都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」 東京都現代美術館
東京都現代美術館
「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」
6/11-10/2
東京都現代美術館で開催中の「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」へ行ってきました。
このところ何かと評判の良いMOTの常設展ですが、今回もまた一人の「鬼才」(公式WEBサイトより引用)による、大変見応えのある展示が行われています。
その作家とは1972年生まれの画家、もしくは映像作家の石田尚志です。彼の作品は2010年のアーティストファイルにも出品があったのでご記憶の方も多いかもしれませんが、今回も初期のペインティングから最新作の映像までの約20点の作品が紹介されていました。(MOTコレクション出品リスト)
冒頭、石田が10代の頃に描いた油彩もまた重みがありますが、やはり興味深いのは、まるで増殖し、さらには延々と流れ出してゆくようなドローイングの数々です。
まるで波の斑紋のようなドローイングはそれ自体が生き物であるかのようにひたすらにうごめいています。線は生成し、また互いに結びつき、一つの潮となって支持体へ溢れ出しました。
そしてそれが映像と結びついたのが、今回、都現美が収蔵した「絵巻」です。石田はドローイングの動きをさらに引き出すべく、アニメーションの手法をとりますが、その最も早い段階のものがこの作品というわけでした。
ドローイングは作家自身の身体をも巻き込みます。石田はライブ・ドローイングとして屋内、さらには屋外へと繰り出し、時に絵具を壁にぶちまけ、また道へまき散らして、その線を単なる平面の支持体から解放しました。「三つの部屋」における作家の空間との格闘は強烈です。まるで錯乱するかのように絵具をなげうっていました。
そして展示のフィナーレを飾るのが大型のスクリーンを用いた「海の壁 - 生成する庭」に他なりません。ここで石田は10代を過ごした沖縄の海を映像として取り込み、その轟く波の音と運動を、自身のドローイングと交差させて描きだしています。
スクリーンを覆うドローイングの動きとリンクするかのように荒れ狂う海はその破壊的な力を誇示しながら、一方でそれこそ引き波のように消えていく線の痕跡は、どこか海を前にしてただ途方に暮れる人間の存在の弱さを示していました。
「海坂の絵巻」2007
絵画と映像が非常に効果的な形で関わっています。進みゆく「海坂の絵巻」の向こうにはまだ見ぬ無限の地平が広がっていました。
10月2日までの開催です。是非ともおすすめします。
「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」 東京都現代美術館
会期:6月11日(土)~10月2日(日)
休館:月曜日(ただし7/18、8/15、22、29、9/19、26日は開館。)、7/19(火)
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで) *8月・9月の土曜日は20:00まで開館
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」
6/11-10/2
東京都現代美術館で開催中の「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」へ行ってきました。
このところ何かと評判の良いMOTの常設展ですが、今回もまた一人の「鬼才」(公式WEBサイトより引用)による、大変見応えのある展示が行われています。
その作家とは1972年生まれの画家、もしくは映像作家の石田尚志です。彼の作品は2010年のアーティストファイルにも出品があったのでご記憶の方も多いかもしれませんが、今回も初期のペインティングから最新作の映像までの約20点の作品が紹介されていました。(MOTコレクション出品リスト)
冒頭、石田が10代の頃に描いた油彩もまた重みがありますが、やはり興味深いのは、まるで増殖し、さらには延々と流れ出してゆくようなドローイングの数々です。
まるで波の斑紋のようなドローイングはそれ自体が生き物であるかのようにひたすらにうごめいています。線は生成し、また互いに結びつき、一つの潮となって支持体へ溢れ出しました。
そしてそれが映像と結びついたのが、今回、都現美が収蔵した「絵巻」です。石田はドローイングの動きをさらに引き出すべく、アニメーションの手法をとりますが、その最も早い段階のものがこの作品というわけでした。
ドローイングは作家自身の身体をも巻き込みます。石田はライブ・ドローイングとして屋内、さらには屋外へと繰り出し、時に絵具を壁にぶちまけ、また道へまき散らして、その線を単なる平面の支持体から解放しました。「三つの部屋」における作家の空間との格闘は強烈です。まるで錯乱するかのように絵具をなげうっていました。
そして展示のフィナーレを飾るのが大型のスクリーンを用いた「海の壁 - 生成する庭」に他なりません。ここで石田は10代を過ごした沖縄の海を映像として取り込み、その轟く波の音と運動を、自身のドローイングと交差させて描きだしています。
スクリーンを覆うドローイングの動きとリンクするかのように荒れ狂う海はその破壊的な力を誇示しながら、一方でそれこそ引き波のように消えていく線の痕跡は、どこか海を前にしてただ途方に暮れる人間の存在の弱さを示していました。
「海坂の絵巻」2007
絵画と映像が非常に効果的な形で関わっています。進みゆく「海坂の絵巻」の向こうにはまだ見ぬ無限の地平が広がっていました。
10月2日までの開催です。是非ともおすすめします。
「MOTコレクション 特集展示:石田尚志」 東京都現代美術館
会期:6月11日(土)~10月2日(日)
休館:月曜日(ただし7/18、8/15、22、29、9/19、26日は開館。)、7/19(火)
時間:10:00~18:00(入場は17:30まで) *8月・9月の土曜日は20:00まで開館
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分、都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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