見もの・読みもの日記

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関西週末旅行10月編:奈良博を褒める

2007-10-29 23:51:46 | 行ったもの(美術館・見仏)
 今年も正倉院展に行ってきた。展示内容については、昨日のブログに詳述したので、少し「運営まわり」のことを書いておきたい。

 正倉院展には、通い始めて10年くらいになる。気が付いたら、6年間皆勤を達成してしまった。この間、最も大きな変化は、2005年から企業の協賛・協力が始まったことである。とりわけ、読売新聞という全国メディアが付いたことによって、入場者数は2004年の13万2000人から2005年の23万4000人に跳ね上がった(→当ブログ2006年の記事/ただし、原典はリンク切れ)。

 この年(2005年)の会場内の悲惨さは今でも忘れられない。展示ケースの前に行き着けないので、「あんた整理員だろ、ちゃんと整理しろよ!」と怒鳴る客。気の弱そうな場内整理員が「前に進んでください」と促すと「前が動かないんだから進めるわけないじゃないか!」と怒鳴り返す客。思わず万葉歌人ふうに「何しか来けむ 馬つかるるに」とため息をつきたくなる光景だった。

 あれから2年経った今年は、場内整理がずいぶん改善された。何より感心したのは、早めに(9時に開館して10時頃)入場制限をかけたことだ。開館前後に到着したお客さんには酷かもしれないが、場内の秩序を保つには必要な措置だったと思う。場内整理員も、「前に進んでください」と強く誘導することをしなくなった。そのかわり、観客の列の後ろを、ひとりごとみたいに気弱な声で「え~ご覧になりましたら、少しずつ、少しずつお進みください」なんて言いながら巡回しているので、噴き出しそうになった。なんとなく好感が持てる。

 もっと積極的に評価したいのは前売り券の入手しやすさである。私は、ふだん国立博物館の友の会カード(パスポート)を使っているのだが、今回は、ちょうどそれが切れてしまっていた。奈良に到着したのが夜遅くだったので、前売り券を買えるかどうか、不安だった。前売り券を持っていないと、入場待ちの列に並ぶことができない。結局、近鉄奈良駅で購入できたのだが、実は24時間営業のローソンでも発売していると知ったときは感激した。これなら、遠方から深夜や早朝に奈良に到着しても大丈夫。ありがたいサービスである。



 さらに、ふだんは友の会カード利用なので、料金を気にしたことがなかったのだが、正倉院展900円(前売り)と聞いたときは耳を疑った。安い。これは観客が多いわけだ。ちなみに、東博の『大徳川展』は1,300円(同)、京博の『狩野永徳』は1,200円(同)である。

 奈良博を出たあと、商店街を少し歩いた。そこでは、正倉院展に連動したスタンプラリーが行われていた。なるほどね。正倉院展って、近隣の住人にとっては、毎年恒例の鎮守のお祭りみたいなもので、町おこしに欠かせないイベントだということがよく分かった。観客の急増は、マスコミのせいとばかりは言えず、奈良町の住人の地道な努力も与っているのかもしれない。それだと、あまり文句も言えないなあ。
コメント
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