おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
2008年は、ヒューマン・ギルドのニュースレターの巻頭言で9回も「勇気づけの効果を動機づけ理論から探る」を書いてきました。
なお、その中の主要な部分は、ヒューマン・ギルドのホームページのTopicsの「過去のニュースレターの岩井の『巻頭言』から」でアップしているので、ご参照いただくとして、このブログでは、『人を伸ばす力―内発と自律のすすめ』の「余話」ともいえる、あるユダヤ人の寓話を紹介します。
デシは、この寓話を「人はいったん報酬を受け取り始めると、その活動に対する興味を失い、そして、報酬が打ち切られると、その活動をしたいと思わなくなる」という説の裏づけとして使っています。
ある町の偏狭な男たちが、洋装店を目抜き通りに開いたユダヤ人の男性を町から追い出そうと躍起になっていた。
彼らは、その洋服店に嫌がらせをするために一団の乱暴者を送り込んだ。この不良たちは店の前で毎日、大声でやじったりののしったりする手はずだった。ぞっとするような事態だったが、その洋服店は賢かった。
不良たちがやってきたある日、洋服店は彼らのやじったりののしったりする努力に対して全員に10セントコインを1枚ずつ手渡した。すると彼らは喜んで、ますます無礼なことを叫び続けた。
次の日も彼らは10セントコインを期待して騒ぎにやってきた。しかし、今度は5セントしかあげる余裕がないと洋服屋は告げ、全員に5セントずつ手渡した。彼らは少しだけがっかりしたが、5セントでもお金がもらえることには変わりがないので、各自5セントのコインを受け取り、叫ぶだけ叫んで帰っていった。
次の日、彼らはまたやっててきた。今度は、1セントしかあげられないと洋服屋は言って、コインを手渡そうとした。
それを聞いて憤慨した少年たちは、あざ笑いながら言い捨てた。おれたちには、1セントぽっちのはした金のためにわざわざやじるような暇はないんだ、と。そして、彼らは騒ぐことなく立ち去った。
結局、洋服屋は不良たちの嫌がらせを阻止することに成功したのであった。
エドワード・L・デシは、繰り返し繰り返し実験を行い、この寓話と同じような、金銭という報酬が人の内発的動機づけを低下させるということを証明した心理学者なのです。
(注)昨年のデシの内発的動機づけなどの理論を集大成して「アドラー心理学ゼミナール」で自ら次の発表を行います。
予備知識は要りません。是非お越しください。
タイトル:「モチベーション(動機づけ)の心理学」
日時:1月12日(月、祝)11:00-13:00
場所:ヒューマン・ギルド 研修室
料金:2,100円(受付で)
ご予約は、ヒューマン・ギルドの「行事案内ーその他」 の「行事お申し込みフォーム」から