2日夜は、TBS系「新春ドラマ・下町ロケット」を観た。私はながら視聴をすることが多いのだが、今回は観る前から力作と分かっていたので、姿勢を正して観た。
池井戸潤の原作はどれも終わりがスカッとして気分がいいが、今回も期待に違わぬ出来で、涙ポロポロに感動した。
全般的にテレビドラマは衰退しているというが、作り込まれたドラマはやはり素晴らしい。スタッフやキャストの意気込みにも、熱いものを感じた。
と同時に、職人のしの字にもなれなかった、我が身を恥じた。
◇
昨年暮れ、久しぶりに図書館に行った。将棋コーナーは何冊か新入荷があって、初心者向けの詰将棋が目立った。これも最近の将棋ブームの影響であろう。
藤井猛九段著の「四間飛車上達法」(浅川書房)(1,400円+税)があった。同書は昨年の「将棋ペンクラブ大賞」技術部門の大賞に輝いた。私は二次選考委員を仰せつかっているが、技術部門は担当外なので、この本はまだ読んでいない。中身をサラッと見たが面白そうで、すぐに借りた。
まずは「まえがき」である。まえがきは大事で、ここを読めば本文の良し悪しが類推できる、というくらいのものである。たとえば2014年3月発行、天野貴元氏「オール・イン~実録・奨励会三段リーグ」がそうで、まえがきを読んだ瞬間、この本はペンクラブ大賞の大賞を獲る、と確信したものである。
本書のまえがきも面白い。要約すると、自分がかつて読みたい、と思った本の造りを目指したというものだった。
本文は
第1章 対抗形とは何か――駒組みの基本と隠された仕組み
第2章 攻めについて――6七銀型と棒銀
第3章 一手争いについて――7八銀型と右銀急戦
第4章 主導権を握ったら――6六銀型と持久戦
第5章 攻めエリアを拡大せよ―5六銀型と藤井システム
の5章で構成され、会話形式になっている。この形式は最近流行っているのか、優秀賞の永瀬拓矢七段著「全戦型対応版 永瀬流負けない将棋」もそうだった。
藤井九段は第1章で、振り飛車は損な戦法と言われているが、そんなことはない、と力説する。
そのココロは、角が間接的に相手玉を睨んでいるから、というものである。それにしては藤井九段、角交換振り飛車を広めたではないか、と反論したくなるが、そこをスルーすれば、後は華麗な講義が待っている。
もっとも私は、オーソドックスに書き言葉で書いてもらう方を好むのだが、会話形式には、微妙なニュアンスをそのまま伝えられる利点がある。また藤井九段本人も認識しているが、私は藤井九段を解説の名手と捉えているので、その講義がそのまま活字化されたのも嬉しい。事実小説なども、難しい地の文より、会話のほうがスラスラと読みやすいものだ。本書も藤井九段と聞き手のリズムが心地よく、どんどん読める。
各章では居飛車側の作戦に応じての考え方が説かれているので、応用範囲は広い。具体的な形としては、「▲6六銀型」を目指すのがいいらしい。
とにかくライブ感のある講義なので、途中で藤井九段の見解が変わり、本譜の指し手が変わることもある。ここも生々しくてよい。
すべて読み終え、若干読み足りない気分も残ったが、それだけ本書が面白かったから、ともいえる。あとは繰り返し本文を読み、藤井九段の思想を暗記してしまうのがいいだろう。
本書が将棋ペンクラブ大賞の大賞を獲ったのも分かる気がした。
池井戸潤の原作はどれも終わりがスカッとして気分がいいが、今回も期待に違わぬ出来で、涙ポロポロに感動した。
全般的にテレビドラマは衰退しているというが、作り込まれたドラマはやはり素晴らしい。スタッフやキャストの意気込みにも、熱いものを感じた。
と同時に、職人のしの字にもなれなかった、我が身を恥じた。
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昨年暮れ、久しぶりに図書館に行った。将棋コーナーは何冊か新入荷があって、初心者向けの詰将棋が目立った。これも最近の将棋ブームの影響であろう。
藤井猛九段著の「四間飛車上達法」(浅川書房)(1,400円+税)があった。同書は昨年の「将棋ペンクラブ大賞」技術部門の大賞に輝いた。私は二次選考委員を仰せつかっているが、技術部門は担当外なので、この本はまだ読んでいない。中身をサラッと見たが面白そうで、すぐに借りた。
まずは「まえがき」である。まえがきは大事で、ここを読めば本文の良し悪しが類推できる、というくらいのものである。たとえば2014年3月発行、天野貴元氏「オール・イン~実録・奨励会三段リーグ」がそうで、まえがきを読んだ瞬間、この本はペンクラブ大賞の大賞を獲る、と確信したものである。
本書のまえがきも面白い。要約すると、自分がかつて読みたい、と思った本の造りを目指したというものだった。
本文は
第1章 対抗形とは何か――駒組みの基本と隠された仕組み
第2章 攻めについて――6七銀型と棒銀
第3章 一手争いについて――7八銀型と右銀急戦
第4章 主導権を握ったら――6六銀型と持久戦
第5章 攻めエリアを拡大せよ―5六銀型と藤井システム
の5章で構成され、会話形式になっている。この形式は最近流行っているのか、優秀賞の永瀬拓矢七段著「全戦型対応版 永瀬流負けない将棋」もそうだった。
藤井九段は第1章で、振り飛車は損な戦法と言われているが、そんなことはない、と力説する。
そのココロは、角が間接的に相手玉を睨んでいるから、というものである。それにしては藤井九段、角交換振り飛車を広めたではないか、と反論したくなるが、そこをスルーすれば、後は華麗な講義が待っている。
もっとも私は、オーソドックスに書き言葉で書いてもらう方を好むのだが、会話形式には、微妙なニュアンスをそのまま伝えられる利点がある。また藤井九段本人も認識しているが、私は藤井九段を解説の名手と捉えているので、その講義がそのまま活字化されたのも嬉しい。事実小説なども、難しい地の文より、会話のほうがスラスラと読みやすいものだ。本書も藤井九段と聞き手のリズムが心地よく、どんどん読める。
各章では居飛車側の作戦に応じての考え方が説かれているので、応用範囲は広い。具体的な形としては、「▲6六銀型」を目指すのがいいらしい。
とにかくライブ感のある講義なので、途中で藤井九段の見解が変わり、本譜の指し手が変わることもある。ここも生々しくてよい。
すべて読み終え、若干読み足りない気分も残ったが、それだけ本書が面白かったから、ともいえる。あとは繰り返し本文を読み、藤井九段の思想を暗記してしまうのがいいだろう。
本書が将棋ペンクラブ大賞の大賞を獲ったのも分かる気がした。