「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」 ギャラリーαM

ギャラリーαM
「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」
8/18~9/15



ギャラリーαMで開催中の「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」へ行ってきました。

αMのホワイトキューブに映える光の溜まったモノトーンの木立。

仄かな濃淡と変化、そして滲みやかすれ、さらには書の留めや跳ねのような筆致を巧みに生かして絵画を展開しているのが浅見貴子です。

言うまでもなく素材は和紙や墨、そして胡粉などの日本画のもの。群れて散らばる斑紋や自在な線は、あたかもポロックのドロッピングのような動きすら獲得してはいないでしょうか。


左:「柿の木2012」2012年 墨、顔料、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル
右:「景 muison-so」2010年 墨、胡粉、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル


また画面いっぱいに広がる木と枝葉、その姿を見ていると、先に練馬区美で回顧展のあった船田玉樹の「花の夕」を思い起こします。モチーフはあくまでも樹木に他なりませんが、生み出されたイメージは半抽象とも言えるかもしれません。

さて浅見の絵画、今触れたように、一目見ただけでも、その美しさに惹かれますが、実は技法そのものにも重要な要素があるのを見逃してはなりません。

と言うのも、その斑点や線、よくよく目を凝らして見て下さい。色なり線がかなり複層的に合わさっているにも関わらず、何故か絵具の層が浮き上がっていない、つまりフラットな平面が広がっていることが分かるのではないでしょうか。

実は浅見はかねてより制作に際して画面の裏から筆を重ねているのです。つまり表に現れた絵具はあくまでも裏から筆を置いた故の滲みであるわけです。


「梅1101」(一部)2011年 墨、顔料、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル

ここに浅見の絵画の特異性が見て取れます。ようは通常、絵画において絵具とは、塗りに際して一番最後の層が残っているわけですが、裏から押し込めることで、一番初めの層、言わばフレッシュな絵具のみが現れるように仕立て上げているのです。

だからこそ一見、表で交錯しているように思える墨線、また胡粉の膜も、たとえどれほど複雑になろうとも決して重々しくなりません。

絵具を盛って質感を追求することとは日本画のみならず、絵画表現の一つの伝統とも言えるかもしれませんが、それをあえて排して獲得した新たなイメージ、驚くほどに魅力的でした。

なお一際目立つ最奥部の「双松図」、同じ松を右から左、朝と夕の異なった時間で描いた作品ですが、通常は下の写真にあるような形で展示されています。


「双松図」2012年 墨、顔料、樹脂膠・雲肌麻紙、パネル

実はこれ、本来的には交互に折重なる屏風仕立てで展示する予定だったものの、スペースの都合からそれが叶わなかったのだそうです。

とは言え、浅見さんご自身はこの形も気に入っておられるそうですが、会期最終日、9月15日の15時からは特別に屏風仕立てでも展示されます。そちらもまた面白いのではないでしょうか。

「浅見の筆遣いは、時に雄潭と言ってよいほど力強く鮮烈だが、墨色を通じて立ち現われる光に満ちた確固たる空間構造の秩序は失われていない。」 高階秀爾(ARKO 2010 大原美術館)

光を纏い時に風を感じる自在な浅見の自然への眼差し、是非とも感じとって見てください。



9月15日まで開催されています。ご紹介がおくれましたが、おすすめします。

「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」 ギャラリーαM(@gallery_alpham
会期:8月18日(土)~9月15日(土)
休廊:日・月・祝。
時間:11:00~19:00
住所:千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F
交通:都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩2分、JR総武快速線馬喰町駅西口2番出口より徒歩2分、日比谷線小伝馬町駅2、4番出口より徒歩6分。
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