「ドビュッシーナイト」 6次元

ひょんなことから進行役のお話が舞い込んできた荻窪6次元での「ドビュッシーナイト」。



9/8(土)ドビュッシーナイト「音楽と美術のあいだで」 6次元
新畑泰秀(ブリヂストン美術館学芸課長)×ミヤケマイ(美術家)
〈進行〉 鈴木雅也(美術/音楽ブログ「はろるど」管理人)
時間:18:30開場 19時スタート
入場料:1500円(ドビュッシーカクテル付き)


受付も開始から僅か数十分でソールドアウトということで、思わぬ反響に戦々恐々しておりましたが、昨日無事に終えることが出来ました。

まずはご参加下さった方、どうもありがとうございました。

さて当日、私の至らぬ進行で会の内容が錯綜してしまったのも事実。新畑さん、ミヤケさん、またお聞き下さった方々、本当に申し訳ありませんでした。

というわけで当初予定のスケジュールを踏まえて、簡単に内容のおさらいを。

まずはブリヂストン美術館の新畑さんに「ドビュッシー展」の内容を企画立ち上げ時のエピソードも交えながらお話していただきました。



それがおおよそ40~50分程度、基本的にはレクチャー形式でしたが、途中にアドリブでミヤケマイさんの鋭い突っ込みも。

5分休憩した後はいくつかのトピックを設けて、ドビュッシーの音楽、そしてそれを取り巻く美術をはじめとした「空間」との関係を探る形式をとりました。

予定していたトピックは以下の通りです。

◯ドビュッシーの生い立ち、家庭環境、音楽への道。
◯ローマ賞コンクール(印象主義者と称された「春」の二バージョンを比較。)
・ボヘミアンとしてのドビュッシー(カフェでの交流他、彼を取り巻く人的コネクション。ルロール、ショーソン。)
・パリ万博、独立芸術書房(ドビュッシーに霊感を与えた文化。神秘主義的傾向について。)
・「選ばれし乙女」(ドニの挿絵。ドビュッシーとドニ。)
◯ドビュッシーの恋愛(ヴァニエ夫人、ギャビー、リリーらの女性遍歴。)
◯「海」(北斎の版画、エマの存在と自殺未遂のスキャンダル。)
△ドビュッシーの音楽のイメージの源。(日本、ギリシャ、アール・ヌーヴォー。金の魚。)
△ドビュッシーの絵画と音楽との親和性(モネ、クロスの黄金の島。カンディンスキー。)
・「ドビュッシーの日本での受容」

結局、ほぼ事前の予定通りに進行出来たのは◯、駆け足で消化不足になってしまったのが△、そして・に関しては、私のマズい進行と時間の関係もあり、お話いただくことは出来ませんでした。申し訳ありません。

ただここで注意したのは、展覧会の内容に完全に準拠するのではなく、あくまでも人間としてのドビュッシーを踏まえながら、芸術の源泉を辿ろうということ。



新畑さんも仰られてましたが、ドビュッシーの音楽は、地域や時代を横断しての様々なジャンルの芸術なりを消化した上で生まれた、極めて革命的なものであるということです。

「膜迷路/ミヤケマイ/羽鳥書店」

その辺については同じ作り手でおられるミヤケさんの制作に対する意識のお話も興味深いものがありました。新畑さんの豊富な知識に基づくお話はもちろん、随所でのミヤケさんのトーク、例えば「海」の楽譜表紙の北斎画のトリミングや日仏の恋愛観、それにドビュッシーの顔相などについては、思わず頷かれた方も多いのではないでしょうか。

「Debussy Collection/Sony Classics」

またドビュッシーの曲を作品の図版を掲載しながら流しましたが、如何だったでしょうか。特に「春」の声楽バージョンは私も初めて聞いただけに、一般的に知られる交響組曲との違いに驚かされました。

展覧会をご担当された新畑さんと現代美術家のミヤケマイさんという、全く異なった立場から語るドビュッシー。またこれまでとは違った新鮮味のあるトークではなかったかと思います。

なお肝心のドビュッシー展は今もブリヂストン美術館で10月14日まで開催中。



私もこの日のトークを踏まえて改めて見に行ってくるつもりです。

それでは最後になりますが、2時間半を超える長丁場、ドビュッシーナイトに参加して下さった全てのみなさま、本当にどうもありがとうございました。

*当日の写真は#ドビュッシーナイトでたくさんつぶやいてくださった@taktwiさんにご提供いただきました。ありがとうございます!



