先月末に「世界の警察官が戻って来る?」と題して、期待を込めて米国の風向きが変わったと投稿した。きっかけは米国の記者がイスラム国(ISIS)に斬首されたことだった。その後も2人目の記者が虐殺され、議会や世論が大統領の対応は弱腰で手ぬるいと非難する声が高まった。
オバマ大統領が「世界の警察官を止めた」と発言以来、ならず者国家は勢いを得て各地でやりたい放題するようになった。並行してこの2か月で米国世論は大きく転換した。イラクやシリア戦争で大統領は意思決定をためらい、やることをやっていないという声が高まった。記事の中に「戦争疲れ」という言葉が聞かれなくなった。
この一両日CNN/ORCとワシントンポスト(WP)/ABCの世論調査が立て続けに発表された。どちらも同じような結果だった。ISISは米国にとって深刻な脅威で、7割以上がイラク空爆を支持、更にシリア空爆にも前向きだった。先月末に「世界の警察が戻ってくる」で予測したように、米紙が驚くほど世論の風向きがタカ派に変わった。
一方で、世論調査の行間を読むと米国民はオバマ大統領を信用して無いように感じた。人気の無かった地上軍投入の可能性すら賛成する比率が増える程に国民はタカ派が増えているが、軍事圧力をかけるには大統領は極めて慎重で、軍事介入のステップアップには欧米やアラブの有志連合を募り、議会と国民の同意を得てから決断する姿勢を保っている。
多分、こういう慎重な姿勢が米国民の間にオバマ大統領外交の低評価を招き、大統領就任以来最低の支持率を得る原因になっているようだ。言い換えると、米国というよりオバマ政権が世界の警察には役不足、或いはその覚悟が無いと思われている様に私は解釈する。
正直言って、オバマ大統領がISIS掃討には3年かかると予測し、有志連合で軍事加入をプランし、シリアしまで空爆拡大を躊躇い、地上軍投入を避けたいと考えるのは、現実的かつ合理的なように思う。だが、私には結論に至る過程がスローでまず過ぎたように感じる。誰の目にも明らかな事態になって初めて決断した。
実際、彼はシリアやロシアが一線を越えたと言いながら効果的な手を打たず、米人記者が殺された時に「戦略はまだない」と言って議会や国民から非難された。実はその間世論も揺れていた。結果的に、オバマ大統領の節目節目での発言が不適切で却って世論の不信感を招いた。
オバマ大統領は今夜、国民に向けて包括的な戦略を説明する予定だと報じられた。リーダーには揺れる国民に向かって、毅然として難局に立ち向かう姿が必要なのだ。しかし、今となっては演説一本で米国民の信頼を得るのは難しいかも知れない。先ずは覚悟を示すことだと私は思う。■
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