昨年12月9日(土)は、大野教室プレゼンツ「中村真梨花女流三段による指導対局会」があった。
同三段の対局会は、8月12日に続いて2回目。前回は私も参戦し善戦したが、終盤中村女流三段の妖手△7七桂に応手を誤り、悔しい逆転負けとなった。今回はその雪辱戦である。
今回は2時の回に予約した。家を出る前、前日に行われた久保利明王将VS豊島将之八段戦(A級順位戦)をスマホで再生したが、動きが重くて途中で止めた。
2時5分前に教室に入ると、先着のTag氏、Kur氏、Shin氏がいた。この回は4面指しである。
W氏から「中村女流三段・駒根付け」をいただき、いちばん右の席に座ろうとすると、W氏から待ったが入った。左端の席が空いていて、その右はShin氏が座っている。Shin氏は私の将棋を見ながら指したいとのことで、私はその要望に従い、左端に座った。
手合いは私とShin氏が平手、Tag氏が角落ち、Kur氏が右銀桂落ちとなった。
中村女流三段はセーターを着て、冬仕様。くりくりとかわいらしい。定刻に対局開始となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△3三角▲7八玉△6二玉▲5八金右△7二銀▲5七銀△7一玉(第1図)
奥の部屋では大野八一雄七段の指導対局があり、現在は2人が指していた。
本局、私の居飛車明示に中村女流三段は四間飛車。中村女流三段は振り飛車党で、中でも四間飛車を愛用している。対して私の戦法はいかに。
第1図以下の指し手。▲5五歩△8二玉▲5六銀△5二金左▲6八銀△9四歩▲9六歩△4三銀▲6六歩△6四歩▲5七銀△6三金▲6五歩△同歩▲同銀△6四歩▲5六銀引(第2図)
第1図では中央位取りか天守閣美濃を考えていたが、前者を採択した。羽生善治竜王が一度も指したことがない戦法だが、大山康晴十五世名人や中原誠十六世名人に実戦例は多く、他の戦法に劣っているとは思わない。それに室谷由紀女流二段との将棋でも▲5五歩の形が出現したから、ゲンを担ぐ意味もあった。
2枚目の銀も▲5七に上がり、6筋の歩を換える。これが重要で、角道を通すとともに、後の▲6九歩を見ている。
第2図以下の指し手。△5四歩▲同歩△同銀▲5五歩△4三銀▲3六歩△7四歩▲2五歩△7三桂▲6八金上△8四歩▲4六銀△3二飛▲6七金右△8三銀▲5八飛△7二金(第3図)
右のShin戦も中村女流三段の四間飛車。Shin氏は急戦模様から▲4六歩と突いたが、中村女流三段は△5四銀。さらに△6五銀に▲7五歩~▲7七金と進み、Shin氏には珍しい力戦形となった。
私の将棋は持久戦になり、お互い玉固めを進める。中村女流三段は△7二金とし銀冠の完成だ。
中村女流三段は前回の指導対局の戦績から、私たちの間では、負けてくれるのでは、という噂が立っていた。それにしては前回私は惜敗したが、要するに策を弄さず、素直な指し方をしてくれるということだろう。淡々とした駒組にそれを感じた。
第3図以下の指し手。▲7七桂△6二飛▲1六歩△8五歩▲3五歩△同歩▲同銀△3四歩▲4六銀△8四銀(第4図)
私は▲7七桂。角道を止めて相当指しづらい手だが、△6五歩を嫌ったもの。中原十六世名人の指し手にもたびたびあったし、次に▲6五歩と決戦すれば、この桂も捌けると思った。
が、中村女流三段は△6二飛と用心されると▲6五歩と行きづらく、私は▲1六歩から▲3五歩としたが、それではやや変調で、▲7七桂との関連性がなかった。
