都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「コレクション展/華麗なる西洋絵画の世界展」 ひろしま美術館
ひろしま美術館
「コレクション展/華麗なる西洋絵画の世界展」
4/26-6/15
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/e6/067341aee3a5f70f58f8e9b3b8361c55.jpg)
ひろしま美術館で開催中の「コレクション展/華麗なる西洋絵画の世界展」を見て来ました。
広島市の中枢、広島県庁や広島城のすぐそばに位置するひろしま美術館。言うまでもなく関東での西洋絵画展でも「ひろしま美術館蔵」の作品を見る機会は多い。印象派からエコール・ド・パリに至るフランス近代美術コレクションでは大いに定評があります。
先日、広島に行った際、少し立ち寄ることが出来ました。こちらでも簡単にご紹介しましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/71/5fdbfbca104e4c829a3874cd53dbf071.jpg)
はじめにロケーションです。先にも触れたように広島市の中心部。バスや広電が多数行き来する市内交通の一大拠点、紙屋町から歩いて4~5分のところにあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/1c/f40f9b67f2b365760b7284e897a7ee6b.jpg)
広々とした前庭です。駐車場の向こうに美術館が建つ。周囲は中央公園です。都心とは思えないほどに緑豊か。それにしても実に立派な外観、余裕のある造りではないでしょうか。
ガラスドアを抜けると受付とミュージアムショップ、そして右側にティールームがあります。さらにまた一度屋外へ進む。内庭です。建物の壁は大理石でしょうか。目の前に美術館の展示施設が現れました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/89/66b59dc86cc7992dff35a640dec459fc.jpg)
円形の建物が本館です。中央内部にはメインホールがあり、上部はドーム状になっている。そしてホールに沿ってぐるりと並ぶのが展示室。計4つです。そこが常設展示のスペースとなっていました。
本館のさらに向こう側、入口から見て一番奥が別館です。こちらは地上1階、地下1階の2フロア。本館と同じく4つの展示室があります。現在は企画展の「山寺後藤美術館コレクション展」の会場として使われています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/d3/ebdedd35f1befe1d1c1c047caf33aed8.jpg)
本館と中庭をぐるりと取り囲むのが外壁です。内側は回廊になっています。中に足を踏み入れて思い浮かんだの礼拝堂のイメージでした。どこか厳かですらある。独特の雰囲気があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/a6/f19ae5f8361ae67fa2b985a842e30028.jpg)
公式サイトにも案内がありますが、同館には「原爆犠牲者の方々への鎮魂の祈りと平和への願い」(パンフレットより引用)がこめられているとのこと。当然ながら建物自体もそれを意識して設計されているのでしょう。本館とホール、そして回廊の位置関係。ある意味で外界と遮断された空間です。自然と作品へ集中出来る気もしました。
さて常設の西洋絵画展ですが、これが想像以上に充実していました。(館内は撮影不可。)
「所蔵作品」/「現在展示中の作品リスト」(PDF)@ひろしま美術館
まず1室の「ロマン派から印象派まで」。ルノワール5点、ドガ3点、モネ2点などが並ぶ。佳作揃いです。うちインパクトがあるのはドガの「浴槽の女」(1891年頃)です。まさにヌード、素っ裸の女性が盥の上で身体を洗おうとする光景を描いている。目を引くのは大きな臀部です。さも後ろから覗き込んだような構図はスキャンダラスでもあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/84/f0d4d5ff7cf62a86e2f150cbda7ed22d.jpg)
アンリ・ル・シダネル「離れ屋」 1927年
続いては2室の 「ポスト印象派と新印象主義」。シダネルの「離れ屋」(1927年)はどうでしょうか。画家の愛したジェルブロワの地、月明かりの元で咲き誇る薔薇。窓から漏れる明かりも美しい。かつて埼玉県立近代美術館のシダネル展でチラシ表紙も飾った作品です。久々に再会出来ました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/e0/f65fc11f7266fcfd4debe8e9cf620af8.jpg)
