見もの・読みもの日記

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早春見仏記(3)宇治編

2005-03-12 20:31:16 | 行ったもの(美術館・見仏)
早春見仏記(3)宇治編:万福寺

 早春見仏旅行最終日は、奈良を経って京都に向かった。途中、黄檗(おうばく)の駅で下り、久しぶりに万福寺に寄る。江戸時代に福建省からやってきた隠元禅師を開祖とする黄檗宗の総本山で、中国風の寺院である。

 どこが中国風かというと、まず、牌楼式の総門。屋根は中央を高く左右を一段低く「山」の字型に作り、両端のしゃちほこ(?)が中心に向かって強く反り返る。いいなー。中国古装ドラマの舞台に使えそうだ。

 山門を入って正面の天王殿で、参拝客を迎えてくれるのは、笑顔の布袋さまである。中国では布袋は弥勒菩薩の化身と考えられている。

 裏にまわると韋駄天像がおいでになる。左腰の前についた長剣に右手を添え、軽く体をひねって右前方を見下ろす。黄金の甲冑をまとい、孔雀が羽根を広げたような華麗な光背を背負っている。うわ~カッコいい~。武侠RPGのキャラみたいだ。

 万福寺の仏像は、ほとんどが中国人仏師、范道生の作である(26歳で来朝、一時帰国後、長崎で入国待ちをしているとき、36歳で急逝したという。お墓はどこにあるのだろう?)。しかし、いま見られる韋駄天像は范道生の作ではなく、のちの清代に請来されたものだという。范道生作の韋駄天像は合掌した腕の上に長剣を横たえて、いくぶん沈鬱な表情をしている(同じ武将キャラでも平知盛タイプ)。

 このほか、十八羅漢、伽藍神、円と直線による幾何学モチーフの装飾、各堂に掲げられた対聯、生飯台(さばだい)、魚梛(かいぱん)などなど「日本らしからぬ」珍しいものを見ることができる。しかし、この数年、実際に訪ねてまわった中国の寺院と比べると、こんなふうに手入れの行き届いた木造建築は「やっぱり日本だなあ」と感じた。柱が細いしなあ。

 万福寺の「伽藍神」について、おもしろいページを見つけた。詳しいなあ、と思ったら、『中国の神さま』(平凡社新書 2002.3)の著者、二階堂善弘先生のサイトだった。そうそう、ちょっとヘンだと思ったのよね。「華光菩薩」って書いてあるのに堂内の対聯が関羽に捧げた文句になっていたから...
 http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~nikaido/manpukuji.html

 この日、思わぬ「拾いもの」だったのは、境内に貼ってあったポスターで、4月23日(土)に国立劇場で「萬福寺の梵唄-黄檗・禅の声明-」という公演があるのを知ったこと。もう6、7年も前だろうか、私はやはり国立劇場の声明公演で万福寺の梵唄を聴いたことがある。ジャンジャカジャンジャカ鳴り物が多くて実に楽しかった。私の葬式は黄檗宗式にしようかと思ったくらいだ(誰でも申し込めるらしい)。

 本日、前売り開始ということで、さっそくチケットを取ってきた。まだ残席はあるようなので、東京近郊で興味のある方はぜひ。

■黄檗山万福寺(范道生作の韋駄天像あり)
 http://www.obakusan.or.jp/
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