金融規制は支持率低下対策?
オバマ大統領が就任1年目に打ち出した金融規制案をどう評価するかについて、先日来から日本の民主党の支持率低下に関する投稿の中で、私は米国議会のポピュリズムに直面して打ち出した政策と”軽く”触れた。支持率が低下する中で規制案の実現性は、単に法案の成否を超えて複雑な様相を示しているように感じる。ここで私の理解をまとめて何が問題か議論してみたい。
オバマ大統領の1年目の支持率は歴史的低落し、民主党の牙城で勝って当然と絶対視されていたマサチューセッツ州の上院議員の補欠選挙に敗れるという事態に、オバマ大統領が方針変更するのかどうか対応が注目されていた。支持率の低下は、オバマを大統領に導いた無党派層がオバマを見限り始めた為といわれている。
リベラルへの回帰?
私は昨年9月時点でオバマの支持率低下を、米国の草の根(中流階級)が本来の保守的性格を現した為だろうと下記の推測記事を投稿した。その延長線上で彼等は雇用悪化が改善されないまま、巨額の救済資金(税金)を受けた金融機関が巨額のボーナスを支給したことに怒り狂い、ついにマサチューセッツで反乱を起こしたということだろうか。
http://blog.goo.ne.jp/ikedaathome/d/20090907
先の一般教書演説でも金融規制案が再び強調され、オバマ大統領が演説だけでなく本気で金融規制をやることを示した。せざるを得なかったというべきだろう。その評価はまちまちである。中途半端な医療改革が結果的に保守層とリベラルの両方から支持を失ったと見て、本来のリベラルに回帰しようと方針変更したとの評価が私には尤もらしく聞こえる。
pros and cons
規制案の概要は金融機関の規模と事業内容に制限を設け、金融機関がヘッジファンドを保有及び投資することを禁じている。考え方は、何が起こってもそれが金融システムの崩壊の危機をもたらす様な芽を予め摘んでおこうというものだ。結論的にいうと、リーマンショックから世界同時不況に至った問題の本丸をついた、あるべき姿を提案する正論だと私は思う。
だが、必ずしも良いタイミングとは思えないというのが、もう一方の私の評価だ。米国から新興国まで世界経済が順調に回復の道を辿っているのは、大雑把に言うと世界の余剰資金が米国の金融システムを媒介にして供給されているからだ。それ以外の方法で高リスクの新興国や事業に資金を配分できない。今資金の流れが止まれば、潤滑油が切れて経済回復の勢いをなくし腰折れになる恐れがある。
ステーク・ホールダー(市場、世界、日本)
案の定オバマの金融規制案が発表されるや否や、ウォール街だけでなく世界の主要な証券市場の株価が下がり、米国の金融システムが果たす役割を証明した格好になった。市場は規制案をマイナスと評価した。規制案はやや唐突でその具体的な実現性が曖昧で、打ち出したタイミングがウォール街を忌み嫌う大衆受けを狙ったもののように私も感じる。
さてその実現性についてだが、マサチューセッツ州の敗北で規制案の上院通過の見通しが不透明と伝えられている。更に規制案はボルカー前FRB議長の考え方を反映したものであると言われ、世界各国と歩調を合わせ連携実行することが実質的に機能するために重要とのコメントが報じられている。
従来は欧米の規制を逃れてタックスヘブンにリスクマネーが流れ、今回の世界同時金融不安の要因の一つとなったことから当然であろう。日本の金融システムは金融技術の後進性と長年の横並び先送り体質で、今回気がつけば周回遅れで追いついた気分になっているかもしれない。だが、多分その時は同じルールではないのに気がつき臍をかむことになるのではないだろうか。■