「コレクション リコレクションVOL.3 山口長男/コレクションは語る」 DIC川村記念美術館

DIC川村記念美術館
「コレクション リコレクションVOL.3 山口長男/コレクションは語る」
1/2-6/29



DIC川村記念美術館で開催中の「コレクション リコレクションVOL.3 山口長男/コレクションは語る」を見て来ました。

2013年度から展開中のシリーズ展、「コレクション リコレクション」。川村記念美術館のコレクションを増築されたスペース(企画展に使われることの多い展示室です。)で見せる試み。第3回目を迎えました。

しかしながら「コレクション展」とあると、どこか通常の常設展の流れを思い浮かべてしまうもの。もちろん同館の常設展、かのロスコを含め、怒濤のアメリカ現代美術です。それだけでも大変に充実していますが、何度か通うと、多少「見慣れた感」はある。率直なところ新鮮味はないのではと思い込んでいました。

反省します。このコレクション展、切り口も大胆で面白い。しかも普段、あまり公開されていない作品も少なくありません。また新たな気持ちでコレクションに接することが出来ました。


フランク・ステラ「タンバ」1963年

一端をごく簡単にご紹介します。キーワードは「テキスト」です。お馴染みのライマンやステラ、そしてライリーといった抽象絵画に「枕草子」のテキストを添える。何でも同館のスタッフを発想で生まれた試みだとか。どうでしょうか。ある意味で見る側のイメージの拡張する抽象絵画。それに別の要素が入り込んでくる。するとまた違った世界が開けてくるかもしれません。

そして言葉と言えば作品の隣にあるキャプションです。例えば画家ルノワールの表記の問題。また作品研究の進展とも言えるのでしょうか。ピカソの「宿屋の前のスペインの男女。」のように、タイトルそのものが変わった作品もあります。そしてそれらを二つのキャプション、つまりはかつて使用していたものと現在のものを併置して紹介していく。もちろんその理由についても触れているわけです。


アン・アーノルド「ラム・タム」1969年

白眉は不思議の国のアリスです。かの物語の登場人物にコレクションが成り済ます。例えばアリスのネコ、それがアーノルドの「ラム・タム」に置き換わります。他にはコーネルにマグリット、そして浜口陽三から山口勝弘といった日本人の作家の作品も引用される。面白いのはゾンネンシュターンです。常設では展示頻度の少ない小品。それが「アリス」の絡みで登場しました。


藤田嗣治「アンナ・ド・ノアイユの肖像」 1923年

お馴染みのレンブラントの「広つば帽を被った男」やルノワールの「水浴する女」もここでの展開です。クルト・シュヴィッタースの石膏を用いたオブジェも初めて見ました。全54件。何かと発見の多い展覧会でもありました。


山口長男「庭」 1937年

そして本展と同時開催中なのが画家、山口長男(1902~1983)のミニ回顧展です。山口は戦前、二科会の前衛的なグループに属し、戦後はいわゆる抽象画を描き続けた。油彩8点にドローイング約10点です。戦前と戦後の展開。作風は驚くほどに変化します。そして興味深いのは後半、言わば画家を代表する1960~70年代の抽象画です。


山口長男「捲」 1965年

まずは色遣い。赤や黄土色の絵具を刷毛のようなタッチで強くキャンバスへ塗り込めている。そして細く鋭い黒い描線が入ります。削り取るとも言えるでしょうか。実際に目を近づけると、線に沿って窪みがある。ようは黒い線がザクッと表面の色層を切り落としていることが分かります。また色そのものも味わい深い。時に漆を思わせる朱色や赤。「欧米の抽象画家とは異なった魅力」とは解説の言葉ですが、確かに「和」をイメージさせる面もありました。

「ツツジ山一般公開」 DIC川村記念美術館(はろるど)

「コレクション リコレクションVOL.3」、改めて同館のコレクションの奥の深さを見知った気がしました。

6月29日まで開催されています。

「コレクション リコレクションVOL.3 山口長男/コレクションは語る」 DIC川村記念美術館@kawamura_dic
会期:1月2日(木)~6月29日(日)
休館:月曜日。但し1/13、5/5は開館。1/14、5/7は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般900(800)円、学生・65歳以上700(600)円、小・中・高生500(400)円。
 *( )内は20名以上の団体。
 *2月15日(土)はDIC創業記念日、5月18日(日)は国際博物館の日のため入館無料。
 *5月5日(月・祝)こどもの日は高校生以下入館無料。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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