都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「近江路の神と仏 名宝展」 三井記念美術館
三井記念美術館
「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」
9/8-11/25
三井記念美術館で開催中の「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」へ行ってきました。
東京ではあまり紹介されない近江地方の仏教美術。琵琶湖を取り巻く社寺には貴重な仏像が数多く存在するそうですが、この度、滋賀県内の42の社寺より約100点ほどの仏像、また仏教絵画などが三井記念美術館へとやってきました。
それが「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」です。
早速、惹かれた作品をつらつらと。
「誕生釈迦仏立像」 善水寺 奈良時代
まずはお馴染みの茶道具展示室に集められた比較的小ぶりの仏様、特にやや太めの胴回りでどっしりとした体躯の「誕生釈迦仏立像」(奈良時代)と、琵琶湖の中から出現したという謂れもある「薬師如来立像」(奈良時代・前期展示)は印象深かった方も多いのではないでしょうか。
特に後者の薬師如来は右手で衣の端をきゅっと握っているという変わった出立ち、その可愛らしくもある姿には心奪われました。
また仏具にも注目すべき作品があります。
圧巻なのは延暦寺に伝わる「金銅経箱」(平安時代)です。道長の娘が自ら記した経典を納めた小箱ですが、ともかく周囲を象る華唐草文の線刻の細かさと言ったら比類がありません。
「金銅経箱」 延暦寺 平安時代
平安金工の最高傑作としても名高い作品とのことですが、あまりにも精緻な紋様は単眼鏡が必要なほどでした。
さて一番広いスペースを用いての仏像展示、これが実に壮観です。
まずは石山寺の「如意輪観音半跏像」(平安時代)、仏像本体はもとより、ざっくりと象られた蓮華座も一木造りで出来ているとは俄に信じられないかもしれません。
「千手観音立像」 葛川明王院 平安時代
また多くの装身具を身につけた「千手観音立像」(平安時代)は華麗の一言。手に持つ仏具類の保存状態も良く、その造りをじっくりと味わうことが出来ます。
そしてチラシ表紙も飾った快慶作の「大日如来坐像」(鎌倉時代)も忘れられません。
うっすらと笑みをたたえているかのような顔立ち、そして頭部から足を結ぶ二等辺三角形の安定的なフォルムなど、まさに生気に溢れた堂々たる姿で鎮座していました。
ちなみにこの快慶に由来する慶派は鎌倉期、近江の仏像制作の中心に位置していたそうです。また展示では近江仏で人気の十一面観音立像も4躯ほど出品されていました。
さて展覧会の一つのハイライトと言えるのが土佐光茂筆による「桑実寺縁起」(室町時代)に他なりません。
室町幕府12代将軍足利義晴が発願して描かれたという上下二巻の巻物、ともかく精緻な描写と極彩色の鮮やかな色味に惹かれるのではないでしょうか。
それに琵琶湖に薬師如来が出現したという縁起物的な主題にも興味をそそられます。特に華やかな舞楽のシーンと、その後に琵琶湖に如来が登場するドラマテックな様子、またそれを驚きをもって受け止める人々の生き生きとした描写は目に焼き付きます。もちろん展示ではパネルで物語を解説、ストーリーを追いながら楽しむことが出来ました。
ラストは仏画です。ここではともかく聖衆来迎寺の「六道絵」から「畜生道図」(鎌倉時代)が一推しです。
「六道絵 等活地獄図」 聖衆来迎寺 鎌倉時代 展示期間:10/30~11/25
いわゆる輪廻転生の様子を描いた一幅の作品ですが、その流麗な描き込みは特筆に値するのではないでしょうか。
ただし細部の細部、例えば鬼が猟師を狙い、その猟師が今度は猪を、さらに猪が蛇、また蛇が蛙を口にしている様子などは、余程目を凝らさないと分からないかもしれません。
実はこの日は単眼鏡を忘れてしまったのですが、やはり準備した方が賢明だったと思いました。
なお三井の決して広いとは言えないスペースです。展示替えがあります。会期は前(9/8~9/30)・中(10/2~10/28)・後期(10/30~11/25)の三期制です。特に仏画類はほぼ全作品入れ替わります。
「近江路の神と仏 名宝展」出品目録(PDF)
先ほど挙げた「桑実寺縁起」も途中に巻替え(上巻:9/8-9/30、下巻:10/2-11/25)がある上、「六道絵」も3幅が全て別の会期で展示されます。十分にご注意下さい。
「透彫華籠」 神照寺 平安~鎌倉時代
なお会期中、半券を提示すると、2回目以降は団体割引料金で観覧出来ます。半券は要保存ではないでしょうか。
「十一面観音巡礼/白洲正子/新潮社
11月25日まで開催されています。
「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」 三井記念美術館
会期:9月8日(土)~11月25日(日)
休館:月曜日。但し10月8日は開館、翌10月9日は休館。
時間:9:30~17:30 *毎週土曜日は19:30まで。
料金:一般1200(1000)円、大学・高生700(600)円、中学生以下無料、70歳以上900円。
*( )内は20名以上の団体料金。
場所:中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅A7出口より徒歩1分。JR線新日本橋駅より徒歩5分。
