○鎌倉国宝館 特別展『鎌倉の至宝-国宝・重要文化財-』
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kokuhoukan/index.htm
昨年からこの季節の恒例となった名宝展である。彫刻・工芸は、おなじみの作品が多かったが、絵画は、珍しいものを見ることができた。
『長谷寺縁起絵巻』(弘治3年=室町時代)は、鎌倉の長谷寺の寺宝だが、中身は大和国(奈良県)の長谷寺の縁起である。先日、出光美術館の『名品展』にも同じ題名の絵巻を見た。出光本は、色彩が明るく、絵本のように可愛らしかった。当日のレビューには書けなかったが、実は大ファンになって帰ってきた。それに比べると、この長谷寺本は、ずっと穏やかで「常識的」である。でも、基本的には同じ絵を筆写した異本なのだと思う。二つ比べて見たいなあ。
光明寺蔵の『浄土五祖絵伝・善導巻』(南北朝時代)を久しぶりに見た。「仏説比喩経」に語られている人間の実相(白と黒のネズミが旅人の命綱である藤づるを齧っている)を絵にしたものだ。仏典は、動物の出てくる比喩が多くて楽しい。
光明寺には、『浄土五祖絵』(一巻、鎌倉時代)というのもある。よく混乱していたのだが、今回、両者は全く別物だと分かった。舞い散る蓮の花びらを受けようとして右往左往する人々の姿態が、軽妙に描かれている。色鉛筆で塗ったような淡い色彩に対して、黒々した輪郭線が目立つ。人物は「いずれも丸顔で、目を強調した独特の表情」が特徴で、これを「鎌倉派(関東派)」というそうだ。なるほど、「平治物語」系統の絵巻に描かれる武士は、もっと馬面である。
このほか、昨年も見たが、巨大な『被帽地蔵菩薩像』など。これは従者の温雅な面相が好き。
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kokuhoukan/index.htm
昨年からこの季節の恒例となった名宝展である。彫刻・工芸は、おなじみの作品が多かったが、絵画は、珍しいものを見ることができた。
『長谷寺縁起絵巻』(弘治3年=室町時代)は、鎌倉の長谷寺の寺宝だが、中身は大和国(奈良県)の長谷寺の縁起である。先日、出光美術館の『名品展』にも同じ題名の絵巻を見た。出光本は、色彩が明るく、絵本のように可愛らしかった。当日のレビューには書けなかったが、実は大ファンになって帰ってきた。それに比べると、この長谷寺本は、ずっと穏やかで「常識的」である。でも、基本的には同じ絵を筆写した異本なのだと思う。二つ比べて見たいなあ。
光明寺蔵の『浄土五祖絵伝・善導巻』(南北朝時代)を久しぶりに見た。「仏説比喩経」に語られている人間の実相(白と黒のネズミが旅人の命綱である藤づるを齧っている)を絵にしたものだ。仏典は、動物の出てくる比喩が多くて楽しい。
光明寺には、『浄土五祖絵』(一巻、鎌倉時代)というのもある。よく混乱していたのだが、今回、両者は全く別物だと分かった。舞い散る蓮の花びらを受けようとして右往左往する人々の姿態が、軽妙に描かれている。色鉛筆で塗ったような淡い色彩に対して、黒々した輪郭線が目立つ。人物は「いずれも丸顔で、目を強調した独特の表情」が特徴で、これを「鎌倉派(関東派)」というそうだ。なるほど、「平治物語」系統の絵巻に描かれる武士は、もっと馬面である。
このほか、昨年も見たが、巨大な『被帽地蔵菩薩像』など。これは従者の温雅な面相が好き。