○鎌倉国宝館 特別展『鎌倉の古絵図-新重文・浄光明寺絵図公開-』
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kokuhoukan/top.html
鎌倉およびその周辺にかかわる絵図を集めたもの。有名社寺の境内図を中心に、村や荘園の地図、名所旧跡を記した遊覧用の絵図も展示されている。
一目見たときは、これは地味な展示だなあ、と思った。はっと目を引くような、芸術的完成度の高い彫刻や絵画があるわけではないし。これは頼朝の...とか、北条時宗の...とか、有名人が由来書に登場するわけでもないし。
しかし、じっくり見ていると、なかなか面白いものである。ひとつは、ある程度、鎌倉の社寺に馴染みのある人間なら、ほう、江戸時代にはこんなふうだったのか、と、今の姿に重ね合わせて比較する楽しみがある。現在はあまり知られていないお寺が、意外と大きな文字で載っていたり。私は「ワメキ十王跡」と「あらいのゑんま」が分からなくて、帰ってから調べて了解した。銭洗い弁天というのは新しいのだろうか。江戸の「鎌倉絵図」には「銭洗い池」(かくれ里、と付記)としか載っていなかったが。
もうひとつ、古絵図は多くの場合、社寺や荘園の境界線を定めるという、実利的な目的のために作られた。だから見た目の美しさには、全く頓着していないはずなのだが、やっぱり絵を描けば色を付けたくなる。建物は屋根と壁を塗り分けてみたくなるし、山には松の木の1、2本も描いてみたくなる。その結果、無邪気な子供の絵のような、あるいは絵本の挿絵のような世界が出現するのだ。
いや、もっと似ているものがあった。小学生の頃、近所の商店街にどんなお店があるかを調べて、自分で地図を作ったことがある。まるごと町を作っていくような、あの楽しさである!
私は、いかにも肩の力の抜けた「極楽寺境内絵図」が好きだ。それから、繁茂する植物を丹念な抽象画のように描き入れた「神武寺境内絵図」も。「建長寺境内絵図」は、かなりがんばって地形や建物の外観を細密に描き込んでおり、細部を凝視する楽しみがある。というわけで、意外と心のなごむ展示会である。
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kokuhoukan/top.html
鎌倉およびその周辺にかかわる絵図を集めたもの。有名社寺の境内図を中心に、村や荘園の地図、名所旧跡を記した遊覧用の絵図も展示されている。
一目見たときは、これは地味な展示だなあ、と思った。はっと目を引くような、芸術的完成度の高い彫刻や絵画があるわけではないし。これは頼朝の...とか、北条時宗の...とか、有名人が由来書に登場するわけでもないし。
しかし、じっくり見ていると、なかなか面白いものである。ひとつは、ある程度、鎌倉の社寺に馴染みのある人間なら、ほう、江戸時代にはこんなふうだったのか、と、今の姿に重ね合わせて比較する楽しみがある。現在はあまり知られていないお寺が、意外と大きな文字で載っていたり。私は「ワメキ十王跡」と「あらいのゑんま」が分からなくて、帰ってから調べて了解した。銭洗い弁天というのは新しいのだろうか。江戸の「鎌倉絵図」には「銭洗い池」(かくれ里、と付記)としか載っていなかったが。
もうひとつ、古絵図は多くの場合、社寺や荘園の境界線を定めるという、実利的な目的のために作られた。だから見た目の美しさには、全く頓着していないはずなのだが、やっぱり絵を描けば色を付けたくなる。建物は屋根と壁を塗り分けてみたくなるし、山には松の木の1、2本も描いてみたくなる。その結果、無邪気な子供の絵のような、あるいは絵本の挿絵のような世界が出現するのだ。
いや、もっと似ているものがあった。小学生の頃、近所の商店街にどんなお店があるかを調べて、自分で地図を作ったことがある。まるごと町を作っていくような、あの楽しさである!
私は、いかにも肩の力の抜けた「極楽寺境内絵図」が好きだ。それから、繁茂する植物を丹念な抽象画のように描き入れた「神武寺境内絵図」も。「建長寺境内絵図」は、かなりがんばって地形や建物の外観を細密に描き込んでおり、細部を凝視する楽しみがある。というわけで、意外と心のなごむ展示会である。