「ドビュッシー、音楽と美術―印象派と象徴派のあいだで」 ブリヂストン美術館
会期:7月14日(土)~10月14日(日)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
料金:一般1500円、シニア(65歳以上)1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
 *団体(15名以上)は各200円引き。
住所:中央区京橋1-10-1
交通 :JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。

注)ドビュッシー展会場写真は特別内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「青山悟展「The Man-Machine(Reprise)」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー
「青山悟展「The Man-Machine(Reprise)」 
8/29-9/29



ミヅマアートギャラリーで開催中の「青山悟展「The Man-Machine(Reprise)」へ行ってきました。

まさに超絶技巧、ミシンによる細密な刺繍作品で知られる青山悟、最近では家族から社会、政治的な主題をとったインスタレーションでも大いに注目すべきかもしれません。

本展でのテーマもすばり社会、ニュース記事に取り上げられた事件、事故、そしてその背景にある時に政治的なメッセージです。

入口を抜け、会場の床を見やるとそこには雑誌、国際的なニュースを扱うニューズウィークの紙面が並び、さらに目を凝らすとそれらが糸によって繋がっていることが分かります。

そしてその周囲にあるのは表と裏に異なった刺繍の施された作品です。

オバマ大統領に反原発を訴えるメッセージ、そしてジョン・レノンなど、さも関係し合わないイメージが表裏一体となることで、実はそれらが奥底で結びついている可能性があることを示唆しています。

さらに奥にあるのはこれらのニュースを紡ぐミシンそのものと、ミシンが動く様子を捉えた映像です。(映像はオープニングでのライブパフォーマンスを収録。)

また会場に流れるのはお馴染み、平子博一のミニマル的な音楽。ひたすら動き続けるミシンの運動とも重なり、時に掻き立てるようなリズムを刻んでいました。



機械と人間というテーマ、そして平子とのコラボは、目黒区美での「メグロアドレス」の展示と同様かもしれませんが、その時よりも空間自体の完成度は高かったのではないでしょうか。

「表に見えているものが裏にあるものと同様に意味がなかったとしても、裏にあるものが表に見えているものと同様に意味がなかったとしても、何かを信じ、選択していかなければならない」(青山悟)

暗がりの和室で浮かび上がる、とあるメッセージ、ぐっと心に響くものがありました。

9月29日まで開催されています。

「青山悟展「The Man-Machine(Reprise)」 ミヅマアートギャラリー
会期:8月29日(水)~9月29日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2階
交通:東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅出口5より徒歩5分。JR線飯田橋駅西口より徒歩8分。
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「飯川雄大 fade out, fade up」 児玉画廊東京

児玉画廊東京
「飯川雄大 fade out, fade up」
8/25-9/29



児玉画廊東京で開催中の飯川雄大個展、「fade out, fade up」へ行ってきました。

これまで主に映像作品を発表してきたという飯川雄大、本展では映像ではなくむしろ写真、とりわけ興味深い新作の「fade out, fade up」シリーズなどを出品しています。

写されているのは何気ない夜の街角、いわゆる夜景ですが、それを一般的な「夜景」として捉えてしまうには少々無理があるほど、表現においてとある何かが前面に押し出されていると言えるかもしれません。

ずばりそれは光に対する闇、ようは殆ど被写体や場所が分からないほど、言わば景色を覆い隠した闇そのものです。

光はあくまでも断片的のみ浮き上がり、そこにあるであろうビルや木立は闇に呑まれています。例えば木や枝は何らかの幾何学模様のように浮かびあがりますが、殆どのものはシルエットでさえも分からないほどにかき消されているわけです。

またおそらく電灯であろう光源も、この闇の前では単なる白い粒でしかありません。真っ暗闇、もちろんそこには光のグラデーションも示されていますが、それも限りなく曖昧でかつデリケートではないでしょうか。

夜、それは確かに暗いものではありますが、これほど「闇」の力は強く、また世界を覆っているとは思いもよりません。風景を闇に溶かす夜の景色、終始ピンと張りつめた緊張感と静けさに包まれていました。

