都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」 東京国立博物館
東京国立博物館・本館 特別5室
「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」
6/21〜7/10
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東京国立博物館・本館 特別5室で開催中の「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」を見てきました。
奈良の斑鳩、中宮寺門跡の本尊として名高い国宝の半跏思惟像。うっすらと笑みを浮かべた表情は実に流麗です。私もかつて中宮寺を訪ねた際、池に囲まれた本堂で、どこか涼しげに佇む姿に見惚れたものでした。
その半跏思惟像のルーツはインド、中国、そして朝鮮半島にあります。
うち一つが来日した韓国の半跏思惟像です。所蔵は同国の国立中央博物館。国宝78号の指定を受けています。
制作年は三国時代の6世紀。中宮寺の半跏思惟像に遡ること半世紀から1世紀前です。この日韓2体の半跏思惟像が両国の博物館として初めて同時に公開されました。先行した韓国展では約20日の会期に4万6千名もの人が集まったそうです。
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会場は本館の特別5室。平成館ではありません。がらんとした一室のみでの展示です。作品は2体。ほかはキャプションがあるのみです。写真パネルも一切ありません。数メートルの間隔をあけ、2体の半跏思惟像が向き合っています。360度から観覧可能です。背中も見ることが出来ます。なお露出ではありません。ともに重厚なガラスケースに収められていました。
まず一目で明らかなのは仏像の大きさが異なることです。チラシでは同じように見えるかもしれますが、実際は全く違いました。中宮寺が像高126センチあるのに対し、韓国は83センチ。よって40センチ超ほど中宮寺の半跏思惟像の方が大きいのです。
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国宝「半跏思惟像」 飛鳥時代・7世紀 奈良・中宮寺門跡
まずは親しみのある中宮寺の半跏思惟像を見てみました。素材はクスノキ。木造です。左足を下げ、右足を膝に組んでは座る仏像。背はやや直立しています。
左足首のあたりに左手をすっと落とし、右手、とりわけ中指で頬をなぞっています。お馴染みの思案のポーズです。指先は柔らかく、左手同様に力を抜いているように見えます。
黒光りする半身は滑らかで美しい。顔は面長です。頭には2つの球、すなわち結った髪が丸まっています。さらに両肩から肘のあたりに垂れているのも髪です。一部で円を描きながら、まるで肩を飾るように連なっています。
何よりも見入るのは穏やかな笑みでした。目を付し、微かに口を引いては笑う様は何とも上品です。顔立ちは中性的です。一見、あどけなくも映りますが、何か全てを達観したかのような落ち着きも感じられます。
一方で韓国国宝78号の半跏思惟像はどうでしょうか。
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韓国国宝78号「半跏思惟像」 三国時代・6世紀 韓国国立中央博物館
先にも触れたように中宮寺に比べると小ぶり。素材は銅。つまり鋳造仏です。基本的なポーズは同じでした。右足を組み、右手を頬にやっては思案しています。ただしかなりの前傾姿勢です。それゆえか例えばロダンの考える人を思わせるようにどっしりと構えているように見えます。
胴や腕はかなり細く、大きな顔や腰と比べると、造形的にメリハリがあります。台座は羽のように広がり、一部に天衣が翻るなど、どことない動きも感じられました。
線刻が極めて緻密です。中宮寺の仏像はどちらかと言えば起伏を抑えていますが、韓国の仏像は随所の線の彫りが深く、また細い。全体的に陰影があります。
右手の小指と薬指をかなり屈曲させているからでしょうか。指先には力が入っているようにも見えました。笑みはより明らかです。微かではありません。丸いお顔です。頬はやや垂れています。目は横に鋭く切れていました。
頭頂部にも注目です。華麗な宝冠を冠っています。一部は前へ塔のように突き出ていました。何でも太陽と三日月をあわせた日月冠と呼ばれ、遠くペルシャに起源があるそうです。
ここで甲乙をつけるのは意味をなしませんが、思いの外に韓国の仏像に惹かれました。もちろん中宮寺の像も素晴らしい。時間の余す限り、自由に行き来しては、互いに異なる魅力を味わうことができました。
最後に場内の状況です。会期が短いことを考慮してか、初日を除き、開館時間を連日20時まで延長。通常の金曜だけでなく、土日を含む全ての曜日も夜間開館しています。しかも休館日もありません。
