都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「上海博物館 中国絵画の至宝」 東京国立博物館
東京国立博物館・東洋館
「特別展 上海博物館 中国絵画の至宝」
10/1-11/24

東京国立博物館・東洋館で開催中の「上海博物館 中国絵画の至宝」へ行ってきました。
普段、なかなか親しみがあるとは言い難い中国絵画。宋元から明清まで千年。長い歴史の中で多様に展開した画風を追いかけるのも簡単ではありません。
そこを狙うのが「中国絵画の至宝展」です。しかも全て中国は上海博物館からの来日品。つまりは特別展、東博の館蔵品ではありません。
さて何かと展覧会でも良く見聞きする「至宝」、今回はあながち誇張とも言えないのではないでしょうか。
というのも作品は粒ぞろいです。全40件のうち、日本の国宝に当たるという一級文物が18件。中国本土でも滅多に公開されない作品も少なくないそうです。
それではいくつか印象深かった作品を挙げてみましょう。まずは宋元画から。王しん筆の「煙江畳嶂図巻」(北宋時代)です。

一級文物「煙江畳嶂図巻」王しん(おうしん)筆 北宋時代・11~12世紀 上海博物館 展示期間:10/1(火)~10/27(日)
まさに雄大でかつ深淵。広がる水面に切り立つ岩山との対比。一見無人かと思いきや、何と小さな小さな舟や人の姿も見え隠れしている。この細部を描くことへの徹底したこだわり。肉眼では判別不能なほどでした。
そうした細部の描写で圧倒的なのは「閘口盤車図巻」(五代時代)です。

一級文物「閘口盤車図巻」五代時代・10世紀 上海博物館 展示期間:10/1(火)~10/27(日)
かつて東博にやってきて大変な話題となった「清明上河図巻」を思わせる細密表現。中央には水門があり、水車を回して粉を挽いている。周囲には粉を計ったり、また持って運ぶ人の姿も。それらが神の眼ならぬ、全てクリアに描かれている。写実とはこのことを言うのでしょうか。どこか描くことへの執念すら感じられました。
また「滕王閣図頁」(元時代)も同様の作品です。楼閣がこれまた細かい描線で示されています。絹一本に線一本の世界。賛も小さ過ぎてまるで読めません。ちなみにこうした建築を描いた作品を界画と呼ぶのだそうです。単眼鏡必須の作品でした。
奇妙奇天烈、奇岩の連続、春から冬の山々の光景を一枚の巻物に仕立てた呉彬筆の「山陰道上図巻」(明時代)も強い印象を与えます。

「山陰道上図巻(部分)」呉彬(ごひん)筆 明時代・1608年 上海博物館
こちらは細密ではなく、むしろ素朴画を連想させるような筆致。ともかく天を突き、また地を這うような岩山の形が実に個性的です。秋の風景では木々が色づき、冬では山々が寒々と白んでいる。まさに奇景でした。

一級文物「琴高乗鯉図軸」李在筆 明時代・15世紀 上海博物館
『奇』繋がりで、日本の奇想を思わせる一枚を。李在筆の「琴高乗鯉図軸」(明時代)です。鯉に昇る仙人とそれを見送る仙人たちの姿。一見、温和な作風のようですが、画面には大風が吹いているのか、波は立ち、また木々も揺られている。そして興味深いのは仙人たちの衣の表現。象る線描がそれこそ蕭白画のように震えているではありませんか。

一級文物「花卉図冊」惲寿平(うんじゅへい)筆 清時代・1685年 上海博物館
びっくりするくらい美しい花卉画も展示されています。それが惲寿平の「花卉図冊」(清時代)。輪郭線を描かない没骨法による四季の花々。色鮮やかな色彩感覚。日本の江戸の花卉にも通じるものがあるかもしれませんが、花の様態、ようは植物学的な特徴も克明に捉えているのもポイントです。あたかも実際の花を前にしているような感覚も。見事でした。
細密に写実、そして情緒しかり、実に様々な顔を見せる中国絵画の奥深き世界。画家の名を知らずしても見入るような作品ばかりです。思いの外に惹かれました。
なお出品の計40点のうち、13点ほどが会期途中で入れ替わります。(出品リスト)
前期:2013年10月1日(火)~10月27日(日)
後期:2013年10月29日(火)~11月24日(日)
実のところ、私自身、見る前は一度で終えるつもりでしたが、この充実ぶりです。後期も追っかることにしました。
11月24日までの開催です。おすすめします。
「上海博物館 中国絵画の至宝」 東京国立博物館・東洋館(@TNM_PR)
会期:10月1日(火)~11月24日(日)
休館:月曜日。但し10/14(月・祝)、11/4(月・休)は開館。翌火曜日は休館。
料金:一般600円(500円)、大学生400円(300円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。特別展との共通券あり。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
*毎週金曜日及び、11/2(土)、3(日・祝)は20時まで開館、11/4(月・休)は18時まで開館。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「特別展 上海博物館 中国絵画の至宝」
10/1-11/24

