「孫文と梅屋庄吉」 東京国立博物館

東京国立博物館
「孫文と梅屋庄吉 100年前の中国と日本」
7/26-9/4



革命家孫文と、その活動を支えた日本人実業家、梅屋庄吉の軌跡を辿ります。東京国立博物館の本館特別5室で開催中の「孫文と梅屋庄吉 100年前の中国と日本」のプレスプレビューに参加してきました。


「孫文の胸像」 牧田祥哉(1928) 小坂文乃蔵

今年で100周年を迎えた辛亥革命の中心的人物として知られる孫文ですが、まさか彼を全面的に支えた日本人がいたとは思いもよりません。

その人物こそ今回の主人公、梅屋庄吉です。

1868年に長崎で生まれた梅屋は、主に日本の写真業界で活躍した後、香港に写真館を築くなどして、その足場を中国にも広げました。

その過程で関わりを持ったのが孫文です。孫文もマカオで医者をしたり、広州などに拠点を構えていましたが、2歳違いの同世代の彼らはともに20代後半の頃、香港にて出会いを果たしました。

写真から映画産業へと事業の幅を広げた梅屋は孫文の姿勢に共感し、その活動を終生に渡って物心両面で支援していきます。展示ではその交流を資料の他、主に当時の写真で紹介していました。


「賢母の羽織」 孫文筆 20世紀 小坂文乃蔵

梅屋の愛用したという羽織には「賢母」の文字が記されています。これは梅屋夫妻の厚い支援に感謝の念を込めて孫文が書いたものだそうです。

また孫文が鉄道事情の視察のために日本を公式訪問した際、記念写真の中には孫文の傍らにいる梅屋の姿があります。


左上「花屋敷での集合写真」 東京浅草勅使河原撮影(1913) 小坂文乃蔵

その何やらお庭のような場所が、今でこそ遊園地で有名な浅草花屋敷ということに驚きましたが、こうした写真からも彼ら関係を知ることが出来そうです。

梅屋は遺言に孫文との関係を明らかにしないよう記したため、関連の資料などはこれまで殆ど出たことがありませんでしたが、今回は庄吉の曽孫の小坂文乃氏の全面協力のもと、革命から100年という記念すべき年にあわせ、言わば日の目を見る形となりました。

さてこの展覧会は二本立てです。サブタイトルに「百年前の中国と日本」とありますが、梅屋と孫文と同時代の古写真が100点超の規模で登場しています。


「北京城写真」 小川一眞(1901) 東京国立博物館

これらはこれまで東博の倉庫に眠っていたため、梅屋の資料と同様、ほぼ公開されることはありませんでしたが、一通りの整理が終了したとのことで、今回まとめて展示されました。


第3章「幕末明治の日本」展示風景 *「長崎市郷之撮影」など。

もちろん全てオリジナルです。百年前の東京や横浜や長崎、そして上海や北京に南京などが写し出されています。


第4章「近代中国の姿」展示風景 *「亜東印画輯」など。

そもそも全体の出品作の殆どは古写真です。梅屋や孫文についての関心がなくとも、写真ファンにとってはなかなか楽しめる展覧会といえるかもしれません。


ステレオ写真体験コーナー

最後には「万国写真帖」と呼ばれるステレオ写真が紹介されています。ようは3D写真です。特殊な眼鏡を覗き込むことにより被写体が浮き上がってきますが、それを実際に体験出来るコーナーも設けられていました。



梅屋関連の資料は通期での展示ですが、古写真に関しては会期途中でほぼ全て入れ替わります。ご注意ください。

「孫文と梅屋庄吉 100年前の中国と日本」 作品リスト(前期:~8/15、後期:8/16~)

如何せん手狭な特別5室ということで、大幅な展示替え等の制約はありますが、梅屋から同時代の写真を並べた構成のほか、上質感のある照明など、かなり完成度の高い展覧会という印象を受けました。

「革命をプロデュースした日本人/小坂文乃/講談社」

9月4日まで開催されています。

「孫文と梅屋庄吉 100年前の中国と日本」 東京国立博物館・本館特別5室
会期:7月26日(火)~9月4日(日)
休館:月曜日 *8月15日(月)は開館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで) *会期中の金曜日は20:00まで、土・日・祝日は18:00まで開館。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。

注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )