「いちはらアート×ミックス」 (前編:市原湖畔美術館)

千葉県市原市南部地域
「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」
3/21-5/11



「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」へ行って来ました。

千葉県のほぼ中央に位置する市原市。その南部で行われているのが現代美術を中心とする芸術祭、「いちはらアート×ミックス」です。おそらくこのクラスの芸術祭は県内で初めてでしょう。会期は全52日間です。既に3月後半より開催されてきました。

私自身、前々から行くつもりではあったものの、なかなかタイミングがとれず、気がつけば会期末を迎えていました。ここにようやくです。GW中に日帰りで廻って来ました。


「高滝湖」を望む

さてアート×ミックス。舞台は今も触れたように市原市の南部です。同市と言えば東京のベットタウンや臨海部の工業地帯のイメージが強いかもしれませんが、芸術祭のエリアはほぼ田園の広がる里山地域。一部は養老渓谷にも代表されるように山間部でもあります。また芸術祭は「過疎化」(公式サイトより)を意識したイベント。そのため美術館のみならず、生徒数減少のために使われなくなった学校、ようは廃校も主たる会場になっています。

展示施設が小湊鉄道沿線に点々と連なっているのもポイントです。具体的には上総牛久駅から養老渓谷駅までの間。約10駅ほどです。よって鉄道が重要なアクセスになっている。周遊も小湊鉄道+周遊バスが一般的です。ただ今回はグループで行動したこともあり、車を利用しました。


「市原湖畔美術館」全景

前置きが長くなりました。アート×ミックスの旅に出発しましょう。京葉道、館山道、圏央道を経由して市原鶴舞インターへ。さすがにGW、途中で渋滞に巻き込まれましたが、幕張から約1時間半ほどで到着。そしてともかく市原は広い。中心地の五井から美術館のある高滝地区まででも20キロ弱もある。インターで降りると周囲は長閑な風景が広がっていました。まず目指したのは市原湖畔美術館。芸術祭の中核施設です。文字通り湖畔、高滝湖のすぐ横に建っています。


「市原湖畔美術館」(アート×ミックス)専用駐車場

さて駐車場へ。着いたのが早かった(10時半前)からか、それともお天気が芳しくなかった(ほぼ雨の一日でした。)からか、GWにしては余裕がある。スムーズに停められました。駐車料金は一回1000円です。各施設毎に駐車場は用意されていますが、例外を除くと、おおよそ一回500円から1000円の駐車料金がかかります。それなりの負担ではありますが、そもそも鉄道を核をした芸術祭です。周遊バスしかり、公共交通機関への誘導するのは自然なことかもしれません。


周遊バス「市原湖畔美術館」バス停

少し歩いて湖の方を廻り、釣り客などを横目に美術館へと向かいます。すると周遊バスの発着所から人がたくさんやってきました。バスで廻られている方が多いようです。約7割ほどが周遊バス利用というところでしょうか。受付でチケットを購入。今回は鑑賞パスではなく、個別鑑賞券を買いました。ちなみに鑑賞パスは大人3800円です。高いと思われる方もいるかもしれませんが、パスには小湊鉄道と周遊バスの乗り放題チケットを含んでいます。ちなみに小湊鉄道の一日乗車券だけでも1800円です。それを考えれば確かにお得だと言えそうです。


KOSUGE1-16「Heigh-Ho」

では館内へ。美術館の展示を追ってみます。

まずは「Collective Memoriesー記憶の集積」。芸術祭にあわせて行われている特別展です。出展は三組のアーティスト。中国のリン・テンミャオ、フィリピンとオーストラリアのアルフレド&イザベル・アキリザン、そしてノルウェーのストール・ステンスリー。国際色豊か。そして各々が市原の土地を意識したインスタレーションを展開しています。


リン・テンミャオ「彼?彼女?またはそれ?」

まずはリン・テンミャオ。「彼?彼女?またはそれ?」です。壁面に連なるオブジェ。よく見ると人骨。もちろん本物ではなく合成樹脂です。それをコンパスや金槌やアイロンなどと組み合わせています。


リン・テンミャオ「彼?彼女?またはそれ?」

他には鋏やお鍋もある。文福茶釜を連想したのは私だけでしょうか。ネタバレをするといずれも市原の廃校になった小学校の備品です。実際に小学校名の記された道具もありました。


