一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

私がいままで読んだ中で、ためになった棋書ベスト3

2012-09-21 00:10:23 | ランキング
私は将棋の書籍は滅多に買わないが、それでも数十冊は自宅にある。きょうはその中から、ためになった3冊を紹介しようと思う。

第1位「米長将棋勝局集」米長邦雄棋聖・王将・棋王著
講談社文庫。昭和59年発行。420円。

昭和51年に講談社から発行された、同名書籍の文庫版。「○○将棋勝局数」はシリーズ化されており、ほかに大山康晴十五世名人、升田幸三実力制第四代名人、中原誠十六世名人、内藤國雄九段が著している。冒頭にも書いたとおり、私は基本的に棋書は買わないが、本シリーズは廉価ということもあり、全冊購入した。
本書は、昭和43年から50年までの代表局11局を収めている。上記の棋士は20局近く収めているので、米長永世棋聖のそれはかなり少ない。しかしそのぶん1図面あたりの指し手が少ないので、将棋盤に並べなくても理解しやすい。これは「はしがき」で著者も触れているところである。
さらに本書は、文章自体が抜群に面白い。対局中の心理が詳細に記されているので、読者は楽しみながら、米長将棋の真髄を体得できるのである。
いまだったら、ライターが文章に起こしているんだろうな、と推察するところだが、いずれにしても本文には、米長永世棋聖の将棋観がいたるところに散りばめられている。当時は将棋も強く文章も面白い、米長永世棋聖の才能に舌を巻いたものだった。
「はしがき」では、「読者が電車の中でも、大駒一枚強くなる本である」と結んでいるが、これは大袈裟な表現ではない。
これからアマ初段を目指す棋客がいるならば、収録の将棋を繰り返し並べて、頭に叩き込むとよい。すぐに初段になれること請け合いである。
こんなに面白い本がわずか420円とは、本当に涙が出そうだった。

第2位「やさしい詰将棋」佐藤大五郎八段著
日本文芸社。昭和51年発行。新書版。650円。

昭和51年だったか52年だったか、家族でどこかへ出かけるときに、父に買ってもらった。もちろん選んだのは私だが、我ながらいい選択だったと思う。
本文は3手詰と5手詰がそれぞれ50題収録されていた。盤面はカラーだった。
移動中に解き始めたが、佐藤九段のヒントが丁寧で、解答意欲が沸いた。3手詰といっても侮れないが、解き進むうち、初手に大駒を捨てればよい、ということが分かり、スラスラ解けるようになった。
しかし5手詰になるとさすがに骨が折れ、時間がかかるようになった。その中で、どうしても解けない問題に出くわした。私はたまらずギブアップし、試しに父に聞いてみた。すると、3手目に玉方の金を取り、5手目にそれを打って詰ますのだった。相手の駒を取っていいの!?
「詰将棋は本将棋の指し手のルールに準ずる」を、私はこのとき学んだのだった。
帰宅するころには5手詰もあらかた解いていたが、ヒマを見ては再読し、詰手筋を頭に叩き込んだ。
というわけで、私の終盤力は、この本が根底にある。
あとで分かったことだが、佐藤九段は著書を35冊出しており、著作数は棋士で5指に入るほどだったという。

第3位「将棋の受け方」大山康晴名人著
池田書店。昭和41年発行。新書版。280円。

「大山名人の快勝シリーズ5部作」の第3弾として刊行された。私が購入したのは昭和53年ごろ。「快勝シリーズ」は何度か装丁(表紙デザイン)を変え、このころは竹林の表紙だった。定価は600円になっていた。
いまでもそうだが、「受け」主体の将棋本はあまりない。それがいまから46年も前に著されていたとは驚きである。そして数ある将棋書籍の中からこれを購入した私は、なかなかいいところに目を付けていた。
本書で大山十五世名人は、ただ受けるだけではダメで、反撃の受けを狙うべし、と繰り返し説く。
その中の一局面で、感心した手順がある。対原始中飛車で、後手が△5七銀と打ち込んだ局面。ここで▲6七金が絶妙の「かわしの受け」。以下△6八銀成▲同金上△5七銀に、▲5八歩がこれまたしっかりした受け。以下△6八銀成▲同玉で下手有利。ホレボレするような手順ではないか。
これは私のその後の実戦でもしばしば現われ、大いに勝ち星を稼がせていただいた。
本書も暇を見つけては精読した。池田書店発行の大山本は、定跡の類は参考にならないが、実戦解説は本当にためになった。いまとなっては、これもライターの手によるものと推察できるが、当時は本文すべてを大山十五世名人の金言として、深く胸に刻んだものだった。
私は自分の将棋を受け将棋だとは思わないが、受け将棋の植山悦行七段が、「私と棋風が似ている」というのは、このとき私が体得した「受けの力」が、根底に流れているからかもしれない。

というわけで上記3冊を探したのだが、「やさしい詰将棋」は裏の物置の奥深くに入っていて、取り出すことができなかった。「将棋の受け方」は見つかったが、その後古本屋で買った初版本は、これも段ボール箱の底に沈み、取り出すのを断念した。
また「米長将棋勝局集」も、部屋のどこかに紛れこんでしまった。いつか3冊とも引っ張り出して、再読しようと思っている。
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