フィンセント・ファン・ゴッホ「ドービニーの庭」 1890年
ゴッホの「ドービニーの庭」(1890年)は画家最晩年、亡くなる二週間前に描かれたもの。初夏の庭園、草木も空も建物も輝かしいまでの陽光に包まれている。しかしながらどこか不穏な気配は拭い難い。うねりまた歪む筆致。これぞゴッホと言うべき作品かもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/e5/6e3396d1936524f4df55d31f1cb10f34.jpg)
パブロ・ピカソ「酒場の二人の女」 1902年
3室の「フォーヴィスムとピカソ」ではピカソの青の時代の作、「酒場の二人の女」(1902年)が素晴らしい。酒場で寄り添う二人の女性。しかしながら描かれているのはあくまでも後ろ姿。表情は伺い知れることは出来ません。それでも伝わる何とも言い難い悲哀。まさに背中で語るとはこのことでしょうか。肩を落として疲れているようにも見える。沈み込むような青の色遣いも味わい深いものがあります。
ラストの「エコール・ド・パリ」(4室)ではフジタの「受胎告知」・「三王礼拝」・「十字架降下」(1927年)が圧倒的です。いわゆる祭壇画の形式をとる三幅対の連作、言うまでもなく素材は聖母マリアとイエスの物語ですが、背景は金箔を敷き詰めたような地である。そして得意の面相筆の線描にさも胡粉を混ぜたような乳白色。もちろん全て油彩の技法によるものですが、まるで日本画を前にしているような印象さえ与えられます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/55/4a3752faa46b21d12b4918461f4ba219.jpg)
モーリス・ド・ブラマンク「雪の集落」
またスーティンやビュッフェも良い。出品はメインホールに展示されたマイヨールの彫刻を含め全90点(絵画は約80点)です。見応えがありました。
続いては別館へ進みます。企画展の「山寺後藤美術館コレクション 華麗なる西洋絵画の世界展」。こちらの展覧会、タイトルこそ異なりますが、去年に文化村で開催された「山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道」の広島巡回展です。
「バルビゾンへの道」 Bunkamura ザ・ミュージアム(はろるど)
私も一度見た展示です。よって感想は割愛しますが、やはり惹かれるのがカバネルとエンネル。上記リンク先記事と重複しますが、カバネルの「デズデモーナ」とエンネルの「荒地のマグダラのマリア」が美しい。またエンネル画では時に象徴派風の女性像も魅力的です。両者とも主に19世紀後半のフランスで活動したアカデミスムの画家。いつかは大きな回顧展を見たいものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/7e/f12159459b5ed9cbb2e24e43239dc9ed.jpg)
アレクサンドル・カバネル「エコーの声を聴く」
それにしてもひろしま美術館、実のところ下調べも殆どせずに出向いたので、企画展開催中は常設展を開催していないのかと勘違いしていました。いやはやそんなことはありません。通年で約90点の西洋絵画コレクション(作品自体は全部で300点を所蔵しているそうです。)を展示している。魅惑の常設展です。気がつけば予定の時間をオーバーしていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/cb/8c9ddacd5b4f6e79a8f7cd1488f07779.jpg)
なお常設展については日本近代美術(今回は特別展開催中のため出品されていません。)との入れ替えなどがあるようです。詳細は同館までお問い合わせ下さい。
「ひろしま美術館 オリジナル マスキングテープセット」
「ひろしま美術館コレクション展/山寺 後藤美術館コレクション 女性像と日々の営みで綴る 華麗なる西洋絵画の世界展~バロック絵画からバルビゾン派まで」 ひろしま美術館
会期:4月26日(土)~6月15日(日)
休館:会期中無休。
時間:9:00~17:00 *入館は16時半まで。
料金:一般1200(1000)円、大学・高校生900(700)円、小・中学生500(300)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*コレクション展観覧料を含む
*割引券
場所:広島市中区基町3-2 中央公園内
交通:広電(市内路面電車)紙屋町西駅、もしくは紙屋町東駅下車徒歩4~5分。
