○東京国立博物館 特別展『仏像 一木(いちぼく)にこめられた祈り』
http://www.tnm.jp/
先週の話になるが、ようやく本家の『仏像』展に行ってきた。前期の見ものが、京都・宝菩提院願徳寺蔵の菩薩半跏像。後期が滋賀・向源寺蔵(渡岸寺観音堂)の十一面観音菩薩立像。どちらも見に行ったことがあるが、どちらを取るかといえば、渡岸寺(どうがんじ)の十一面観音にお会いしたかったのである。私のまわりは、おおむね同意見で、10月頃は「行くなら後期。まだ行っちゃダメですよ」と忠告してくれる若い友人もいた。
ところが、今回、一緒に見に行った”見仏の友”のうち、なぜか金沢在住の友人は2回目で、「え?前期は来なかったの?」と訝られるし、別の友人は「僕は3回目です」と言うし。もうひとりは、高倍率を突破して、「みうらじゅん・いとうせいこう仏像トーク」を聞きに行ったというのだから、全くよく出来た仏友たちである。自分の未熟を恥じ入った次第。
それはともかく、渡岸寺の十一面観音は美しかった。斜め前(向かって左)から眺めるのがベストショットだと思う。前から見ると幼児体型なのだが、後ろに回ると、腰の細さ、腰の位置の高さ(腰布がヒップハンガーみたいだ)が、畏れながら、たいへん色っぽい。ひとつ残念だったのは、照明が強すぎると思われたこと。位置によっては、見る者の邪魔になっていたのに加えて、観音の印象が白っぽくなってしまった。この観音は、磨き上げたような黒い肌が魅力なのに。
そのほかでは、唐招提寺の木像が並んだコーナーで、やはり足が止まる。木目が露わで、「一木にこめられた祈り」のタイトルそのままの霊気と迫力を感ずる。
今回、初見で、いいなあと思ったのは、奈良・珹寺(れんじょうじ)の聖観音菩薩立像。腰のひねりかたが優美。胸から膝までを飾る長い瓔珞も美しい。『芸術新潮』11月号の表紙を飾った奈良・融念寺の地蔵菩薩は、西洋の貴婦人のように、右手で衣の裾をそっとつまむ。細面のわりにふくよかな頬も、若い女性のようだ。あやしい。
島根・大寺薬師の四天王とか、広島・古保利薬師堂の四天王(2体)などは、その存在は知っていても、なかなか訪ねる機会が無かったものだ。東京まで出開帳していただいて、本当にうれしかった。
それにしても会場は、若者が多かった。仏像だけではなくて、書画でも焼きものでも、最近、東洋美術の展覧会は、驚くほど若者が多い。逆に、たまに西洋美術を見に行くと、おじさんや老夫婦が多いのである。ニッポンって不思議だなあ。
それから、我々の間で話題になったのは、駅貼りポスターに添えられた「白州正子が、井上靖が、土門拳が、みうらじゅんが愛した」という爆笑コピー。ところが、チラシでは「みうらじゅん」のところが「水上勉」に差し替えられている。広報部内で、いろいろ葛藤や妥協があったのかな~なんて、要らぬ想像を誘われてしまった。
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先週の話になるが、ようやく本家の『仏像』展に行ってきた。前期の見ものが、京都・宝菩提院願徳寺蔵の菩薩半跏像。後期が滋賀・向源寺蔵(渡岸寺観音堂)の十一面観音菩薩立像。どちらも見に行ったことがあるが、どちらを取るかといえば、渡岸寺(どうがんじ)の十一面観音にお会いしたかったのである。私のまわりは、おおむね同意見で、10月頃は「行くなら後期。まだ行っちゃダメですよ」と忠告してくれる若い友人もいた。
ところが、今回、一緒に見に行った”見仏の友”のうち、なぜか金沢在住の友人は2回目で、「え?前期は来なかったの?」と訝られるし、別の友人は「僕は3回目です」と言うし。もうひとりは、高倍率を突破して、「みうらじゅん・いとうせいこう仏像トーク」を聞きに行ったというのだから、全くよく出来た仏友たちである。自分の未熟を恥じ入った次第。
それはともかく、渡岸寺の十一面観音は美しかった。斜め前(向かって左)から眺めるのがベストショットだと思う。前から見ると幼児体型なのだが、後ろに回ると、腰の細さ、腰の位置の高さ(腰布がヒップハンガーみたいだ)が、畏れながら、たいへん色っぽい。ひとつ残念だったのは、照明が強すぎると思われたこと。位置によっては、見る者の邪魔になっていたのに加えて、観音の印象が白っぽくなってしまった。この観音は、磨き上げたような黒い肌が魅力なのに。
そのほかでは、唐招提寺の木像が並んだコーナーで、やはり足が止まる。木目が露わで、「一木にこめられた祈り」のタイトルそのままの霊気と迫力を感ずる。
今回、初見で、いいなあと思ったのは、奈良・珹寺(れんじょうじ)の聖観音菩薩立像。腰のひねりかたが優美。胸から膝までを飾る長い瓔珞も美しい。『芸術新潮』11月号の表紙を飾った奈良・融念寺の地蔵菩薩は、西洋の貴婦人のように、右手で衣の裾をそっとつまむ。細面のわりにふくよかな頬も、若い女性のようだ。あやしい。
島根・大寺薬師の四天王とか、広島・古保利薬師堂の四天王(2体)などは、その存在は知っていても、なかなか訪ねる機会が無かったものだ。東京まで出開帳していただいて、本当にうれしかった。
それにしても会場は、若者が多かった。仏像だけではなくて、書画でも焼きものでも、最近、東洋美術の展覧会は、驚くほど若者が多い。逆に、たまに西洋美術を見に行くと、おじさんや老夫婦が多いのである。ニッポンって不思議だなあ。
それから、我々の間で話題になったのは、駅貼りポスターに添えられた「白州正子が、井上靖が、土門拳が、みうらじゅんが愛した」という爆笑コピー。ところが、チラシでは「みうらじゅん」のところが「水上勉」に差し替えられている。広報部内で、いろいろ葛藤や妥協があったのかな~なんて、要らぬ想像を誘われてしまった。