9月29日までの開催されています。

「飯川雄大 fade out, fade up」 児玉画廊東京
会期:8月25日(土)~9月29日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:港区白金3-1-15 白金アートコンプレックス1階
交通:東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅3番出口より徒歩10分。東京メトロ日比谷線広尾駅1番出口より徒歩15分。
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9月の展覧会・ギャラリーetc

少々バタバタしております。9月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「アール・デコ 光のエレガンス」 パナソニック汐留ミュージアム(~9/23)
・「東京都美術館ものがたり/Arts&Life:生きるための家」 東京都美術館(~9/30)
・「国宝 古今和歌集序と日本の書」 大倉集古館(~9/30)
・「東京国立博物館140周年 秋の特別公開」 東京国立博物館(9/15~9/30)
・「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」 千葉市美術館(9/8~10/21)
・「コレクション展 平家物語画帖」 根津美術館(9/8~10/21)
・「与えられた形象―辰野登恵子/柴田敏雄」 国立新美術館(~10/22)
・「お伽草子展」 サントリー美術館(9/19~11/4)
・「ジェームズ・アンソール展」 損保ジャパン東郷青児美術館(9/8~11/11)
・「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」 府中市美術館(9/12~11/11)
・「対話する時間 コレクションによる現代美術展」 世田谷美術館(9/15~11/11)
 #対談「現代美術の伴走者との対話」 日時:9/15(土)14:00~ 出演:安齊重男(アート・ドキュメンタリスト)、酒井忠康(世田谷美術館館長) 定員:先着150名 当日午前10時より整理券配布、無料。
 #ジェームズ・タレル「テレフォン・ブース」体験 日時:9/22(土・祝)以降、会期中の毎土曜、午後1時~午後4時。希望日の3日前までに要事前申込。
・「日本の70年代 1968-1982」 埼玉県立近代美術館(9/15~11/11)
・「琉球の紅型」 日本民藝館(9/4~11/24)
・「近江路の神と仏 名宝展」 三井記念美術館(9/8~11/25)
 #仏画を中心に前期(9/8~9/30)、中期(10/2~10/28)、後期(10/30~11/25)で展示替えあり。
・「棚田康司 たちのぼる。展」 練馬区立美術館(9/16~11/25)
 #作家トーク 日時:9/22(土)、10/27(土) 15:00~ 予約不要。*10/27は三潴末雄氏との対談。
・「没後70年 竹内栖鳳」 山種美術館(9/29~11/25)
 #前期:9/29~10/28、後期:10 /30~11/25
 #講演会「教科書に載らない実力派・竹内栖鳳について」 講師:山下裕二(山種美術館顧問) 10/13(土) 14:00~ 要事前申込
・「シャルダン展」 三菱一号館美術館(9/8~2013/1/6)

ギャラリー

・「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.4 浅見貴子」 ギャラリーαM(~9/15)
・「小沢裕子×村山悟郎 世界と孤独Vol.3」 日本橋高島屋美術画廊X(~9/17)
・「松井えり菜:わびさびウートピア」 山本現代(~9/21)
・「松江泰二展」 TARO NASU(~9/21)
・「東恩納裕一展」 NADiff a/p/a/r/t(~9/23)
・「榎倉康二展」 タカ・イシイギャラリー(9/4~9/29)
・「青山悟展」 ミヅマアートギャラリー(~9/29)
・「志村信裕展」 Lamp harajuku(~9/30)

さて今月はともかく2つ、前々から非常に楽しみにしていた展覧会を挙げないわけにはいきません。



「シャルダン展」@三菱一号館美術館(9/8~2013/1/6)

それが府中と三菱、デルヴォーとシャルダン展です。シャルダンはWEBサイトも充実、国内では初となる本格回顧展だけに心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。



「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」@府中市美術館(9/12~11/11)

そしてデルヴォーです。元々私自身、埼県美の常設作品の「森」に一目惚れして以来、ずっと追っかけていた画家でした。こちらも久々の国内の巡回展です。大いに期待したいと思います。

さてこのところ好調の練馬区美、また要注目です。昨年のスパイラルやミヅマでの個展も印象深かった棚田さんの展示が、16日よりスタートします。



「棚田康司 たちのぼる。展」@練馬区立美術館(9/16~11/25)

