見もの・読みもの日記

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早春見仏記(1)和歌山編

2005-03-09 21:48:30 | 行ったもの(美術館・見仏)
○早春見仏記(1)和歌山編:根来寺、粉河寺

 3月4日~6日の関西見仏旅行。メインイベントだった「慈尊院秘仏公開」と「東大寺修二会」については掲載済みだが、引き続き、この旅行で訪ねたところをレポートしておこうと思う。

 初日は慈尊院を拝観のあと、根来寺にまわった。JR和歌山線岩出駅から時間節約のためタクシーを利用する。「根来寺へ」とタクシーの運転手さんに告げると「根来寺のどちらまで?」と聞かれた。寺の入口である大門で下ろしてもらったが、前方の視界には舗装された参道が延々とのびているだけで、堂宇の影も形も見えない。寺域がやたらと広いのだ。なるほど、急ぎの参拝客はここでは下りないんだなあ、と納得しながら、しばらく歩く。途中の民俗資料館に寄り、錐鑽(きりもみ)不動と呼ばれる不動堂(八角堂。裏にまわるとおもしろい)で横道に折れると、ようやく寺の境内らしくなる。

 やがて、根来寺のシンボルである大塔が見えてくる。我国最大の木造多宝塔だという(高さ40メートル)。となりの大伝法堂も大きい。ただ建物が大きいだけでなくて、建物を容れている空間全体がゆったりと鷹揚にできている感じがする。自分よりひとまわり大きな人々の暮らす空間に紛れ込んだようで、自然と呼吸もゆっくりになるようだ。ホトケの住まう仏国土ってこんなものかしら?

 もう少し現実的な表現をすれば「日本的でない」ということになる。大塔の奥に、開祖・覚鑁(かくばん)上人の御廟があるが、これが見事な円墳なのだ。びっくりした。こんもり盛り上がった緑の土饅頭は、中国か韓国にスリップしたようだ。どうも、このへん、渡来文化の匂いがする...

 和歌山市内に1泊のあと、2日目もJR和歌山線に乗って、粉河寺を訪ねた。ここも大門をくぐったあとの寺域が広い。途中に中門があり、前後左右に四天王が祀られていたが、門に四天王を祀るというのは韓国式である。

 粉河寺には国指定文化財の「庭園」がある。どんなものかと思っていたら、本堂前の斜面に巨石をごろごろと積み上げて、石の間に松やソテツを植えたものだった。思わず「これが庭かよ」とツッコミたくなるが、この石組みの感じも、韓国のお寺の印象に重なるものがある(たとえば慶州の仏国寺)。

 本堂の裏手には、唐風の山門が目立つ十禅律院がある。紀州徳川家ゆかりの古刹らしいが、かなり荒れている。それも風情といえば風情であるが。土塀の向こうは庫裏なのだろう、男物の洗濯物が干してあり、植木鉢の間をネコが歩いている。住職の奥様らしき女性が「中へどうぞ」と声をかけてくれて、檀家のないお寺を守る苦労話を聞きながら、堂内を拝観させていただいた。

■参考:紀ノ川緑の歴史回廊
 http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/500700/kinokawa/index.html
コメント
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