「コレクション展/華麗なる西洋絵画の世界展」
4/26-6/15
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/e6/067341aee3a5f70f58f8e9b3b8361c55.jpg)
ひろしま美術館で開催中の「コレクション展/華麗なる西洋絵画の世界展」を見て来ました。
広島市の中枢、広島県庁や広島城のすぐそばに位置するひろしま美術館。言うまでもなく関東での西洋絵画展でも「ひろしま美術館蔵」の作品を見る機会は多い。印象派からエコール・ド・パリに至るフランス近代美術コレクションでは大いに定評があります。
先日、広島に行った際、少し立ち寄ることが出来ました。こちらでも簡単にご紹介しましょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/71/5fdbfbca104e4c829a3874cd53dbf071.jpg)
はじめにロケーションです。先にも触れたように広島市の中心部。バスや広電が多数行き来する市内交通の一大拠点、紙屋町から歩いて4~5分のところにあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/1c/f40f9b67f2b365760b7284e897a7ee6b.jpg)
広々とした前庭です。駐車場の向こうに美術館が建つ。周囲は中央公園です。都心とは思えないほどに緑豊か。それにしても実に立派な外観、余裕のある造りではないでしょうか。
ガラスドアを抜けると受付とミュージアムショップ、そして右側にティールームがあります。さらにまた一度屋外へ進む。内庭です。建物の壁は大理石でしょうか。目の前に美術館の展示施設が現れました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/89/66b59dc86cc7992dff35a640dec459fc.jpg)
円形の建物が本館です。中央内部にはメインホールがあり、上部はドーム状になっている。そしてホールに沿ってぐるりと並ぶのが展示室。計4つです。そこが常設展示のスペースとなっていました。
本館のさらに向こう側、入口から見て一番奥が別館です。こちらは地上1階、地下1階の2フロア。本館と同じく4つの展示室があります。現在は企画展の「山寺後藤美術館コレクション展」の会場として使われています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/d3/ebdedd35f1befe1d1c1c047caf33aed8.jpg)
本館と中庭をぐるりと取り囲むのが外壁です。内側は回廊になっています。中に足を踏み入れて思い浮かんだの礼拝堂のイメージでした。どこか厳かですらある。独特の雰囲気があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/a6/f19ae5f8361ae67fa2b985a842e30028.jpg)
公式サイトにも案内がありますが、同館には「原爆犠牲者の方々への鎮魂の祈りと平和への願い」(パンフレットより引用)がこめられているとのこと。当然ながら建物自体もそれを意識して設計されているのでしょう。本館とホール、そして回廊の位置関係。ある意味で外界と遮断された空間です。自然と作品へ集中出来る気もしました。
さて常設の西洋絵画展ですが、これが想像以上に充実していました。(館内は撮影不可。)
「所蔵作品」/「現在展示中の作品リスト」(PDF)@ひろしま美術館
まず1室の「ロマン派から印象派まで」。ルノワール5点、ドガ3点、モネ2点などが並ぶ。佳作揃いです。うちインパクトがあるのはドガの「浴槽の女」(1891年頃)です。まさにヌード、素っ裸の女性が盥の上で身体を洗おうとする光景を描いている。目を引くのは大きな臀部です。さも後ろから覗き込んだような構図はスキャンダラスでもあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/84/f0d4d5ff7cf62a86e2f150cbda7ed22d.jpg)
アンリ・ル・シダネル「離れ屋」 1927年
続いては2室の 「ポスト印象派と新印象主義」。シダネルの「離れ屋」(1927年)はどうでしょうか。画家の愛したジェルブロワの地、月明かりの元で咲き誇る薔薇。窓から漏れる明かりも美しい。かつて埼玉県立近代美術館のシダネル展でチラシ表紙も飾った作品です。久々に再会出来ました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/e0/f65fc11f7266fcfd4debe8e9cf620af8.jpg)
