見もの・読みもの日記

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敦煌経と中国仏教美術/三井記念美術館

2006-12-23 22:08:52 | 行ったもの(美術館・見仏)
○三井記念美術館 特別展『敦煌経と中国仏教美術』

 これも先週末に行った展覧会。三井文庫所蔵の敦煌経は、中野区新井薬師の三井文庫で見たことがある。調べてみたら、2004年新春に行われた『シルクロードの至宝 敦煌写経』という展覧会らしい。日本橋の三井記念美術館ができて以来、新井薬師の三井文庫に行く機会はなくなってしまった。静かな住宅街の中にある文庫で、好きだったのにな。

 さて、写経中心じゃ地味な展覧会だろうな、と思って行ったら、最初の展示室には、小さな金銅仏がズラリと並んでいた。東博の法隆寺館のようだ。最初の展示ケースに入っていたのは、隋代の菩薩像。小さな丸顔に切れ長の目、愛らしい造型に見とれる(東博蔵)。

 めずらしいところでは、陳の太健元年の銘を持つ菩薩像があった(東京芸大蔵)。陳って、「商女は知らず亡国の恨み、江を隔てて猶唱う後庭歌」の陳ですね。中国の南北朝時代(5~6世紀)のうち、北魏や北斉の仏像は有名だが、南朝銘の明らかな作品はきわめて少ないのだそうだ。頭部が小さく、細身で、天衣のボリュームばかりが際立つ。鈴木春信の描く女性の如し。陳の後主(最後の皇帝)を惑わせた寵姫、張麗華もこんな感じだったのかしら。

 静嘉堂文庫蔵の如来像と力士像一対は、唐~五代らしく、写実的でバランスの取れた工芸品である。金剛杵を振り上げ、投球モーションのように体をひねった力士の表現が見事。主尊が、ボールのような球形の蓮花に載っているのも面白い。これらは、いずれも国内の美術館・博物館が所蔵する金銅仏だが、こんなふうに集めて展示してくれるのは、ありがたい企画だと思う。

 一方、敦煌経のほうは、2000年から3年間に渡った科研費プロジェクトの成果に基づき、厳選された34点が展示されていた。近年の調査によれば、世に敦煌文書と称するものには、発見当初から、かなり偽物が混じっていたそうで、世界的な問題になっているそうである(→古い記事だけど)。展示品は、いずれも端正で美しく、規範に忠実な書体を心がけているが、よく見ていくと、止めや払いの筆画に、書写者の個性がうかがわれるものもある。

 会場の一角に、昭和14年12月、笄(こうがい)町の三井家集会所で開催された敦煌経展示会の写真が展示されていて、興味深かった。さらに、三井家が敦煌経を一括購入した当時の目録もあって、表紙に「昭和3年11月6月両度ニ、田中三郎北京ヨリ持参、今井町三井家御買上、支那甘粛督軍張慶健(かな?)所蔵敦煌発掘古経写経目録」と記されていた。正規に購入したものである、ということを暗に言いたいのかな、とも思ったが、貴重な記録である。
コメント
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