民主党が中間選挙で歴史的大敗を喫した翌日、最大のニュースはNY証券市場が大幅に上昇しリーマン・ショック前のダウ平均に戻ったことだ。選挙の大勢が判明した翌日、連銀の金融緩和第二弾が好感され、先月の雇用が予想以上に改善された結果を反映したものといわれている。民主党の大敗は予想通りであり、重大事項ではあるけど予測が確定しただけのことだった。
FOMCの日程は事前に決まっているのだが、選挙翌日とは真に上手い日程だ。もし選挙が後に来たら量的緩和を決定できなかったも知れない。「じゃんけん後出し」ではないが、微妙な日程のズレだった。民主党が負けたから株価が上昇したというのも正確ではないと思う。
日本でもテーマは異なるがつい最近同じことが起こった。民主党代表選で菅首相が小沢氏を破って民主党代表になった直後、日銀は円高対策として包括的金融緩和を発表した。こちらの方は明らかに民主党代表選に影響を与えないよう政治的に配慮された日程だった。
当事者はそうなることを織り込んでいたと思われる行動が直後に続くことも見慣れた風景だ。オバマ大統領は選挙の大勢が判明すると、躊躇無く共和党の有力者と議会運営の協力を申し出た。こうなることを予測し、十分に練られたアクションだった。状況は異なるが、菅首相は小沢氏が検察審査会で強制起訴される事態を織り込んで内閣改造をしたはずだ。
だが予測できない事件がある日突然起こると、通常当事者は「折込済みで無い」事態に追い込まれ、続いて考えうる最悪の事態になりがちである。昨日の尖閣列島事件の画像漏洩はこの手のものだ。想定外の事件の場合、対応の後味が悪いのはじっくり考える余裕が無いからでもある。TheDay Afterなんて言っていられない。こういう時にこそ国家の実力が問われる。
だが、与野党やメディアを含めて日本全体の反応が寂しい。こういう時にしか安全保障を考えない人達が思いつきの意見を得意げに喋るのは見苦しく為にならない。明確になった中国漁船の無茶苦茶な振る舞いに先ず非難すべきで、映像情報リークを政府の手落ちと非難するばかりの与野党・メディアにはあきれる。嵐が来るのに戸締りの仕方が悪いと家族が内輪もめする馬鹿者だ。
蛇足だが、このところの先進国の株価がリーマン・ショック前まで回復したのは、企業が人員整理や投資抑制など改革し新興国特需を取り込んだ為だが、国内では雇用が回復せず需要停滞したままである。各国の回復の度合いは、輸出増の度合いに比例している。政府の対策は企業を優先し、企業は新しい事態に合せて身を削った。
一方、家庭は企業程ドラスティックに生活を改革できない。支出は切り詰めても、人員整理などできるはずがない。しかし、家族が結束して困難に立向かう時は、難しい事件が起こった時に何をするかが問われる、政治の世界と同じという気がする。この面でも昨今の日本は弱くなった気がするのは私だけだろうか。■