フィンセント・ファン・ゴッホ「ドービニーの庭」 1890年
ゴッホの「ドービニーの庭」(1890年)は画家最晩年、亡くなる二週間前に描かれたもの。初夏の庭園、草木も空も建物も輝かしいまでの陽光に包まれている。しかしながらどこか不穏な気配は拭い難い。うねりまた歪む筆致。これぞゴッホと言うべき作品かもしれません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/e5/6e3396d1936524f4df55d31f1cb10f34.jpg)
パブロ・ピカソ「酒場の二人の女」 1902年
3室の「フォーヴィスムとピカソ」ではピカソの青の時代の作、「酒場の二人の女」(1902年)が素晴らしい。酒場で寄り添う二人の女性。しかしながら描かれているのはあくまでも後ろ姿。表情は伺い知れることは出来ません。それでも伝わる何とも言い難い悲哀。まさに背中で語るとはこのことでしょうか。肩を落として疲れているようにも見える。沈み込むような青の色遣いも味わい深いものがあります。
ラストの「エコール・ド・パリ」(4室)ではフジタの「受胎告知」・「三王礼拝」・「十字架降下」(1927年)が圧倒的です。いわゆる祭壇画の形式をとる三幅対の連作、言うまでもなく素材は聖母マリアとイエスの物語ですが、背景は金箔を敷き詰めたような地である。そして得意の面相筆の線描にさも胡粉を混ぜたような乳白色。もちろん全て油彩の技法によるものですが、まるで日本画を前にしているような印象さえ与えられます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/41/55/4a3752faa46b21d12b4918461f4ba219.jpg)
モーリス・ド・ブラマンク「雪の集落」
またスーティンやビュッフェも良い。出品はメインホールに展示されたマイヨールの彫刻を含め全90点(絵画は約80点)です。見応えがありました。
続いては別館へ進みます。企画展の「山寺後藤美術館コレクション 華麗なる西洋絵画の世界展」。こちらの展覧会、タイトルこそ異なりますが、去年に文化村で開催された「山寺 後藤美術館コレクション展 バルビゾンへの道」の広島巡回展です。
「バルビゾンへの道」 Bunkamura ザ・ミュージアム(はろるど)
私も一度見た展示です。よって感想は割愛しますが、やはり惹かれるのがカバネルとエンネル。上記リンク先記事と重複しますが、カバネルの「デズデモーナ」とエンネルの「荒地のマグダラのマリア」が美しい。またエンネル画では時に象徴派風の女性像も魅力的です。両者とも主に19世紀後半のフランスで活動したアカデミスムの画家。いつかは大きな回顧展を見たいものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/7e/f12159459b5ed9cbb2e24e43239dc9ed.jpg)
アレクサンドル・カバネル「エコーの声を聴く」
それにしてもひろしま美術館、実のところ下調べも殆どせずに出向いたので、企画展開催中は常設展を開催していないのかと勘違いしていました。いやはやそんなことはありません。通年で約90点の西洋絵画コレクション(作品自体は全部で300点を所蔵しているそうです。)を展示している。魅惑の常設展です。気がつけば予定の時間をオーバーしていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/cb/8c9ddacd5b4f6e79a8f7cd1488f07779.jpg)
なお常設展については日本近代美術(今回は特別展開催中のため出品されていません。)との入れ替えなどがあるようです。詳細は同館までお問い合わせ下さい。
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「ひろしま美術館コレクション展/山寺 後藤美術館コレクション 女性像と日々の営みで綴る 華麗なる西洋絵画の世界展~バロック絵画からバルビゾン派まで」 ひろしま美術館
会期:4月26日(土)~6月15日(日)
休館:会期中無休。
時間:9:00~17:00 *入館は16時半まで。
料金:一般1200(1000)円、大学・高校生900(700)円、小・中学生500(300)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*コレクション展観覧料を含む
*割引券
場所:広島市中区基町3-2 中央公園内
交通:広電(市内路面電車)紙屋町西駅、もしくは紙屋町東駅下車徒歩4~5分。
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