「竹尾ペーパーショウ2014」 TOLOT/heuristic SHINONOME

TOLOT/heuristic SHINONOME
「竹尾ペーパーショウ2014」
5/25-6/1



TOLOT/heuristic SHINONOMEで開催中の「竹尾ペーパーショウ2014」を見て来ました。

日本有数の紙の専門商社として知られる竹尾。ペーパーショウが始まったのは1965年のことです。以来、全47回。長らく「紙の展覧会」を行ってきました。

2011年から2年半ぶりの開催です。テーマは「鋭敏な」や「僅かな」を意味する「SUBTLE」。人がいかに紙に対して繊細な感覚を持って向き合ってきたのか。企画と構成は原研哉。参加するのは以下の15名のクリエイターです。それぞれが「SUBTLE」の元、紙を素材に様々な作品を提示しています。

[参加クリエイター]
石上純也/色部義昭/上田義彦/葛西薫/田中義久/冨井大裕/トラフ建築設計事務所/中村竜治/ノイズ/服部一成/ハム・ジナ/原 研哉/三澤遥/皆川明/宮田裕美詠/寄藤文平/和田淳

さて竹尾ペーパーショウ、何度か会場を変えていますが、今回は「TOLOT/heuristic SHINONOME」。昨年、江東区の東雲の工業団地内にオープンした、主に現代美術の展示施設です。


「TOLOT/heuristic SHINONOME」

TOLOT(トロット)の外観、入口付近です。私もこれまでにギャラリー関連の展示が度々行われていたのを聞いていましたが、実のところ行くのは初めて。りんかい線の東雲駅から歩いて5分ほど。周囲は紛れもなく海に近い工業地帯です。倉庫などが立ち並んでいます。

そもそも「TOLOT」もかつては印刷製本工場だったそうです。そこで行われる紙の展示。言わば場所性を意識しての企画なのかもしれません。

受付をすませて館内へ入ります。(会場内撮影が出来ました。)思いの外に大きなスペースです。全400坪。私は過去2、3回ほどのみしかペーパーショウを見たことがありませんが、少なくともその時よりは会場が広い。ギャラリーというよりも美術館として捉えても引けを取らない空間が広がっています。


「竹尾ペーパーショウ2014(CREATION)」会場風景

白くまた薄い平面に細い脚。展示台です。サイズは横180センチで高さが80センチ。石上純也のデザインです。もちろん触れてはなりませんが、近くに寄っただけでもぐらつくほど。ある意味で繊細でかつ儚いとも言える。これも「SUBTLE」ということでしょうか。そして台の上には各クリエイターの作品が並んでいます。

また周囲には「紙の肖像」と題し、写真家中村義彦の撮った紙の原像が並ぶ。当然ながら主役は紙です。紙の一つの魅力でもある白が際立つ。何とも清潔感のある空間ではないでしょうか。


三澤遥「紙の花」

惹かれた作品をいくつか挙げましょう。まずは「紙の花」。デザイナー三澤遥の作品です。テーブルに転がる紙の花。この形、どこかで見たことがある。そうです。鉛筆削りの削り屑。それを花に見立てて紙で再現する。ようは細く丸めた紙を鉛筆削りで削ったものなのです。


色部義昭「I HATE U/I LOVE U」

色部義昭の「I HATE U/I LOVE U」はどうでしょうか。紙によるメッセージ。透け格子状に浮かびあがるのは「I LOVE U」。しかしながら角度を変えて見ると「I HATE U」の文字も見える。好きと嫌いは紙一重ということなのでしょうか。両者の関係はない交ぜになって曖昧でもある。格子のストラクチャーと蛍光色の反射効果を取り入れているのだそうです。


ハム・ジナ「タグやラベルを描く」

ハム・ジナの「タグやラベルを描く」です。文字通りラベルが並ぶ。いずれも作家が旅行先などで得たものです。ラベルに残る旅先での記憶。それを描いては改めて思い起こす。紙に何か記すこととは記憶を引き出すのと同じなのかもしれません。


原研哉「チョコレートの帽子」

とりわけ美しいのは原研哉の「チョコレートの帽子」です。さもミルククラウンのようなオブジェ。これも紙です。トレーシングペーパーにレーザカッティングで作られた帽子、王冠の数々。切れ目は数ミリほどではないでしょうか。小さい。息を吹きかければ飛んでしまいそうです。まさに「SUBTLE」に相応しい作品と言えるでしょう。

