盆明けの台風が夏のピークの終わり、それ以降は秋に向かって徐々に凌ぎ易い気候になると勝手に決めていたのだが、昨日今日とこの夏一番の暑さが続いている。朝食後、寒暖計を見ると既に30度を越えていた。異常な暑さで、熱中症で亡くなるお年寄りが連日報じられている。
彼等の多くは一人暮らしで母の年齢と重なる80代の人達で、ニュースを聞くたびに母のことを思い出す。今から思えば、今年の4月に脳梗塞のリハビリ後嫌がる母を老人ホームに入居させて本当に良かった。
老人ホームに入居させるまでは、この数年暑さと寒さが厳しい盆暮れの時期は実家に戻り、万が一の時に備え母と同居した。この夏、新聞テレビは一人暮らしの老人が体温の上昇を感じ取れなくなって熱中症になり死亡した例を報じていた。そういえば母もそういう兆しがあった。
昨年夏のうだるような暑い日でも、母が部屋の冷房をつけようとしなかった。今思い出せば暑さや寒さに対して母が鈍感になっていたようだ。だが、私もその母の変化に鈍感だった。偶然にも母が脳梗塞で自宅介護が不可能になり老人ホームに入居させたのが幸いしたのであり、そうでなければ今年の異常な暑さにやられたかもしれない。
母が老人ホームで見守って貰っているお陰で、今年からお盆とお正月は東京の自宅で過ごせるようになった。熱中症で亡くなる高齢者のニュースを見ても他人事と安心していられる。むしろ、今年の夏の東京の異常な暑さで私が損した気分になるくらいだ。
今まで自宅介護の為に、実家で歩行器を借り、段差を減らし、浴室や階段に手すりをつけたりした。しかし、それが利用されたのはほんの少しの期間で、後から考えるともっと早くやれば良かったと反省することばかりだ。それが明らかに必要と分かった時点では、もう遅すぎた。
向かいの家のご主人も自宅介護されている。毎週医師と看護婦が往診に来、介護士が毎日顔を出している。奥さんによれば、浴室の改修とか手すり等をやったけど、早くもご主人が利用出来なくなったものもあるそうだ。私の実家の例と同じようなものだと思った。
「でも、それでいいのよ」と彼女は言った。「だって、亭主が使わなくなっても、今度は私が必要だもの」と。成る程、その通りだ。私も実家の急な階段の上がり降りは手すりがないと不安だし、段差が低くなり楽になった。何時かは分からないが、私の番が近づいているのは間違いない。■