東京国立博物館・東洋館で開催中の「上海博物館 中国絵画の至宝」へ行ってきました。
普段、なかなか親しみがあるとは言い難い中国絵画。宋元から明清まで千年。長い歴史の中で多様に展開した画風を追いかけるのも簡単ではありません。
そこを狙うのが「中国絵画の至宝展」です。しかも全て中国は上海博物館からの来日品。つまりは特別展、東博の館蔵品ではありません。
さて何かと展覧会でも良く見聞きする「至宝」、今回はあながち誇張とも言えないのではないでしょうか。
というのも作品は粒ぞろいです。全40件のうち、日本の国宝に当たるという一級文物が18件。中国本土でも滅多に公開されない作品も少なくないそうです。
それではいくつか印象深かった作品を挙げてみましょう。まずは宋元画から。王しん筆の「煙江畳嶂図巻」(北宋時代)です。

一級文物「煙江畳嶂図巻」王しん(おうしん)筆 北宋時代・11~12世紀 上海博物館 展示期間:10/1(火)~10/27(日)
まさに雄大でかつ深淵。広がる水面に切り立つ岩山との対比。一見無人かと思いきや、何と小さな小さな舟や人の姿も見え隠れしている。この細部を描くことへの徹底したこだわり。肉眼では判別不能なほどでした。
そうした細部の描写で圧倒的なのは「閘口盤車図巻」(五代時代)です。

一級文物「閘口盤車図巻」五代時代・10世紀 上海博物館 展示期間:10/1(火)~10/27(日)
かつて東博にやってきて大変な話題となった「清明上河図巻」を思わせる細密表現。中央には水門があり、水車を回して粉を挽いている。周囲には粉を計ったり、また持って運ぶ人の姿も。それらが神の眼ならぬ、全てクリアに描かれている。写実とはこのことを言うのでしょうか。どこか描くことへの執念すら感じられました。
また「滕王閣図頁」(元時代)も同様の作品です。楼閣がこれまた細かい描線で示されています。絹一本に線一本の世界。賛も小さ過ぎてまるで読めません。ちなみにこうした建築を描いた作品を界画と呼ぶのだそうです。単眼鏡必須の作品でした。
奇妙奇天烈、奇岩の連続、春から冬の山々の光景を一枚の巻物に仕立てた呉彬筆の「山陰道上図巻」(明時代)も強い印象を与えます。

「山陰道上図巻(部分)」呉彬(ごひん)筆 明時代・1608年 上海博物館
こちらは細密ではなく、むしろ素朴画を連想させるような筆致。ともかく天を突き、また地を這うような岩山の形が実に個性的です。秋の風景では木々が色づき、冬では山々が寒々と白んでいる。まさに奇景でした。

一級文物「琴高乗鯉図軸」李在筆 明時代・15世紀 上海博物館
『奇』繋がりで、日本の奇想を思わせる一枚を。李在筆の「琴高乗鯉図軸」(明時代)です。鯉に昇る仙人とそれを見送る仙人たちの姿。一見、温和な作風のようですが、画面には大風が吹いているのか、波は立ち、また木々も揺られている。そして興味深いのは仙人たちの衣の表現。象る線描がそれこそ蕭白画のように震えているではありませんか。

一級文物「花卉図冊」惲寿平(うんじゅへい)筆 清時代・1685年 上海博物館
びっくりするくらい美しい花卉画も展示されています。それが惲寿平の「花卉図冊」(清時代)。輪郭線を描かない没骨法による四季の花々。色鮮やかな色彩感覚。日本の江戸の花卉にも通じるものがあるかもしれませんが、花の様態、ようは植物学的な特徴も克明に捉えているのもポイントです。あたかも実際の花を前にしているような感覚も。見事でした。
細密に写実、そして情緒しかり、実に様々な顔を見せる中国絵画の奥深き世界。画家の名を知らずしても見入るような作品ばかりです。思いの外に惹かれました。
なお出品の計40点のうち、13点ほどが会期途中で入れ替わります。(出品リスト)
前期:2013年10月1日(火)~10月27日(日)
後期:2013年10月29日(火)~11月24日(日)
実のところ、私自身、見る前は一度で終えるつもりでしたが、この充実ぶりです。後期も追っかることにしました。
11月24日までの開催です。おすすめします。
「上海博物館 中国絵画の至宝」 東京国立博物館・東洋館(@TNM_PR)
会期:10月1日(火)~11月24日(日)
休館:月曜日。但し10/14(月・祝)、11/4(月・休)は開館。翌火曜日は休館。
料金:一般600円(500円)、大学生400円(300円)、高校生以下無料。
* ( )内は20名以上の団体料金。特別展との共通券あり。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
*毎週金曜日及び、11/2(土)、3(日・祝)は20時まで開館、11/4(月・休)は18時まで開館。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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