何度も同じ言葉を使って恐縮ですが、それにしてもどの作品も極めて繊細。全てが台の上の厚さ15ミリに収まっています。薄い紙から広がる細密なテクスチャー。写真ではまるで伝わりません。こればかりは会場へ行っていただくしかなさそうです。


「竹尾ペーパーショウ2014(COLLECTION)」会場風景

さて後半はクリエイションからコレクションへ。「記す」や「敷く」に「折る」、それに「いつくしむ」などの20の項目に沿った展示です。実際にどのようにして人は紙を使ってきたのか。紙と人の営みの関係を探っています。


「いつくしむー紙を束ねる喜びと奥義」

例えば「いつくしむ」。ずらりと並ぶのは本の綴じ見本です。造本家の太田泰友とデザイナーの加藤亮介の考案。何か特定の本を表すものではありませんが、これは見たことあるというサンプルも多いのではないでしょうか。


「包むー角砂糖の包み紙」

「包む」はずばり角砂糖の包み紙です。海外のデザインでしょうか。至って身近な角砂糖。コーヒーを飲まれる方は毎日使われるかもしれない。しかしここは紙の展示会です。中の砂糖ではなく、外の包みの意匠にスポットを当てています。


「したためるー欧州カリグラフィ」

「したためる」。これは驚きました。欧文のカリグラフィですが、何と手書きなのです。カリグラファーは三戸美奈子と中村弘美。この美しさです。実際にモニターでは文字を記す様子も紹介されています。


「封印するー封書百態」

「封印する」。白い封筒です。少し並べただけでもこれだけある。長方形なのか三角形なのか。はたまた横向きなのか。いわゆるフラップはどれほどあるのか。普段意識していないからかもしれません。封の構造がこれほど多様であるとは思いませんでした。


「飾るーめくるめきレース模様の紙」

多様性といえば「飾る」も同じではないでしょうか。レース状の丸いシート。お分かりいただけるでしょうか。ケーキの下に敷いてある紙、通称「レースペーパー」と呼ばれるものです。改めて思えばこれも紙だった。そしてデザインとしても見るべきものがある。紙は「食」とも密接に結びついています。


「NEW RELEASE」コーナー

最後は竹尾が近年発売した紙の新商品を紹介しています。ここでは紙の印刷加工見本を一枚ずつ前にしながら、竹尾のスタッフの方が紙について丁寧に説明して下さいました。紙に親しみ、紙の意外性に驚きつつ、また紙の新たな可能性を知る。ペーパーショウは企業向けの見本市としての側面もあります。竹尾だからこそのアプローチです。いつもながらに感心しました。


ノイズ「NTラシャ TONE OF GRAVITY」

りんかい線の東雲、なかなか馴染みのある場所ではないかもしれませんが、例えば渋谷から埼京線(りんかい線直通)の電車に乗ってしまえば25分ほど。また本数は1時間に2~3本程度ですが、豊洲や門前仲町からの都バスもあります。私はバスを利用しましたが、意外とスムーズでした。(但し東雲駅周辺にお茶するスペースなどはありません。)


「竹尾ペーパーショウ2014」会場風景

今回は展示自体もスケールアップ。東雲の広いスペースを効果的に用いています。また会期も前回より延長しての8日間。それに連日夜8時(入場は7時半まで)までのオープンです。仕事帰りに立ち寄っても良いかもしれません。

会期中連日、出品クリエイターによるトークショーも行われます。これがまた充実しています。

「竹尾ペーパーショウ2014」トークセッション (モデレーター:原研哉)

入場は無料です。6月1日まで開催されています。おすすめします。

「竹尾ペーパーショウ2014」@takeopapershowTOLOT/heuristic SHINONOME
会期:5月25日(日)~6月1日(日)
休廊:会期中無休
時間:11:00~20:00 入場は19時半まで。
料金:無料(受付にて入場カードに氏名を記す必要があります。)
住所:江東区東雲2-9-13 TOLOT/heuristic SHINONOME 2階
交通:東京臨海高速鉄道りんかい線東雲駅A出口より徒歩5分。
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