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温泉の危機と高齢者の思い出(2)

2022-01-23 20:43:35 | 日記・エッセイ・コラム
仕事以外で強烈に印象に残っているのは和歌山の白浜温泉だ。卒業後別々の会社に勤める同期の2人から連絡を受け、3人揃って大阪万博を見に行った。日本初の万博で国中が湧き、どの国の展示場も入館入口に長い列が続いていた。だが、我々3人共に根気良く長い列に並ぶ輩ではなかった。

短い列を選んで展示場を見終わった後、大阪に住む一人が「もう万博はいいや、白浜に行こう」と切り出した。残りの2人は即合意してさっさと和歌山に向かった。その頃の白浜は近代的なビルなどどこにもなく、昔風の木造の温泉旅館が並んでいた。車を流していると所謂「やり手婆さん」に呼び止められ、何の疑問もなく奥の旅館に導かれ泊まった。

聞かれるままに3人の芸者を呼び脇に座らせて酒を飲んで大騒ぎ、2人は夫々別の部屋に芸者と消えて行き私も残りの芸者と隣の部屋で男と女の関係の教育を受けたという訳だ。結果は初めて貰ったボーナスを握りしめて社員寮を出て、次の日は東京に戻る新幹線の運賃しか残ってなかった。

この手の思い出には間違いなく温泉が関わったと思う。温泉か芸者のどっちが主役か分からないが、振り返ると私にはどちらもなくてはならない重要な存在だった。

勿論、家族と一緒に行き印象に残っている温泉もある。珍しく母が上京してきた時家内がアレンジしてくれ、家族全員で西伊豆の温泉に行った時のことはよく覚えている。だが、正直言うと印象に残る鮮明なシーンが浮かんでこないのだ。だからと言って、温泉芸者を呼ぶ訳には行かなかった。

実はもう一つ鮮明に映像が浮かぶ温泉シーンがある。仕事で米国のワシントン州シアトルの近郊に住んだ時、週末になるとテントを背負って山歩きをした。今は実家に資料を保管しており場所が何処だったか思い出せないが、太平洋に面する西部には有名な火山があり温泉も沢山あった。

ある時ガイドブックで山歩き道のすぐ傍に露天風呂があると紹介する記事を見て、米国の温泉はどんな雰囲気なのか興味が湧いて立ち寄ってみた。そこはホテルとか小屋どころか脱衣場すら見当たらない、岩で囲った小さな風呂が幾つか点在し、周辺に山歩き姿の人達がパラパラ見かけた。

一番目立つ大きめの池に素っ裸の男性とビキニ姿の女性が突っ立っており、他の誰も気にすることなく通り過ぎていた。日本にも沢山露天風呂はあるが、多数の人が同時に入浴する風景は見なかった。しかし、全くの他人が横を通り過ぎる「たたずまい」に日本とは異なる印象を受けた。

更に歩を進めると、トレイルの奥の木陰に隠れた小さな池もあったが、私は何故か気が進まず入浴しなかった。一人で入るのは気が引けたと思う。多分、そのたたずまいの違いに勇気が湧かなかったのだと思う。今となっては残念に思う。

コロナ5波が終わり経済回復が見えていたのに、今年になって突如オミクロン株の感染が激増する第6波が来た。私の人生にとって思い出の尽きない各地の温泉旅館が苦境に陥っているとのニュースを聞き、何とかしてやりたいが何ともならない報道に接して辛い思いがする。■

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