アルフレド&イザベル・アキリザン「積載:プロジェクト・アナザーカントリー」

吹き抜けを大胆に活かしています。アルフレド&イザベル・アキリザン。2013年には金沢21世紀美術館でも展示を行ったアーティストです。ひっくり返ったボート。高滝湖で使われていたのでしょうか。段ボールの複雑な「家」が組合わさる。何でもワークショップで作られたものだそうです。そしてボートは上から階段状に下へ連なっています。全部で11隻。上から見下ろすのと下から見上げるのでは印象も異なる。スケール感もありました。


ストール・ステンスリー「いちはら物語」

ストール・ステンスリーの「いちはら物語」です。暗室の中央にあるのが市原市の地図を模したオブジェ。周囲にはスピーカーが置かれている。手をかざすと聞こえてくるのは市原の音、また語り継がれた物語です。あわせて照明も変化します。インタラクティブな作品でもありました。


クワクボリョウタ「Lost Windows」

「記憶の集積」と離れて2~3点作品があります。いわゆる常設、恒久展示作品です。まずはクワクボリョウタの「Lost Windows」。格子状の窓が影絵の如く揺らめいては映されるインスタレーション。失われた窓。不思議とどこか懐かしい学校の窓を思わせます。幻想的でした。


アコンチ・スタジオ「Museum-Stairs/Roof of Needles&Pins」

屋上にあがるとアコンチ・スタジオの「Museum-Stairs/Roof of Needles&Pins」がお出迎え。約700本ものチューブが美術館を覆います。チューリップをイメージしているそうですが、私は湖に群れる葦を思い浮かべました。コンクリート打ちっ放しの建物との相性も良いのではないでしょうか。


美術館から展望棟(右)を望む

美術館の目の前には湖が広がります。展望棟はかつて利用されていた農業用の揚水機を模しているそうです。かなり高い。上にあがれば湖も一望出来ます。また湖上には彫刻も2~3点展示されている。ロケーションは抜群でした。


「市原湖畔美術館」から高滝湖

1時間弱ほどいたでしょうか。この後は次の目的地、IAAES(旧里見小学校)へ向かうために移動。途中で加茂運動広場横、KOSUGE1-16の「湖の飛行機」に立ち寄りました。


KOSUGE1-16「湖の飛行機」

どうでしょうか。まさしく湖上の飛行機。大掛かりな作品です。ちなみに飛行機、本来であればボートに乗って中に入れますが、この日は悪天候のため中止。車窓からのみ楽しみました。

「中編:IAAES(旧里見小学校)」へと続きます。

[いちはらアート×ミックス]シリーズ
中編:「いちはらアート×ミックス」(IAAES 旧里見小学校)
後編:「いちはらアート×ミックス」(養老渓谷アートハウス・月出工舎)

「美術手帖4月号増刊 いちはらアート×ミックス2014 公式ガイドブック」

「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」@IchiharaArtMix) 千葉県市原市南部地域(小湊鉄道上総牛久駅~養老渓谷駅一帯)
会期:3月21日(金)~5月11日(日)
休館:会期中無休。
時間:9:30~17:00 *施設やイベントによって異なる。
料金:[鑑賞パスポート]一般3800円、大学・専門・高校生3300円、中学生1000円、小学生500円、小学生以下無料。
   [個別観覧料]
   ・300円=《Luminous / Light and WindHouse》、内田未来楽校、《サンタルの食堂》、森ラジオステーション
   ・500円=《湖うみの飛行機》、《おおきな家》
   ・800円=IAAES、月出工舎、いちはら人生劇場
   ・1000円=市原湖畔美術館
  *鑑賞パスポート=会期中、芸術祭の作品の全てを観覧可。交通チケット(小湊鉄道、及び循環周遊バスの1日乗り放題)を含む。
  *個別観覧料=鑑賞パスポートをもたない来場者のための作品観覧料。
住所:千葉県市原市不入75-1(市原湖畔美術館)他
交通:JR内房線五井駅から小湊鉄道にて高滝駅下車。バス停高滝駅入口より周遊バス「北部ルート(左回り)」で市原湖畔美術館。
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