第4図以下の指し手。▲5七銀△3五歩▲6六銀△3六歩▲3八飛△5四歩▲3六飛△5五歩▲同銀左△5二飛▲3七桂△5四金▲同銀△同銀(第5図)
右のShin氏は金銀3枚が四段目に盛り上がり、大変なことになっている。何だか私の将棋みたいだ。
局面。前譜△8四銀は微妙なところで、銀が盛り上がって調子がいいが、8三の地点が空くので一長一短である。
私は▲5七銀~▲6六銀とし、▲3六の歩が駒台に乗った格好だから、わるくないと思った。
しかし△5四歩に▲3六飛は誤った。ここは慌てず▲5四同歩と取り、△同銀▲5五歩△4三銀なら、▲3六飛と歩得して下手が十分だった。
本譜は▲5五銀の形になり、位が解消したのが痛い。▲3七桂で下手も全軍躍動だが、中村女流三段は「もう我慢できません」とばかり△5四金とぶつけてきた。「攻めのマリカ」の本領発揮である。ちなみにここ△5四銀なら、▲同銀△同飛▲5五歩で、A△5一飛は▲3三飛成△同桂▲4二角。B△5二飛なら▲6一銀があり下手好調だったのだが、そううまくはいかないのだ。
中村女流三段、戦前は負けてくれる噂だったのに、ちっともそんなふうでない。
第5図以下の指し手。▲3三飛成△同桂▲4一角△5一飛▲7四角成△5九飛▲6九歩△8三銀▲6四馬△1九飛成(第6図)
第5図で▲5五歩は△同銀なので、私は▲3三飛成から▲4一角と強攻した。以下△5一飛に▲7四角成とし、先の△8四銀を一応咎めた形だ。
が、△5九飛がいきなり詰めろで焦った。私は用意の▲6九歩だが、今後6筋の香には注意せねばならない。
中村女流三段は△8三銀。こう入ると上手陣は固く、先はまだまだ長い。このあたり、第29期王将戦七番勝負・加藤一二三王将VS大山十五世名人の第5局と第6局に似ていると思いながら指していた。
△1九飛成に、次の手が手過ぎた。
(つづく)
同三段の対局会は、8月12日に続いて2回目。前回は私も参戦し善戦したが、終盤中村女流三段の妖手△7七桂に応手を誤り、悔しい逆転負けとなった。今回はその雪辱戦である。
今回は2時の回に予約した。家を出る前、前日に行われた久保利明王将VS豊島将之八段戦(A級順位戦)をスマホで再生したが、動きが重くて途中で止めた。
2時5分前に教室に入ると、先着のTag氏、Kur氏、Shin氏がいた。この回は4面指しである。
W氏から「中村女流三段・駒根付け」をいただき、いちばん右の席に座ろうとすると、W氏から待ったが入った。左端の席が空いていて、その右はShin氏が座っている。Shin氏は私の将棋を見ながら指したいとのことで、私はその要望に従い、左端に座った。
手合いは私とShin氏が平手、Tag氏が角落ち、Kur氏が右銀桂落ちとなった。
中村女流三段はセーターを着て、冬仕様。くりくりとかわいらしい。定刻に対局開始となった。
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二銀▲5六歩△4二飛▲6八玉△3三角▲7八玉△6二玉▲5八金右△7二銀▲5七銀△7一玉(第1図)
奥の部屋では大野八一雄七段の指導対局があり、現在は2人が指していた。
本局、私の居飛車明示に中村女流三段は四間飛車。中村女流三段は振り飛車党で、中でも四間飛車を愛用している。対して私の戦法はいかに。
第1図以下の指し手。▲5五歩△8二玉▲5六銀△5二金左▲6八銀△9四歩▲9六歩△4三銀▲6六歩△6四歩▲5七銀△6三金▲6五歩△同歩▲同銀△6四歩▲5六銀引(第2図)
