「バルビゾンへの道」 Bunkamura ザ・ミュージアム

Bunkamura ザ・ミュージアム
「山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道」
10/20~11/18



Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の「山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道」へ行ってきました。

山形市は山寺にある後藤美術館。平成6年、実業家の後藤季次郎氏が収集したヨーロッパ美術品を公開するために開館。とりわけバルビゾン派絵画やアールヌーボーのコレクションで知られています。

その後藤美術館から西洋絵画が渋谷へとご出張。17世紀から19世紀、宗教画に風俗画まで。全部で約80点です。何もバルビゾン派の展覧会というわけではありません。


ジョン・エヴァレット・ミレイ「クラリッサ」1887年

また時系列ではなくテーマ別での展示です。神話や肖像、風景、静物などといったモチーフに沿いながら、ヨーロッパ絵画の系譜を辿っていました。


ジャン=バティスト・ユエ「羊飼い姿のヴィーナス」制作年不詳

ともかくジャンルも時代も様々。気になった画家なり作品はいくつかありましたが、特に惹かれたのはカバネルとエンネルの二人。ともに19世紀フランスのアカデミックな画家です。

カバネルでは「デズデモーナ」(1871年)が秀逸です。言うまでもなくシェイクスピアの「オセロ」における悲劇のヒロインですが、ここでは上目遣いで不安げな視線を向ける姿を正面から捉えています。瞳からは涙が流れ、顔の上半分は影にも覆われている。彼女の運命を暗示するかのような表現です。

エンネルの「荒地のマグダラのマリア」はどうでしょうか。サロン出品作の別ヴァージョンといわれる本作、横たわるのはマグダラ。確かに目を瞑って祈りを捧げているのかもしれませんが、単に眠っているようにも見える。香油壺がなければマグダラだとは分かりません。まるで風俗画です。

またエンネルではもう一作、「栗色の髪の少女」も魅力的です。青白い顔色をした女性。目は虚ろにも前を見据えている。エンネルは時に象徴派とも呼べる幻想的な女性を描きますが、その一例とも言えるような作品でした。

さて本展、決して有名とはいえない画家も多く登場しますが、その中にも興味深い作品があるのもポイントかと。例えばジョアッキーノ・パリエイの「夜会」です。金の装飾が艶やかな邸宅の広間での宴会。左奥の通路からは主役の貴婦人がご登場。何やら卑猥なまでの笑みを浮かべて興じる姿はどこか頽廃的です。軽薄とも言える18世紀の貴族趣味を巧みに表していました。


ジャン=バティスト・カミーユ・コロー「サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺」1872年

チラシ表紙を飾ったコローの「サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺」(1872年)はさすがに魅せるものがあります。画家の個性を表す『霧と靄の幻想のコロー』を体現したような一枚でした。


コンスタン・トロワイヨン「小川で働く人々」制作年不詳

なおやはりドービニーにトロワイヨンなどのバルビゾン派に優品が目立ちます。中でもデュプレの「月明かりの海」(1870年代)は異彩を放つ作品です。月明かりが雲に反射した夜の海。青白い闇が海岸線に立つ家屋を照らしている。そこには微かに人影も。どことなく不穏でかつ物悲しい印象を与えます。


モデスト・カルリエ「花といちごのある静物」制作年不詳

館内には余裕がありました。ゆっくり鑑賞出来ます。

会期は短く一ヶ月間です。11月18日まで開催されています。

「山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道」 Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:10月20日(日)~11月18日(月)
休館:会期中無休。
時間:10:00~19:00。毎週金・土は21時まで開館。入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1100)円、大学・高校生900(700)円、中学・小学生600(400)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。要電話予約。
住所:渋谷区道玄坂2-24-1
交通:JR線渋谷駅ハチ公口より徒歩7分。東急東横線・東京メトロ銀座線・京王井の頭線渋谷駅より徒歩7分。東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線・東京メトロ副都心線渋谷駅3a出口より徒歩5分
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