都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「日産アートアワード2013」 BankArt Studio NYK
BankArt Studio NYK
「日産アートアワード2013」
9/18~11/4

BankArt Studio NYKで開催中の「日産アートアワード2013」を見てきました。
本年より日産の主催、次世代のアーティストを支援するために創設された「日産アートアワード2013」。森美術館の南條館長や横浜美術館の逢坂館長らといった5名の審査委員により、8名のアーティストをファイナリストとして選抜。横浜のBankArtにて展示が行われています。
[ファイナリスト]
安部典子
小泉明郎
篠田太郎
鈴木ヒラク
西野達
増山裕之
宮永愛子
渡辺英司
9月25日にはグランプリに宮永愛子、また審査委員特別賞に西野達を選出しての表彰式も開催。宮永氏には日産のゴーン社長から直接トロフィーが授与されました。
会場内は撮影が可能です。というわけで特に印象深かった展示を簡単にご紹介します。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
まずはグランプリの宮永愛子から。作品は「手紙」。お馴染みのナフタリンを用いた作品です。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
トランクは旅を、またナフタリンの変化する姿などは時間も表現。手紙というテーマは貿易港横浜を意識してのことだそうです。海を望むテラスには型になったのか、実際のトランクも積み上げられています。またトランクによって閉じ込められつつ、いつかは取り出されるであろう鍵の存在など、いつもながらにどことなく儚い印象を与えるのもポイントです。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
時に床面へ半ば転がるように置かれたトランク。その持ち主、そして旅の記憶はどこにあるのか。作品の向うに見える海との関係。倉庫跡のバンカートという場所も効果的に活かした展示でした。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
さて会場でともかく目立つのは西野達の「ペリー艦隊」です。ペリー?それは何のことやら、そしてこのパイプの階段なり木材が剥き出しになったボックス、一体どのような作品なのか。訝しく思う方もおられるかもしれません。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
しかしながらパブリックな空間へプライベートを介入させる西野のことです。ここでも半ば強引なまでに、人の言わば最もプライベートな空間を現出させています。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
それがトイレ。ようするに展示室の中にトイレを構築しているのです。しかも張りぼてはなく本物。つまり利用可能なものです。当然、水も流れます。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
そうして見るとボックスの下から伸びる配管がポイントになります。トイレの写真なのでここでは控えますが、配管を追いかけると展示室裏手のトイレへとぶち当たる。実際のトイレの配管と繋がっているのです。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
さらに既存のトイレへ行くと便器が外されていることが分かります。つまり便器はトイレから持ち込まれたものです。ちなみに公衆トイレは横浜が発祥だとか。またタイルにはペリー来襲のイメージも。立ちこめる何とも言い難い臭気がこれまで『あるべき場所」で使われていたことを物語ります。
展示室へと闖入、まるで茶室のように現れたトイレ。いつもながらに刺激的な作品でした。

増山裕之「FRANKFURT-TOKYO」2003/2013年 ライトボックス
さて大掛かりな作品を少し離れて興味深い展示を。それが増山裕之の「FRANKFURT-TOKYO」。澄み切った青の輝く帯状のライトボックス、空から望んだ様々な景色が写されていますが、何とそれはフランクフルトから東京までの11時間のフライト中、20秒毎に撮影した写真とのこと。枚数は900枚です。

増山裕之「01.01.2001-31.12.2001」2002年 DVD
一方で1年の時を一つの映像に落とし込む試みも。長大な時間や広大な空間をどう捉えるかに挑戦した作品。それぞれがぐっと凝縮されていく。増山といえば、ベルファストをテーマとしたαMの展示も思い出しますが、また違った展開で感心しました。

安部典子「渚にて-At the edge of the sea,2013」2013年
安部典子のビデオインスタレーション、「渚にて」もしばし時間を忘れます。穴が奥へと連なっている三層のスクリーン、そこには女性の姿が断片的に映し出されていく。また厚紙で波を象った立体も空間を引き立てていました。

小泉明郎「彼女の祈りが通じた時」2013年 2チャンネル・ビデオ他
バンカートの特徴的なスペースを用いての展示です。どうしてもインスタレーションが映えるのは否ません。(また作家によって展示のボリュームがやや異なるのも気になりました。)ただそれでも会場最奥部でひっそりと上映されている小泉明郎の映像はずしりと重たい作品。深い余韻とともに、考えさせられる面が多分にあります。じっくり構えたいところでした。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
アナウンスに「第一回は現代アートを対象」とありました。開催は隔年です。二回目以降はどのようなジャンルが対象となるのでしょうか。今後の展開にも要注目です。

「日産アートアワード2013」展示室風景
会期中は無休、入場も無料です。11月4日まで開催されています。
「日産アートアワード2013」 BankArt Studio NYK
会期:9月18日(水)~11月4日(月・祝)
休館:無休
時間:11:30~19:00
料金:無料
住所:横浜市中区海岸通3-9
交通:横浜みなとみらい線馬車道駅6出口(赤レンガ倉庫口)より徒歩5分。
「日産アートアワード2013」
9/18~11/4

BankArt Studio NYKで開催中の「日産アートアワード2013」を見てきました。
本年より日産の主催、次世代のアーティストを支援するために創設された「日産アートアワード2013」。森美術館の南條館長や横浜美術館の逢坂館長らといった5名の審査委員により、8名のアーティストをファイナリストとして選抜。横浜のBankArtにて展示が行われています。
[ファイナリスト]
安部典子
小泉明郎
篠田太郎
鈴木ヒラク
西野達
増山裕之
宮永愛子
渡辺英司
9月25日にはグランプリに宮永愛子、また審査委員特別賞に西野達を選出しての表彰式も開催。宮永氏には日産のゴーン社長から直接トロフィーが授与されました。
会場内は撮影が可能です。というわけで特に印象深かった展示を簡単にご紹介します。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
まずはグランプリの宮永愛子から。作品は「手紙」。お馴染みのナフタリンを用いた作品です。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
トランクは旅を、またナフタリンの変化する姿などは時間も表現。手紙というテーマは貿易港横浜を意識してのことだそうです。海を望むテラスには型になったのか、実際のトランクも積み上げられています。またトランクによって閉じ込められつつ、いつかは取り出されるであろう鍵の存在など、いつもながらにどことなく儚い印象を与えるのもポイントです。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
時に床面へ半ば転がるように置かれたトランク。その持ち主、そして旅の記憶はどこにあるのか。作品の向うに見える海との関係。倉庫跡のバンカートという場所も効果的に活かした展示でした。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
さて会場でともかく目立つのは西野達の「ペリー艦隊」です。ペリー?それは何のことやら、そしてこのパイプの階段なり木材が剥き出しになったボックス、一体どのような作品なのか。訝しく思う方もおられるかもしれません。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
しかしながらパブリックな空間へプライベートを介入させる西野のことです。ここでも半ば強引なまでに、人の言わば最もプライベートな空間を現出させています。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
それがトイレ。ようするに展示室の中にトイレを構築しているのです。しかも張りぼてはなく本物。つまり利用可能なものです。当然、水も流れます。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
そうして見るとボックスの下から伸びる配管がポイントになります。トイレの写真なのでここでは控えますが、配管を追いかけると展示室裏手のトイレへとぶち当たる。実際のトイレの配管と繋がっているのです。

西野達「ペリー艦隊」2013年 ミクストメディア
さらに既存のトイレへ行くと便器が外されていることが分かります。つまり便器はトイレから持ち込まれたものです。ちなみに公衆トイレは横浜が発祥だとか。またタイルにはペリー来襲のイメージも。立ちこめる何とも言い難い臭気がこれまで『あるべき場所」で使われていたことを物語ります。
展示室へと闖入、まるで茶室のように現れたトイレ。いつもながらに刺激的な作品でした。

増山裕之「FRANKFURT-TOKYO」2003/2013年 ライトボックス
さて大掛かりな作品を少し離れて興味深い展示を。それが増山裕之の「FRANKFURT-TOKYO」。澄み切った青の輝く帯状のライトボックス、空から望んだ様々な景色が写されていますが、何とそれはフランクフルトから東京までの11時間のフライト中、20秒毎に撮影した写真とのこと。枚数は900枚です。

増山裕之「01.01.2001-31.12.2001」2002年 DVD
一方で1年の時を一つの映像に落とし込む試みも。長大な時間や広大な空間をどう捉えるかに挑戦した作品。それぞれがぐっと凝縮されていく。増山といえば、ベルファストをテーマとしたαMの展示も思い出しますが、また違った展開で感心しました。

安部典子「渚にて-At the edge of the sea,2013」2013年
安部典子のビデオインスタレーション、「渚にて」もしばし時間を忘れます。穴が奥へと連なっている三層のスクリーン、そこには女性の姿が断片的に映し出されていく。また厚紙で波を象った立体も空間を引き立てていました。

小泉明郎「彼女の祈りが通じた時」2013年 2チャンネル・ビデオ他
バンカートの特徴的なスペースを用いての展示です。どうしてもインスタレーションが映えるのは否ません。(また作家によって展示のボリュームがやや異なるのも気になりました。)ただそれでも会場最奥部でひっそりと上映されている小泉明郎の映像はずしりと重たい作品。深い余韻とともに、考えさせられる面が多分にあります。じっくり構えたいところでした。

宮永愛子「手紙」2013年 ナフタリン、樹脂、封蝋、トランク、ミクストメディア
アナウンスに「第一回は現代アートを対象」とありました。開催は隔年です。二回目以降はどのようなジャンルが対象となるのでしょうか。今後の展開にも要注目です。

「日産アートアワード2013」展示室風景
会期中は無休、入場も無料です。11月4日まで開催されています。
「日産アートアワード2013」 BankArt Studio NYK
会期:9月18日(水)~11月4日(月・祝)
休館:無休
時間:11:30~19:00
料金:無料
住所:横浜市中区海岸通3-9
交通:横浜みなとみらい線馬車道駅6出口(赤レンガ倉庫口)より徒歩5分。
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