「蓮沼執太: ~ ing」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「蓮沼執太: ~ ing」
4/6~6/3



資生堂ギャラリーで開催中の「蓮沼執太: ~ ing」を見てきました。

1983年に東京で生まれた音楽家の蓮沼俊太は、蓮沼執太フィルを結成してコンサートを行いながら、映画、演劇、ダンスのほか、個展形式で展覧会を開くなど、幅広く活動してきました。

蓮沼にとって、「展覧会とは、空間の中で聴覚と視覚の接点を見つけていく行為」(公式サイトより)であるそうです。それでは一体、どのような展覧会を作り上げたのでしょうか。


「Thing~Being」 2018年 楽器金属材、ミラーシート、アルミ板

鏡面の空間が広がっていました。四方の壁は全てミラーシートで覆われ、床面には無数の真鍮色の金属と思しき部品が散乱していました。遠目では分からないかもしれませんが、近くに寄ると、楽器の一部のような素材も見えました。実のところ、楽器の製造過程で出た金属材でした。


「Thing~Being」 2018年 楽器金属材、ミラーシート、アルミ板

その金属材の上を歩くことが出来ました。すると靴と金属材が触れ、ジャラジャラ、あるいはカラカラといった金属音が鳴り出しました。そしてさらに人が加わると、別の箇所でも音が鳴り、さもハーモニーを築くかのようにして響き合いました。あくまでも楽器の一部に過ぎない金属材が、まるで楽器のように音を奏でていたと言えるかもしれません。これを蓮沼は「人の存在が音化する」作品と呼びました。


「Thing~Being」 2018年 楽器金属材、ミラーシート、アルミ板

床には断片的に光が揺らめいていて、戸外の風景が一面に映されていることが分かりました。また金属音のほかに、天井付近のスピーカーから、やはり同じく屋外らしき環境音が流れていることに気づきました。消防車かパトカーのサイレンらしき音も聞こえました。


「Ginza Vibration」 2018年 映像、環境音

これは銀座の風景、ないし音で、蓮沼は、資生堂銀座ビルの屋上ガーデンにマイクとカメラを設置し、リアルタイムの映像と音を、地下のギャラリー空間へと落とし込みました。耳を澄ますと、常に変化する銀座の街の様子が、体感出来るかもしれません。


「Tree with Background Music」 2018年 木、スピーカー

もう1室は、観葉植物と段ボールの展開で、中央に大きな植物が置かれ、背後にはスピーカーが設置されていました。また積まれた段ボール箱からは、カラカラとした乾いたパーカッションの音が響いてきました。さらにスピーカーより大きな音が発せられると、植物は僅かに揺れているようにも見えました。やはりここでも音を可視化する試みを行っていました。


「We are Cardboard Boxes」 2018年

段ボールから聞こえる音は、蓮沼が同じく段ボールを使って演奏した音でした。通常、音を発さないダンボールから聞こえるのも、意外性があるのかもしれません。

はじめに会場へ入った際、無数の部品が広がる光景に、やや戸惑いを覚えましたが、しばらくすると夢中で金属材をを足で打ち鳴らし、場内に轟く銀座の環境音に耳を立てている自分に気がつきました。主役は音として差し支えありません。



入口の説明文も音波で表現されていました。音と空間、それに鑑賞者との関係に着目した、異色の展覧会と言えるのではないでしょうか。


6月3日まで開催されています。

「蓮沼執太: ~ ing」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:4月6日(金)~6月3日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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