋の一つ一つを覆っています。壁の塗りが細部の細部まで丁寧なのは感心しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/94/44c28616e2dd07835175914a6f7f1dbf.jpg)
いわゆる「死なないための家」とした荒川のコンセプトを深く理解するまでには至りませんでしたが、天命反転、つまりは今まで不可能と思われていたことを可能とするという点については、何となく体感できたかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/a7/ce730604107a58aacb8dd9e56ebb0dec.jpg)
この終始、身体を意識させられる、つまりは知覚を刺激されながら揺さぶられる体験は、通常の住宅ではまず得られることはありませんでした。
見学会はブログ「日毎に敵と懶惰に戦う」の@zaikabouさんに声をかけていただきました。どうもありがとうございました。
【建物概要】 見学会については公式WEBサイトへ。
建物名 三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller
所在地 東京都三鷹市大沢2-2-8
建築設計 荒川修作+マドリン・ギンズ 安井建築設計事務所
建築施工 竹中工務店
竣工 2005年10月
主要用途 共同住宅
構造 壁式プレキャストコンクリート造、鉄骨コンクリート造、一部鉄骨造
建築面積 260.61平方メートル
述床面積 761.46平方メートル
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武蔵境駅からバスに揺られること約10分、三鷹市内の住宅街の幹線道路沿いに突如出現するのが、この色鮮やかな三鷹天命反転住宅です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/27/c90c31dcd73a006b584674ce36ad8765.jpg)
まずはたくさんの窓が幾何学的に合わさり、球体と四角形を積み上げたかような独特の外観が目を引くのではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/63/7c/b01bde1e7d032adec3c559a82ffa3680.jpg)
また強い黄色や緑色など、否応無しに飛び込んで来る色の強さにも圧倒されます。その姿はまるで細胞分裂する一種の生物のようでした。
設計は言うまでもなく芸術家の荒川修作とマドリン・ギンズです。彼らの作品としては1995年に岐阜県に出来た公園の養老天明反転地が有名ですが、それより約10年後の2005年、ここ東京西郊の地に集合住宅の三鷹天命反転住宅を完成させました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/4f/4675fa3da1dfca70f5ccd8677803077f.jpg)
住宅は全部で9棟ありますが、そのうちの1棟を除き、居住者がおられます。今回は荒川修作事務所の方のガイドのもと、唯一、空いたスペースである301号室に案内させていただきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/78/6d06ff729a963d7c397eed362429a37c.jpg)
中に入ってまず襲われるのは何とも言い難い平衡感覚の喪失です。住宅の内部の床面はフラットではなく斜めになっている上、土踏まずに入り込んでくる凹凸が無数にあり、歩く際にはかなりの注意が必要となります。本来的に日常である住居の中に、そうした非日常の感覚を呼び込むということ自体も、この反転住宅の一つの面白さでした。
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301号室は3DLKタイプです。円形のキッチンを中心に、その周囲を3つの四角いブロック、つまりは畳部屋と寝室とバスルームと、球体のスペースの4つの部屋が囲む構成となっていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/cb/b7c25becf699e9bceab1a7736f6b3d49.jpg)
畳部屋と寝室は完全な立方体ということもあり、いわゆる通常の居住体験が得られますが、この黄色い球形の部屋だけはあきらかに非日常を志向しているのではないでしょうか。また音の反響が独特で聴覚までを揺さぶってきます。寝転ぶと沈み込むような感覚を得るのも興味深く思えますが、よじ上ったり座ったりしながら、一体この空間をどう使えばよいのかと考えるのもまた楽しいところでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/52/b531b9c0bdde8ad70c711d2ac30886c5.jpg)
据え置きの収納はほぼありませんが、荷物は何と天井に無数に吊るされたフックにかけておくのだそうです。もちろん畳部屋などに本棚などを置くことは可能ですが、その発想には驚かされました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/d0/9355b7006beedeafac6c20443b22061f.jpg)
驚くと言えばもう一つ、バスルームも特異です。シースルーのシャワールームを回り込んだ奥にトイレがあって、空間そのものが他と完全に区切られていません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/c1/3570b6148173530a7c5df37f6cbdc229.jpg)
凸凹で斜めに傾斜した床面と同様、天井もまた同じく斜めになっています。しかしながらその勾配は床と逆です。入った瞬間に感じた若干の目眩は、そうした床と天井の仕掛けにあったのかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6c/68/cf1746671ad617cfe40b03a5d42f9868.jpg)
住居内には何本もポールがありますが、これはいずれも柱ではなく、あくまでも配管やポールそのものに過ぎないのだそうです。そこにフックをかけて収納にしたり、また単にポールとして上によじ上るかは、使う側の自由に任されていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/04/3e279d4de6f88b974dddb654fe47264c.jpg)
シンク、IHヒーター、また冷蔵庫などが円形に並ぶキッチンは意外と効率的かもしれません。まるで宇宙船の司令室のようでした。
あたかもパレットの中の絵具のように色が溢れていますが、使われている色は意外にも14色ほどです。その配色については、一つの場所を見た際に6色が見えるようになっているとのことでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/ea/740b04843cd427c3b164b05ed0263037.jpg)
ディテールがまた凝っています。イヤホンが斜めになって設置されていました。
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室内の中の後は屋上を見学しました。上から見下ろすと、有機的に連なる全体像がよく見えてきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/03/6d3ae9b733a9c784bdba89859fca6534.jpg)
三角、四角、さらに球が複雑怪奇に組み合わさっています。なお建物は完全な壁式です。コンクリートの分厚い壁が部屋の一つ一つを覆っています。壁の塗りが細部の細部まで丁寧なのは感心しました。
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いわゆる「死なないための家」とした荒川のコンセプトを深く理解するまでには至りませんでしたが、天命反転、つまりは今まで不可能と思われていたことを可能とするという点については、何となく体感できたかもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/a7/ce730604107a58aacb8dd9e56ebb0dec.jpg)
この終始、身体を意識させられる、つまりは知覚を刺激されながら揺さぶられる体験は、通常の住宅ではまず得られることはありませんでした。
見学会はブログ「日毎に敵と懶惰に戦う」の@zaikabouさんに声をかけていただきました。どうもありがとうございました。
【建物概要】 見学会については公式WEBサイトへ。
建物名 三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller
所在地 東京都三鷹市大沢2-2-8
建築設計 荒川修作+マドリン・ギンズ 安井建築設計事務所
建築施工 竹中工務店
竣工 2005年10月
主要用途 共同住宅
構造 壁式プレキャストコンクリート造、鉄骨コンクリート造、一部鉄骨造
建築面積 260.61平方メートル
述床面積 761.46平方メートル
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