「タグチ・アートコレクション GLOBAL NEW ART」 損保ジャパン東郷青児美術館

損保ジャパン東郷青児美術館
「タグチ・アートコレクション GLOBAL NEW ART」
7/12-8/31



実業家でコレクターとしても知られる田口弘氏の現代アートコレクションを展観します。損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「タグチ・アートコレクション GLOBAL NEW ART」へ行ってきました。

震災の影響により延期されたセガンティーニ展(新会期:11/23~12/27)の代替と言うべき展覧会ですが、これがなかなか楽しめる内容に仕上がっています。

コレクターの田口氏はかねてより例えばNYのギャラリーやオークションなどで、主に取り扱い量の多い現代美術の絵画作品を収集しました。今回はそのお披露目の展覧会です。コレクションより選ばれた約40点の作品が展示されていました。

冒頭を飾るのはマリーナ・カポスの「東京の街の光、色」(2007)です。これはカポスが2007年の5月から9月にかけて東京に滞在した際、頭に残ったイメージを12点のパネルに表したものですが、そこには東京タワーや築地市場の魚とともに、「加甫州」云々といった謎めいた漢字の羅列などが登場しています。

そしてその向こうに見えるのが作家の自画像ともいうべき女性の顔です。解体され、一種の記号と化した東京は作家の意識と絡み合い、どこかシュールな印象を与えていました。


アンディ・ウォーホル「ダブル・ミッキーマウス1981」1981年

ポップアートの名品も揃います。好きなリキテンスタインが2~3点出ていたのは嬉しいところでしたが、ウォーホルの「ダブル・ミッキーマウス1981」などもまた見どころの一つでした。

また私としては未知の作家の作品に出会えたのも大きなポイントです。

まずあげたいのは日本で幼少期を過ごした経験を持つヨナタン・メーゼです。なにやら絵具とコラージュの錯綜する激しい作品ですが、その一部にアルファベットでmishimaと記されています。

メーゼは三島の自決した年に生まれています。彼の日本に対する意識などをも伺うことの出来る作品と言えるかもしれません。

さらにポルトガル生まれでユニットを組んで活動するオスゲメオスの「無題」も目を引きます。元々、工事現場を覆う仮設壁なや描かれたという作品には、大きな鳥に乗った2人の人間が登場しています。

これは彼らの空想世界とのことでしたが、その人間こそ自身の投影した姿ではないかと思えました。

TWS渋谷の個展が忘れられないムニーズが充実しています。セザンヌの静物をとある素材で構成、写真で提示した「りんご、桃、洋梨、葡萄、セザンヌ」などを、久しぶりに楽しむことが出来ました。

なおムニーズに関しては一階ロビーでも作品を展示中です。また制作過程の様子をまとめた映像もありました。お見逃しなきようご注意下さい。


奈良美智「サイレント・ヴァイオレンス」1996年

後半は今活躍中の日本人の現代アーティストが登場します。奈良、草間、村上、そしてまさに今、木場の現代美術館で個展開催中の名和と豪華な名前が並びますが、私として一番印象に深いのは大岩オスカールです。

一面の氷に閉ざされた世界からは何とも言い難いはかなさを感じます。その中でも生きるぺんぎんたちの姿はとても健気でした。


名和晃平「PixCell-RGB-Text#1」2009年

そしてこの展覧会、最後でちょっとした嬉しい仕掛けが待っています。ここは実際の会場をご覧いただきたいところですが、さながら「田口さんのお宅訪問」と言っても良いかもしれません。ソファに座ってのんびりとリキテンスタインなどを愛でることが出来ました。

ところでお馴染みの常設の展示室が一新しています。以前は大変に暗く、まるで洞窟の中にいるような圧迫感さえありましたが、今回はかなり明るい空間での展示です。ゴッホ、セザンヌ、ゴーギャンの名品と素直な気持ちで向き合うことが出来ます。こちらの方が私は良いと思いました。

8月31日まで開催されています。

「タグチ・アートコレクション GLOBAL NEW ART」 損保ジャパン東郷青児美術館
会期:7月12日(火)~8月31日(水)
休館:月曜。但し7月18日は開館。
時間:10:00~18:00
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
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