「伊東マンショの肖像」 東京国立博物館

東京国立博物館・本館7室
「新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像」
5/17~7/10



東京国立博物館で開催中の「新発見!天正遣欧使節 伊東マンショの肖像」を見てきました。

安土桃山時代、キリシタン大名の名代としてローマを訪れた天正遣欧使節団の正使、伊東マンショ。使節団は中国、インド、ポルトガルなどを経由してイタリアへと渡ります。ローマでは教皇グレゴリウス13世に謁見し、舞踏会にも参加。大変な歓待を受けたそうです。

伊東マンショはヴェネツィアに滞在した際、現地の元老院の要請により肖像画のモデルを務めます。絵筆をとったのはヤコポ・ティントレットです。ヤコポは当初、集団肖像画として作品を制作します。没後、工房に残された絵を息子のドメニコが単独の肖像画として完成させました。ただ由来については諸説あります。個別に制作された肖像画をさらに切り詰めて完成させたという意見もあるようです。

その肖像画、同時代の文献に記録されていたものの、長らく存在が確認されていませんでした。発見後の世界初公開です。ティントレットの「伊東マンショの肖像」のほか、天正遣欧使節に関する文書、さらには東博のキリシタンにまつわる作品などが展示されています。

撮影が可能でした。


ドメニコ・ティントレット「伊東マンショの肖像」 1585年 ミラノ、トリヴルツィオ財団

まずはマンショの肖像画です。縦54センチ、横43センチ。油彩画です。想像していたよりもやや小さめの作品でした。白く大きな襞襟をつけ、帽子をかぶってはこちらを見やっています。印象深いのは目元です。流し目と言っても良いかもしれません。とかく涼しげです。左目はより左に寄り、右目だけを真っ直ぐ正面に向けています。服はワイン色でしょうか。僅かに赤らんだ顔はどこか疲労を帯びているようにも見えました。


「天正遣欧使節記」 イタリア・レッジオ刊行 1585年

マンショらの使節団を記録した天正遣欧使節記もありました。1585年の3月にイタリアに着いてから、ローマ滞在中の4月までの1ヶ月間の行動を記したものです。件の教皇と謁見のほか、初めて見る日本人に驚くイタリア人の様子なども書かれています。うちマンショに対する記述の一部は日本語訳がありました。パネルで紹介されています。


右:「三聖人像」 長崎奉行所旧蔵 16~17世紀
左:「三聖人像(模写)」 長崎奉行所旧蔵 安土桃山~江戸時代 16~17世紀


「三聖人像」も見どころではないでしょうか。制作は16~17世紀です。状態こそ異なるものの、モチーフや構図しかり、ほぼ瓜ふたつの作品と呼んで差し支えありません。右がイタリアからの舶来品です。左が模写でした。


「三聖人像」 長崎奉行所旧蔵 16~17世紀

ともに上部には聖母子が描かれ、聖人らは古代風の建物中に立っています。舶来品の素材は麻のキャンバスです。当時、日本にはないものだったことから、外国人宣教師により持ち込まれた作品だと考えられています。模写作も時代的にはほぼ同じです。イエズス会によって設立されたセミナリヨで絵画技法を学んだ日本人による作品だと言われています。

「親指のマリア」とも称される「聖母像」にも心惹かれました。青いヴェールに身を包んだ美しき聖母の姿。西洋美術館の所蔵で名高いカルロ・ドルチの作品に似ています。ただし本作についての画家は明らかではありません。


「聖母像(親指のマリア)」 長崎奉行所旧蔵 17世紀後期

来歴についてはある程度わかっているそうです。所有していたのはイタリア人宣教師のジョヴァンニ・バティスタ・シドッチ。時は江戸時代。既にキリスト教が禁じられていました。

シドッチは1708年、和装で屋久島に潜入。日本での布教を再開すべく活動しようとします。しかしながら直ぐさま捉えられ、江戸の小石川の切支丹屋敷に幽閉。1714年に47歳で没します。

目を伏せ、憂いを帯びた表情は実に甘美です。久々に対面出来て喜びもひとしおでした。


「新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像」会場入口

会場は常設こと総合文化展の第7室。本館の2階の屏風絵や障壁画などを展示するスペースです。

古代ギリシャ展やほほえみの御仏のチケットでも観覧出来ます。あわせて見るのも良いのではないでしょうか。

7月10日まで開催されています。

「新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像」 東京国立博物館・本館7室(@TNM_PR
会期:5月17日(火)~7月10日(日)
時間:9:30~17:00。
 *6月19日(日)までの土・日曜日は18時まで開館。
 *毎週金曜日は20時まで開館。
 *6月22日(水)~7月10日(日)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。
 *6月27日(月)、7月4日(月)は本館のみ20時まで開館。
料金:一般620(520)円、大学生410(310)円、高校生以下無料。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *特別展観覧券でも観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )