○日本民藝館 創設70周年記念特別展『柳宗悦と朝鮮民画』
http://www.mingeikan.or.jp/home.html
昨日で終わってしまった展覧会。「朝鮮民画」をどのように説明しようか、考えていたら、日韓市民ネットワークなごやのサイトに「宮廷画家や学者層の画家達、いわば伝統絵画が主に美的鑑賞だけに目的をおいていたのに反して、一般庶民のお守り的感覚(縁起物)と同時に装飾品としても使われた」もの、という記述があった。そうそう。日本で言えば、大津絵がこれに近い。目出度くて、陽気で、華やかな絵画である。伝統的な民衆文化の世界では「類型的」かも知れないが、単純化された色彩や造型が、かえって、いまの我々には新鮮に映ることもある。
会場の日本民藝館に入ると、エントランスの真向かい、左右に分かれて2階に続く大階段の壁には、参観客を出迎えるように、多数の朝鮮民画が掛かっていた。食器棚のような縦型の展示ケースには、石製の薬煎(やくせん) や小鍋、火鉢が飾られている。箪笥、石神(彫像)、巫女像(絵画)など、エントランスホールの展示品は、全て朝鮮もので統一されている。
2階に上がると、廊下の要所要所に大きな朝鮮白磁の壺が飾られていた。黒木の細い枠にガラスをはめただけの展示台(上中下段に計3点ずつ飾れる)、そして、黒っぽい木張の床と白壁のシンプルな室内に似つかわしい。たぶん、近代的な博物館の、ゴツイ展示ケースに入れて、薄暗い電気照明の下で見たら、この白磁の美しさは死んでしまうだろう。同様に、掛軸や屏風の表装も、色は鮮やかだが無地のものが多くて、民画の美しさを引き立てていた。
「朝鮮民画」の特別展にあわせて、館内は李朝ムード一色だった。屏風や家具、陶磁器のほか、櫛、糸巻、懐中鏡、水差し、硯など、身の回りの小物も、多数出ていて、韓流(歴史)ドラマの雰囲気を彷彿とさせる。へえ、朝鮮の硯は日本と同じ長方形で、一辺に墨を溜めるかたちが主流なんだな(中国は円形)。しかし、四角くて四方がくぼんだものもある。白瓷の小さな祖霊塔も興味深かった。
民画では、二曲屏風に仕立てた『文房図』。書架を囲んで積み上げた書物や巻物、封筒などを描いているが、遠近法が滅茶苦茶で、キュビズム絵画みたいだ。左には葡萄、右には胡瓜?ゴーヤ?を山盛りにしたお碗が描かれている。吉祥図様なのかなー。同じく屏風の『牡丹図』は、軟式野球のボールほどもある、大きなオレンジ色の牡丹があでやか。思い切ってぐにゃぐにゃに描かれた太湖石がすごい(穴が空いているので、風呂場の海綿みたいだ)。
『蓮池水禽図』はよく描かれた吉祥の画題だが、中には、瞠目するほど「下手」なのもある。サカナが腹を見せて死んでいるとしか思えないものとか。あと『洞庭秋月図』もひどかった。悶絶~。どうして、無名の民画作家が、文人世界の伝統的(正統的)画題である「瀟湘八景」に、チャレンジしようと思ったのか。不思議だ。しばらく呆気に取られたあと、その大胆不敵さが好ましくて、だんだん笑みがこみ上げて来た。そういえば、同館所蔵のヘタウマ絵巻『築嶋物語絵巻』(現物未見)って、朝鮮民画に似ているかもしれない。
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昨日で終わってしまった展覧会。「朝鮮民画」をどのように説明しようか、考えていたら、日韓市民ネットワークなごやのサイトに「宮廷画家や学者層の画家達、いわば伝統絵画が主に美的鑑賞だけに目的をおいていたのに反して、一般庶民のお守り的感覚(縁起物)と同時に装飾品としても使われた」もの、という記述があった。そうそう。日本で言えば、大津絵がこれに近い。目出度くて、陽気で、華やかな絵画である。伝統的な民衆文化の世界では「類型的」かも知れないが、単純化された色彩や造型が、かえって、いまの我々には新鮮に映ることもある。
会場の日本民藝館に入ると、エントランスの真向かい、左右に分かれて2階に続く大階段の壁には、参観客を出迎えるように、多数の朝鮮民画が掛かっていた。食器棚のような縦型の展示ケースには、石製の薬煎(やくせん) や小鍋、火鉢が飾られている。箪笥、石神(彫像)、巫女像(絵画)など、エントランスホールの展示品は、全て朝鮮もので統一されている。
2階に上がると、廊下の要所要所に大きな朝鮮白磁の壺が飾られていた。黒木の細い枠にガラスをはめただけの展示台(上中下段に計3点ずつ飾れる)、そして、黒っぽい木張の床と白壁のシンプルな室内に似つかわしい。たぶん、近代的な博物館の、ゴツイ展示ケースに入れて、薄暗い電気照明の下で見たら、この白磁の美しさは死んでしまうだろう。同様に、掛軸や屏風の表装も、色は鮮やかだが無地のものが多くて、民画の美しさを引き立てていた。
「朝鮮民画」の特別展にあわせて、館内は李朝ムード一色だった。屏風や家具、陶磁器のほか、櫛、糸巻、懐中鏡、水差し、硯など、身の回りの小物も、多数出ていて、韓流(歴史)ドラマの雰囲気を彷彿とさせる。へえ、朝鮮の硯は日本と同じ長方形で、一辺に墨を溜めるかたちが主流なんだな(中国は円形)。しかし、四角くて四方がくぼんだものもある。白瓷の小さな祖霊塔も興味深かった。
民画では、二曲屏風に仕立てた『文房図』。書架を囲んで積み上げた書物や巻物、封筒などを描いているが、遠近法が滅茶苦茶で、キュビズム絵画みたいだ。左には葡萄、右には胡瓜?ゴーヤ?を山盛りにしたお碗が描かれている。吉祥図様なのかなー。同じく屏風の『牡丹図』は、軟式野球のボールほどもある、大きなオレンジ色の牡丹があでやか。思い切ってぐにゃぐにゃに描かれた太湖石がすごい(穴が空いているので、風呂場の海綿みたいだ)。
『蓮池水禽図』はよく描かれた吉祥の画題だが、中には、瞠目するほど「下手」なのもある。サカナが腹を見せて死んでいるとしか思えないものとか。あと『洞庭秋月図』もひどかった。悶絶~。どうして、無名の民画作家が、文人世界の伝統的(正統的)画題である「瀟湘八景」に、チャレンジしようと思ったのか。不思議だ。しばらく呆気に取られたあと、その大胆不敵さが好ましくて、だんだん笑みがこみ上げて来た。そういえば、同館所蔵のヘタウマ絵巻『築嶋物語絵巻』(現物未見)って、朝鮮民画に似ているかもしれない。