「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」
9/8-11/25
三井記念美術館で開催中の「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」へ行ってきました。
東京ではあまり紹介されない近江地方の仏教美術。琵琶湖を取り巻く社寺には貴重な仏像が数多く存在するそうですが、この度、滋賀県内の42の社寺より約100点ほどの仏像、また仏教絵画などが三井記念美術館へとやってきました。
それが「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」です。
早速、惹かれた作品をつらつらと。
「誕生釈迦仏立像」 善水寺 奈良時代
まずはお馴染みの茶道具展示室に集められた比較的小ぶりの仏様、特にやや太めの胴回りでどっしりとした体躯の「誕生釈迦仏立像」(奈良時代)と、琵琶湖の中から出現したという謂れもある「薬師如来立像」(奈良時代・前期展示)は印象深かった方も多いのではないでしょうか。
特に後者の薬師如来は右手で衣の端をきゅっと握っているという変わった出立ち、その可愛らしくもある姿には心奪われました。
また仏具にも注目すべき作品があります。
圧巻なのは延暦寺に伝わる「金銅経箱」(平安時代)です。道長の娘が自ら記した経典を納めた小箱ですが、ともかく周囲を象る華唐草文の線刻の細かさと言ったら比類がありません。
「金銅経箱」 延暦寺 平安時代
平安金工の最高傑作としても名高い作品とのことですが、あまりにも精緻な紋様は単眼鏡が必要なほどでした。
さて一番広いスペースを用いての仏像展示、これが実に壮観です。
まずは石山寺の「如意輪観音半跏像」(平安時代)、仏像本体はもとより、ざっくりと象られた蓮華座も一木造りで出来ているとは俄に信じられないかもしれません。
「千手観音立像」 葛川明王院 平安時代
また多くの装身具を身につけた「千手観音立像」(平安時代)は華麗の一言。手に持つ仏具類の保存状態も良く、その造りをじっくりと味わうことが出来ます。
そしてチラシ表紙も飾った快慶作の「大日如来坐像」(鎌倉時代)も忘れられません。
うっすらと笑みをたたえているかのような顔立ち、そして頭部から足を結ぶ二等辺三角形の安定的なフォルムなど、まさに生気に溢れた堂々たる姿で鎮座していました。
ちなみにこの快慶に由来する慶派は鎌倉期、近江の仏像制作の中心に位置していたそうです。また展示では近江仏で人気の十一面観音立像も4躯ほど出品されていました。
さて展覧会の一つのハイライトと言えるのが土佐光茂筆による「桑実寺縁起」(室町時代)に他なりません。
室町幕府12代将軍足利義晴が発願して描かれたという上下二巻の巻物、ともかく精緻な描写と極彩色の鮮やかな色味に惹かれるのではないでしょうか。
それに琵琶湖に薬師如来が出現したという縁起物的な主題にも興味をそそられます。特に華やかな舞楽のシーンと、その後に琵琶湖に如来が登場するドラマテックな様子、またそれを驚きをもって受け止める人々の生き生きとした描写は目に焼き付きます。もちろん展示ではパネルで物語を解説、ストーリーを追いながら楽しむことが出来ました。
ラストは仏画です。ここではともかく聖衆来迎寺の「六道絵」から「畜生道図」(鎌倉時代)が一推しです。
「六道絵 等活地獄図」 聖衆来迎寺 鎌倉時代 展示期間:10/30~11/25
いわゆる輪廻転生の様子を描いた一幅の作品ですが、その流麗な描き込みは特筆に値するのではないでしょうか。
ただし細部の細部、例えば鬼が猟師を狙い、その猟師が今度は猪を、さらに猪が蛇、また蛇が蛙を口にしている様子などは、余程目を凝らさないと分からないかもしれません。
実はこの日は単眼鏡を忘れてしまったのですが、やはり準備した方が賢明だったと思いました。
なお三井の決して広いとは言えないスペースです。展示替えがあります。会期は前(9/8~9/30)・中(10/2~10/28)・後期(10/30~11/25)の三期制です。特に仏画類はほぼ全作品入れ替わります。
「近江路の神と仏 名宝展」出品目録(PDF)
先ほど挙げた「桑実寺縁起」も途中に巻替え(上巻:9/8-9/30、下巻:10/2-11/25)がある上、「六道絵」も3幅が全て別の会期で展示されます。十分にご注意下さい。
「透彫華籠」 神照寺 平安~鎌倉時代
なお会期中、半券を提示すると、2回目以降は団体割引料金で観覧出来ます。半券は要保存ではないでしょうか。
「十一面観音巡礼/白洲正子/新潮社
11月25日まで開催されています。
「特別展 琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展」 三井記念美術館
会期:9月8日(土)~11月25日(日)
休館:月曜日。但し10月8日は開館、翌10月9日は休館。
時間:9:30~17:30 *毎週土曜日は19:30まで。
料金:一般1200(1000)円、大学・高生700(600)円、中学生以下無料、70歳以上900円。
*( )内は20名以上の団体料金。
場所:中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅A7出口より徒歩1分。JR線新日本橋駅より徒歩5分。
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