第1図では中央位取りか天守閣美濃を考えていたが、前者を採択した。羽生善治竜王が一度も指したことがない戦法だが、大山康晴十五世名人や中原誠十六世名人に実戦例は多く、他の戦法に劣っているとは思わない。それに室谷由紀女流二段との将棋でも▲5五歩の形が出現したから、ゲンを担ぐ意味もあった。
2枚目の銀も▲5七に上がり、6筋の歩を換える。これが重要で、角道を通すとともに、後の▲6九歩を見ている。
第2図以下の指し手。△5四歩▲同歩△同銀▲5五歩△4三銀▲3六歩△7四歩▲2五歩△7三桂▲6八金上△8四歩▲4六銀△3二飛▲6七金右△8三銀▲5八飛△7二金(第3図)
右のShin戦も中村女流三段の四間飛車。Shin氏は急戦模様から▲4六歩と突いたが、中村女流三段は△5四銀。さらに△6五銀に▲7五歩~▲7七金と進み、Shin氏には珍しい力戦形となった。
私の将棋は持久戦になり、お互い玉固めを進める。中村女流三段は△7二金とし銀冠の完成だ。
中村女流三段は前回の指導対局の戦績から、私たちの間では、負けてくれるのでは、という噂が立っていた。それにしては前回私は惜敗したが、要するに策を弄さず、素直な指し方をしてくれるということだろう。淡々とした駒組にそれを感じた。
第3図以下の指し手。▲7七桂△6二飛▲1六歩△8五歩▲3五歩△同歩▲同銀△3四歩▲4六銀△8四銀(第4図)
私は▲7七桂。角道を止めて相当指しづらい手だが、△6五歩を嫌ったもの。中原十六世名人の指し手にもたびたびあったし、次に▲6五歩と決戦すれば、この桂も捌けると思った。
が、中村女流三段は△6二飛と用心されると▲6五歩と行きづらく、私は▲1六歩から▲3五歩としたが、それではやや変調で、▲7七桂との関連性がなかった。
第4図以下の指し手。▲5七銀△3五歩▲6六銀△3六歩▲3八飛△5四歩▲3六飛△5五歩▲同銀左△5二飛▲3七桂△5四金▲同銀△同銀(第5図)
右のShin氏は金銀3枚が四段目に盛り上がり、大変なことになっている。何だか私の将棋みたいだ。
局面。前譜△8四銀は微妙なところで、銀が盛り上がって調子がいいが、8三の地点が空くので一長一短である。
私は▲5七銀~▲6六銀とし、▲3六の歩が駒台に乗った格好だから、わるくないと思った。
しかし△5四歩に▲3六飛は誤った。ここは慌てず▲5四同歩と取り、△同銀▲5五歩△4三銀なら、▲3六飛と歩得して下手が十分だった。
本譜は▲5五銀の形になり、位が解消したのが痛い。▲3七桂で下手も全軍躍動だが、中村女流三段は「もう我慢できません」とばかり△5四金とぶつけてきた。「攻めのマリカ」の本領発揮である。ちなみにここ△5四銀なら、▲同銀△同飛▲5五歩で、A△5一飛は▲3三飛成△同桂▲4二角。B△5二飛なら▲6一銀があり下手好調だったのだが、そううまくはいかないのだ。
中村女流三段、戦前は負けてくれる噂だったのに、ちっともそんなふうでない。
第5図以下の指し手。▲3三飛成△同桂▲4一角△5一飛▲7四角成△5九飛▲6九歩△8三銀▲6四馬△1九飛成(第6図)
第5図で▲5五歩は△同銀なので、私は▲3三飛成から▲4一角と強攻した。以下△5一飛に▲7四角成とし、先の△8四銀を一応咎めた形だ。
が、△5九飛がいきなり詰めろで焦った。私は用意の▲6九歩だが、今後6筋の香には注意せねばならない。
中村女流三段は△8三銀。こう入ると上手陣は固く、先はまだまだ長い。このあたり、第29期王将戦七番勝負・加藤一二三王将VS大山十五世名人の第5局と第6局に似ていると思いながら指していた。
△1九飛成に、次の手が手過ぎた。
(つづく)