見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

新年はベトナムで/建築のハノイ(大田省一)

2006-12-19 00:05:24 | 読んだもの(書籍)
○増田彰久(写真)、大田省一(文)『建築のハノイ:ベトナムに誕生したパリ』 白揚社 2006.4

 年末年始はベトナムに行く。ずいぶん前から行ってみたくて、旅行仲間にねだっていたら、とうとう実現することになった。しかし、ぼんやり雰囲気に憧れていただけで、実はベトナムのことは、あまりよく知らない。困った、と思っていたら、ちょうどいい本を見つけた。建築探偵の藤森照信氏とともに、近代建築遺産を撮り続けている増田彰久さんの写真満載。ページをめくるたびに、ため息が出る(あー。それにしても、空の青いこと)。

 ベトナムの魅力のひとつは、洋風建築である。そう、それはどこかで聞いて知っていた。それにしても、これはすごい。ハノイのオペラハウスの内陣には、南国の陽光とは無縁の、ヨーロッパの冬を彷彿とさせる重厚さが漂う。ベトナム国家大学のエントランスは、細い鉄骨とガラスで作られた、繊細で軽快なアールデコ。紅河を跨ぐロンビエン橋は、エッフェル塔を寝かせたような鉄骨橋で、モダニズムの力強さを代表する。

 そうかと思えば、南国の風土に根ざした伝統様式が、西洋建築と混ざり合った、不思議な建築もある。ハノイ大聖堂の敷地内に建っている礼拝堂(ベトナム最古の教会建築)はその好例。蓮池から生え出たような一柱寺も面白い。
 
 どうしてベトナム(とりわけハノイ)に、このような魅力的な建築が生まれたかは、大田省一氏(藤森研究室出身、ベトナム建築史が専門)の考察に詳しい。また、個々の建築の解説によれば、ハノイのオペラハウスは革命蜂起の場所でもあり、ロンビエン橋はベトナム戦争時にアメリカ軍の爆撃の標的になったという。複雑で苛烈なベトナムの近代史に思いをめぐらすにも、建築は恰好の入り口であると思う。

■参考:河内(ハノイ)建築散歩
http://www.vietnam-sketch.com/special/travel/2004/09/index.html
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