練馬ならではのギャラリートーク他、関連イベントも充実。やや制約もある空間ではありますが、それにどう棚田さんが向き合うかにも注目したいと思います。

ところで会期末を迎え、さらに混雑に拍車のかかっているマウリッツハイス美術館展ですが、会期最終週の延長開館が決まりました。



「9月11日(火)~17日(月・祝)は午後8時まで延長開館」マウリッツハイス美術館展)@東京都美術館(~9/17)

夏休み中は連日18時半まで開館していたこともあり、夕方が穴場となっていましたが、この最終週の夜間もひょっとすると狙い目になるかもしれません。

それでは今月も宜しくお願いします。
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「バーナード・リーチ展」 日本橋高島屋8階ホール

日本橋高島屋8階ホール
「生誕125年 東と西の出会い バーナード・リーチ展」
8/29-9/10



日本橋高島屋8階ホールで開催中の「生誕125年 東と西の出会い バーナード・リーチ展」へ行ってきました。

幼少期は日本で過ごし、イギリスへ渡った後も度々来日し、民藝活動にも熱心に取り組んだバーナード・リーチ。人気の陶芸家だけに、各地の美術館なりで作品を見る機会も多いかもしれません。

本展ではそうしたリーチの創作の軌跡を、約100点の陶芸作品と、20点余りの素描・版画作品にて辿っています。

構成は以下の通りでした。

第1章 陶芸への歩み
第2章 リーチ芸術の開花
第3章 日本民窯との出会い
第4章 東と西の融合


展示はリーチ22歳の時、ようは再び来日した1910年前後からはじまります。ロンドンの美術学校でエッチングの技法などを学んだリーチは1909年、かねてより郷愁をいだいていた日本へとやってきて、柳宗悦らと親交を深めました。


「楽焼走兎図大皿」(1919年) 大原美術館

ここで面白いのはリーチのが熱心に取り組んだ楽焼きです。モチーフは多種多様、特にまるで古代エジプトの紋様のような兎を描いた「楽焼走兎図大皿」などは印象に残りました。


「鉄釉蝋抜巡礼者文皿」(1960年)  日本民藝館

1920年にイギリスへ移ったリーチはセント・アイヴスに「リーチ・ポタリー」という窯を開きます。以降のリーチはまさに東西融合。西洋と東洋のイメージを組み合わせ、イギリスの伝統的な技法にも着目しながら、独自の陶芸世界を切り開いていきました。


「鉄絵組合陶板 生命の樹」(1928年) 京都国立近代美術館

それにしても先のモニュメンタル兎の大皿しかり、今度はグリフォンを描いた「ガレナ釉筒描グリフォン文大皿」など、やはりリーチの作品には総じてエジプトからイスラム、そして中国を経て日本へと至る、オリエンタルなイメージが取り込まれてはいないでしょうか。

またリーチの自由な線描にも要注目です。シンプルな「鉄絵草文図」をはじめ、いくつか出ているリーチの軸画など、のびやかでかつリズミカルな線がうまく紋様として作品に消化されています。


「灰釉鉄絵手付醤油注瓶」(1918年)  京都国立近代美術館

形は大きな壺から皿、一転しての小ぶりの紅茶碗と様々ですが、リーチの生き生きとした線、陶芸自体の面白さとあわせて、実に魅力的に映りました。

さてこうしたデパートの展示と言えば併設の物販も見逃せませんが、今回の高島屋はそれは通常のレベルをゆうに超えています。



「用の美とこころ 民藝展」@日本橋高島屋8階催会場(8/29~9/10)

というのも併設する催会場では「民藝展」と題し、現在にも脈々と受け継がれた民芸品の数々が展示、即売されているのです。もちろんこちらは入場無料。

全国各地から集められた民藝店の数は90軒ほど。しかもいずれもが思わず手にとって、欲しくなってしまうようなものばかりです。

それにしても何故にここまで充実した展示と催事が出来るのかと思ってしまいますが、実は高島屋、昭和初期に柳宗悦や河井寛次郎らと協力し、大規模な民藝展を行ったことがあるほど深い関わりがあるのだそうです。

