鳩山首相の外交デビューは概ね成功と見られているが、G20直後の成果は皮肉にも円高と株価急落だった。政権交代後100日以内でまだ批評を控える試運転の段階だが、早くも難問山積で政権舵取りは容易ではないだろう。それは予想されたことだが、ここに来てもっと厳しい状況になる可能性が出てきたように感じる。
新政権は経済無策?
最も懸念されるのは一貫した経済成長政策が見えないことだ。総選挙の前から指摘されてきたことだが、矢継ぎ早に打ち出される新方針からもまだ具体的なプランがうかがえない。消費者に直接支援して民需を喚起するという以外にコレといった景気対策が見受けられないのは異常だ。
総選挙圧勝後の派手な外交デビューとマニフェストに基づく新方針連発の高揚感で見逃されているが、気がつくと経済無策が足元の実体経済を危うくし今後具体的に出て来る現実が、早々と民主党政権に冷や水をかける恐れがあるように感じる。民主党政権はこの現実を直視して早々に手を打つべきと信じる。
雇用悪化と株価低迷が政権の脅威
何といっても先ず雇用の問題だ。善悪の問題はさておき公共事業の見直しは特に地方の雇用悪化をもたらすことは避けられない。G20とその後の藤井財務相の不用意な発言は直ちに円高を招いた。民主党政権下で派遣禁止の行方を案じ、円高が続く経営環境が避けられないとみて、頼みの製造業は生産拠点の海外シフトを加速させるのは必至と各紙は報じている。どうやって雇用回復するのか私には分からない。
更にメインストリームメディアは殆ど報じていない問題がある。日本が売られているのだ。総選挙があった8月末から世界の株式市場は米国・欧州・アジアは全て上昇しているのに、日本のみ株価が下落している。どこに投資したら一番儲かるか、日本に投資しても大丈夫かという、新政権の高揚感など無い投資家の冷徹な判断は無視できない。
国内の高支持と海外の冷めた目
亀井金融相のモラトリアム・郵政民営化後退は金融株を暴落させ、経済界だけでなく政権内にも懸念する声が出ている。円高進行に慌てた藤井財務相は発言を訂正した。海外の投資家はこのような発言のブレで、元々経済政策に不安のあった新政権を疑いの目で見るようになった。私は信頼回復のための具体的景気回復プランを早急に示すべきだと思う。
雇用悪化が更に悪化するような事態になると内需回復など期待できず、株安は年金資金の運用損など徐々にボディブローのように効いて来る。そうなると、折角の政権交代で進むと期待された政治改革が支持を失い腰折れになる可能性がある。
金の切れ目が政権失速の始まり
足元での鳩山内閣の高い支持に基づいた改革も、国民の財布が寂しくなった途端に冷めてしまう。加えて民主党は総選挙に圧勝したが、国民は政策を支持していないことにもう少し謙虚になるべきであると思う。国民新党・社民党の政策を支持して民主党に勝たせた訳ではない。新政権の維持の為には民意を探りながら修正を図る慎重な運営が必要ではないだろうか。
最後に基本に戻って単純な内需重視が、我国にとって適切で経済を牽引できるか再考すべきだ。日本は本来輸出立国で外需が日本経済を引っ張って来た。少子高齢化が進む我国はグローバル経済から利益を得て豊かになるのがベストだ。利益配分を見直し国内需要の喚起を図りつつ、世界同時不況後の枠組み作りに積極的に参加して国益を守る、そういうセンスを持ったリーダーシップが今求められる。■