私は先日の第1週の木曜日、18時過ぎに入りましたが、中におられる方はおおよそ20〜30人ほど。思った以上に空いていました。特段に最前列確保の列もなく、好きなペースでゆっくり鑑賞出来ました。
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セキュリティーが厳重でした。と言うのも、御仏展会期中は、正門で手荷物、金属探知機の検査を実施しているのです。ゲートは2箇所です。まず係の方がカバンを開けて中を調べます。スマホなどポケットの中身も出さなくてはいけません。金属探知機をパスすればOKです。空港並みのチェックでした。
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私が出向いた際は空いていたため、列は皆無でしたが、ひょっとすると土日は入場まで多少時間がかかるやもしれません。
また会期中は東博本館の総合文化展も20時まで開館しています。私も御仏展の後、常設へと廻りましたが、ほぼ貸し切りと呼んで良いほど空いていました。ちなみに総合文化展のみのチケットでは夜間開館時に入場出来ません。ご注意下さい。(ほほえみの御仏展のチケットが必要です。)
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300円のリーフレットがなかなか良く出来ていました。海を渡って初めて実現した日韓の半跏思惟像の邂逅。やはり貴重な機会だと言えるのではないでしょうか。
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会期は僅か20日間です。7月10日まで開催されています。
「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」 東京国立博物館・本館 特別5室(@TNM_PR)
会期:6月21日(火)~7月10日(日)
時間:9:30〜20:00。
*但し6月21日(火)は17時まで。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:会期中無休。
料金:一般1000(900)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円。中学生以下無料
*( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」
6/21〜7/10
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東京国立博物館・本館 特別5室で開催中の「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」を見てきました。
奈良の斑鳩、中宮寺門跡の本尊として名高い国宝の半跏思惟像。うっすらと笑みを浮かべた表情は実に流麗です。私もかつて中宮寺を訪ねた際、池に囲まれた本堂で、どこか涼しげに佇む姿に見惚れたものでした。
その半跏思惟像のルーツはインド、中国、そして朝鮮半島にあります。
うち一つが来日した韓国の半跏思惟像です。所蔵は同国の国立中央博物館。国宝78号の指定を受けています。
制作年は三国時代の6世紀。中宮寺の半跏思惟像に遡ること半世紀から1世紀前です。この日韓2体の半跏思惟像が両国の博物館として初めて同時に公開されました。先行した韓国展では約20日の会期に4万6千名もの人が集まったそうです。
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会場は本館の特別5室。平成館ではありません。がらんとした一室のみでの展示です。作品は2体。ほかはキャプションがあるのみです。写真パネルも一切ありません。数メートルの間隔をあけ、2体の半跏思惟像が向き合っています。360度から観覧可能です。背中も見ることが出来ます。なお露出ではありません。ともに重厚なガラスケースに収められていました。
まず一目で明らかなのは仏像の大きさが異なることです。チラシでは同じように見えるかもしれますが、実際は全く違いました。中宮寺が像高126センチあるのに対し、韓国は83センチ。よって40センチ超ほど中宮寺の半跏思惟像の方が大きいのです。
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国宝「半跏思惟像」 飛鳥時代・7世紀 奈良・中宮寺門跡
まずは親しみのある中宮寺の半跏思惟像を見てみました。素材はクスノキ。木造です。左足を下げ、右足を膝に組んでは座る仏像。背はやや直立しています。
左足首のあたりに左手をすっと落とし、右手、とりわけ中指で頬をなぞっています。お馴染みの思案のポーズです。指先は柔らかく、左手同様に力を抜いているように見えます。
