26年ぶりの株暴落
本日の日経平均は前週金曜日比486円安の7162円90銭でひけた。バブル崩壊後の最安値どころか、1982年10月7日以来26年ぶりの安値になったと報じられている。銀行の資本増強のニュースが逆効果になり不安を与え、円高・株安の不安連鎖に火を注いだ格好となった。
サブプライムの影響を最も受けてないといわれた日本経済なのに、何故、世界で最も株価が下落し、かつ通貨が最も高くなったのだろうか。日米以外の総ての国は株価暴落と平行して通貨下落が起こっている。米国はさておき、何故日本の株価大暴落と円急騰が同時進行しているのか。
数学で関数内変数がとりえない値を特異点[1]と呼ぶが、日本だけは経済原則があてはまらない「特異」な国なのだろうか。何故、株安・円高が同時進行するのか同じ疑問を持つ人は多いらしく、お昼のお茶の間向け番組で解説があったのを聞いたが、納得できる内容ではなかった。
株安・円高の原因
株安は世界市場動向と合致しており、心理的な要因はあるものの、輸出に頼る日本の株価暴落は不思議とは思わない。だが円の独歩高は何故だろうか。世界で最も株安が起こる国の通貨が最も高くなるのは理屈に合わない。そこで例によって誤解を恐れず私の大胆仮説を展開する。
根本原因は日本の度を越した巨大な貯蓄に求められると、私は推測する。日本人の個人資産は世界同時株安で目減りしたが年初1500兆円以上で、大部分は投資されること無く低金利の預金や保険金で眠っていた。だが、個人は直接投資しなくとも金融機関は預けられた預金を運用した。
現実には日本国内に魅力的な投資物件が無い為、多くは海外のヘッジファンド等に貸し出され高いリターンが期待される通貨に変えて投資された。所謂円キャリーだった。世界不況になり、今まで貸し出された巨額の資金が一斉に返却され膨大な円買いが起こり、円の暴騰が起こったわけだ。
量は質を変える
巨額な個人資産が預けられた金融機関が国内に投資先を見出せず、運用益を売るために海外に向った。しかし、金融機関も用心深くリスクのある投資よりも「安全な貸し出し」を選択した。日本人は投機に走らず安全な預金を選び、金融機関も投資より安全な貸し出しをしたはずだった。
しかし、巨額であったために変調が起こった時の資金の逆流が、土石流みたいな破壊力を持ったというように私は感じる。後知恵的な言い方になるが、類例のない巨額の金融資産にはそれなりの使い方、もっと言うなら秩序ある運用法を考える必要があった。量は質を変えたと私は思う。
私の経験では、これは日本的組織が陥り易い罠のように感じる。
特別に世界を揺るがすような挑戦的・挑発的なことはせず、より確かで安全な手法をとり着実に成功の道を辿る。しかし、全員が同じ方向を向き、それが卓越している為か、はたまた知恵が無い為か、いつの間にか突出して巨大になり存在自体が変質、環境変化に脆弱な体質になるという罠だ。民族的DNAとでも言えばいいのだろうか。しかし死ぬわけじゃない、必ず朝が来る。■
[1] 例えば関数F(x)=1/xにおいてx=0は存在しない特異点といわれる。