田舎暮らしの最初の1週間はあっという間に終った。母の入院騒ぎのどたばたと平行して、色々なことが同時に起こった。中でも買ったばかりの車を傷つけた、誰に文句も言えない自分の責任で悔しいことだった。
フリーランチはない
実家に一泊した家内を送る途中、道が予想以上に混んでいて汽車に間に合わないことに気付き直接空港に向かうことにした。国道沿いの駐車場に入り車をUターンさせようとして、ポールにボディをこすって傷つけた。急いではいたが、何で強引に左折しようとしたのかいまだにわからない。
後部ドアとその後ろのボディをひどく傷つけてしまった。家内を送った後保険会社に連絡し指定の修理会社を紹介されたが、隣の市にあり遠過ぎるのでネットで近場の修理工場を探した。土日営業の修理会社に車を持っていき見積もりして貰い、翌月曜日に保険会社に連絡し了解を取った。
交換部品が届いたと連絡を受け水曜日に車を納め、金曜夕方には修理が上がった。知人は別の修理会社を勧めてくれたが、安価だし仕上がりも悪くなかった。後部ドアは前方ドアに比べ事故車から交換部品が手に入り易いらしく、板金の打ち直しと塗装は後部ボディだけで済んだようで、結果的には思ったより少ない費用で修理できた。
板金打ち直しはさすが職人技と思わせる仕上がりで、修理箇所とそれ以外の区別が全くつかず満足した。修理中の代車は母親の入院騒動で活躍、助かった。だが、保険会社から来年保険更新時は3等級下がって保険料金が上がりますといわれた。フリーランチはないということだ。
田植えの時期
家内が東京に戻った夕方、堤防を軽く走った。家に戻る途中我が家の田んぼのそばに車を止めて様子を見ている中年男性を見かけた。多分母が毎年稲作を依頼しているKさんだろうと思って挨拶すると、想像通りだった。昨日田植えしたので様子を見に来たそうだ。今は田植えの時期だ。
品種は秋田小町、昨年やむを得ず除草剤を使ったが、今後も出来るだけ無農薬稲作で行く積りと意欲満々だった。Kさんは52歳、まだまだ若い。しかし、後継者がいないのは何処も同じで、将来この辺の稲作をまとめて引き受ける会社組織のような形を考えたらどうかと水を向けたが返事がなかった。
この田んぼの隣は我が家の畑で、昨年まで母が芋や豆などの野菜を作っていた。母の体力が衰え手入れが行き届かず、任された私は昨年除草でてこずったところだ。畑の2/3は昨年撒いた除草剤が効いて雑草が少ないが、残りはヒエみたいな根の強い雑草が腰の高さまで伸びていた。
雑草との戦い
放置すると大変なことになるのは昨年の経験で分かっていた。今の時期はドンドン成長するので、何とかしないと更に大きく伸び処置に困る。百姓は雑草との戦いだという。一坪農園の管理とは違う。だが、私には農業に対する情熱も知識もない。ただ周りに迷惑を掛けたくないというだけだ。
隣のオバサンに聞くと、雑草の花が種になるまでに早く除草したほうが良い、今なら土地が柔らかく根が張っていないので手引きでやれるはずと教えてくれた。その後雨の日を避け、晴天が続いた2日目の早朝病院に母を見舞った後、スポーツドリンクを抱えて水分補給しながら除草を開始した。その日は暑く、たった半日で日焼けした。
ふと見ると、田植えされたばかりの例の田んぼに苗を抱えて入っていく女性が眼に入った。挨拶すると、Kさんの奥さんだった。「機械植え」だと苗が浮き上がってしまうものが出てくるので、「手植え」で補植するのだそうだ。Kさんは普段は会社勤め、稲作の面倒見は主婦業の奥さんの役目らしい。田んぼ専用のゴム長を履かず、裸足が一番良いと動き回る奥さんの姿がやけに若々しかった。
農業相談役
昨日は引き続き昨年まで家庭菜園の延長で茄子、芋、南瓜など野菜と、地続きのその先にお茶と梅を育てている麓の畑の除草をやった。まだ母が元気だった2月頃植えた南瓜がいくつか実をつけていた。昨年は梅もミカンも豊作だったが、聞くと今年は何処の家も梅の出来が悪いそうだ。
不作の梅だが枝葉だけは盛んに伸びて道路側にはみ出しており、剪定する時期かどうか馴染みのオジサンの助言を求めた。梅はそろそろ剪定の時期、だが木によって時期は違うそうだ。家の庭木も森のように盛り上がっているが、例えば柿の木は秋に切れと言われた。
2日目の除草が終わり昨日病院に言って母に報告すると、庭木の手入れや山の草刈と合わせて梅の剪定も毎年お願いしているYさんに頼めという。だが連絡先が判らない、何とか調べないと。いずれにしても、入院した母が2日目にして落ち着きを取り戻し、少しでも相談できるのは助かる。
除草に励んだこの2日間は晴天だったので家中の雨戸を開け、風通しを良くした。敷物や座布団、座椅子などを全て天日干した。家中じめじめしていたのが、少しはすっきりした気がする。今日は一転、終日雨。一休みできるが慣れない農作業で体がだるい。食事は簡単に作れるウドン、ソバ、パスタと麺類ばかりでうんざりしてきた。■