黒光りする半身は滑らかで美しい。顔は面長です。頭には2つの球、すなわち結った髪が丸まっています。さらに両肩から肘のあたりに垂れているのも髪です。一部で円を描きながら、まるで肩を飾るように連なっています。
何よりも見入るのは穏やかな笑みでした。目を付し、微かに口を引いては笑う様は何とも上品です。顔立ちは中性的です。一見、あどけなくも映りますが、何か全てを達観したかのような落ち着きも感じられます。
一方で韓国国宝78号の半跏思惟像はどうでしょうか。
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韓国国宝78号「半跏思惟像」 三国時代・6世紀 韓国国立中央博物館
先にも触れたように中宮寺に比べると小ぶり。素材は銅。つまり鋳造仏です。基本的なポーズは同じでした。右足を組み、右手を頬にやっては思案しています。ただしかなりの前傾姿勢です。それゆえか例えばロダンの考える人を思わせるようにどっしりと構えているように見えます。
胴や腕はかなり細く、大きな顔や腰と比べると、造形的にメリハリがあります。台座は羽のように広がり、一部に天衣が翻るなど、どことない動きも感じられました。
線刻が極めて緻密です。中宮寺の仏像はどちらかと言えば起伏を抑えていますが、韓国の仏像は随所の線の彫りが深く、また細い。全体的に陰影があります。
右手の小指と薬指をかなり屈曲させているからでしょうか。指先には力が入っているようにも見えました。笑みはより明らかです。微かではありません。丸いお顔です。頬はやや垂れています。目は横に鋭く切れていました。
頭頂部にも注目です。華麗な宝冠を冠っています。一部は前へ塔のように突き出ていました。何でも太陽と三日月をあわせた日月冠と呼ばれ、遠くペルシャに起源があるそうです。
ここで甲乙をつけるのは意味をなしませんが、思いの外に韓国の仏像に惹かれました。もちろん中宮寺の像も素晴らしい。時間の余す限り、自由に行き来しては、互いに異なる魅力を味わうことができました。
最後に場内の状況です。会期が短いことを考慮してか、初日を除き、開館時間を連日20時まで延長。通常の金曜だけでなく、土日を含む全ての曜日も夜間開館しています。しかも休館日もありません。
私は先日の第1週の木曜日、18時過ぎに入りましたが、中におられる方はおおよそ20〜30人ほど。思った以上に空いていました。特段に最前列確保の列もなく、好きなペースでゆっくり鑑賞出来ました。
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セキュリティーが厳重でした。と言うのも、御仏展会期中は、正門で手荷物、金属探知機の検査を実施しているのです。ゲートは2箇所です。まず係の方がカバンを開けて中を調べます。スマホなどポケットの中身も出さなくてはいけません。金属探知機をパスすればOKです。空港並みのチェックでした。
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私が出向いた際は空いていたため、列は皆無でしたが、ひょっとすると土日は入場まで多少時間がかかるやもしれません。
また会期中は東博本館の総合文化展も20時まで開館しています。私も御仏展の後、常設へと廻りましたが、ほぼ貸し切りと呼んで良いほど空いていました。ちなみに総合文化展のみのチケットでは夜間開館時に入場出来ません。ご注意下さい。(ほほえみの御仏展のチケットが必要です。)
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300円のリーフレットがなかなか良く出来ていました。海を渡って初めて実現した日韓の半跏思惟像の邂逅。やはり貴重な機会だと言えるのではないでしょうか。
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会期は僅か20日間です。7月10日まで開催されています。
「ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像」 東京国立博物館・本館 特別5室(@TNM_PR)
会期:6月21日(火)~7月10日(日)
時間:9:30〜20:00。
*但し6月21日(火)は17時まで。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:会期中無休。
料金:一般1000(900)円、大学生700(600)円、高校生400(300)円。中学生以下無料
*( )は20名以上の団体料金。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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