そして何と会場では昭和9年にここ日本橋高島屋で行われた民藝展の再現展示(リーチのデザイン。)までがお目見え。まさかこれほど力の入った企画だとは思いませんでした。

「バーナード・リーチ日本絵日記/講談社学術文庫」

なお民藝展で5000円以上購入すると、リーチ展のチケットをいただけるそうです。狙い目かもしれません。

「日本民藝館所蔵 バーナード・リーチ作品集/筑摩書房」

9月10日まで開催されています。これはおすすめします。

「生誕125年 東と西の出会い バーナード・リーチ展」 日本橋高島屋8階ホール
会期:8月29日(水)~9月10日(月)
休館:会期中無休。
時間:10:00~20:00 *最終日は18時閉場。
料金:一般800円、大学・高校生600円、中学生以下無料。
住所:中央区日本橋2-4-1 日本橋高島屋8階
交通:東京メトロ銀座線・東西線日本橋駅B1出口直結。都営浅草線日本橋駅から徒歩5分。JR東京駅八重洲北口から徒歩5分。
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「特集陳列 地震研究と歴史資料」 東京国立博物館

東京国立博物館(総合文化展)
「特集陳列 地震研究と歴史資料」
7/31-9/9



東京国立博物館の総合文化展(平常展・本館 特別1室)で開催中の「特集陳列 地震研究と歴史資料」へ行ってきました。

有史以来、災害大国とも言えるほど数多くの災害に見舞われてきた日本。

中でも甚大な被害をもたらしたのは、先般の東日本大震災の例を挙げるまでもなく、地震、そして津波災害に他なりません。

本展ではそうした過去、日本が襲われた地震の歴史を、日本書紀に始まる各種資料によって紹介しています。


「日本三代実録」江戸時代(1673年)

まずはその東日本大震災です。国内では観測史上最大のM9というまさに未曾有の規模でしたが、実は今から1000年以上前の869年、同じ性質をもつ地震、いわゆる貞観地震が発生していたことが「日本三代実録」に記録されていました。

そしてつい先日、政府の有識者会議から発表された「南海トラフ巨大地震」の被害想定のあまりにもの破滅的な数字に驚いた方も多いかもしれません。


「諸国大地震並びに大津浪」江戸時代

南海トラフでのいわゆる三連動地震は最近では1707年の宝永地震、そして1854年の安政地震と、約150年間隔で発生していますが、例えば安政地震の際に起きた津波の様子も「諸国大地震並びに大津浪」によって残されています。

この地域のプレート境界型地震については、規模はもとより、安政地震の90年後に南海と東南海の二連動地震(その時は東海地震は発生しませんでした。)が発生するなど、規則性についても議論あるやもしれませんが、現在は安政地震から既に160年近く経過。宝永と安政の間隔が147年であったことを考えると、何らかの形での大地震は切迫していると言えるのかもしれません。

また切迫と言えばもう十数年来警告され続けている首都直下型地震も同様です。


「安政二年江戸大地震 附類焼場所図」江戸時代(1855年)

三連動地震の起きた安政期は地震が多く、安政東海・南海地震の起きた一年後の1855年には、江戸直下でM6.9の地震も発生。推定震度6という揺れが市中を襲い、数千名もの人命が失われました。


「江戸大地震被災地番付」江戸時代(1855年)

しかしながら一方でそのような被害に見舞われながらも、庶民の逞しい生き様を記録した資料があるのも興味深いところ。地震をパロディー化、その被害地域をランク付けして刷り物にしたという「江戸大地震被災地番付」には思わずにやりとさせられました。


「鎌倉大日記」室町時代

今日9月1日は防災の日。必ず、しかもいつも忘れた頃にやって来る大地震に備えるためにも、こうした資料に当たっていくことは重要だと言えるのではないでしょうか。平常展内の一室、地味な資料展示ながらも、非常に見入るものがありました。


展示室風景

9月9日まで開催されています。

「総合文化展 特集陳列 地震研究と歴史資料」 東京国立博物館(本館 特別1室)
会期:7月18日(水)~9月9日(日)
休館:月曜日。
料金:一般600円(500円)、大学生400円(300円)、高校生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。「特別展 青山杉雨の眼と書」のチケットでも観覧可。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで) *毎週金曜日は20時、土・日・祝・休日は18時まで開館。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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