○出光美術館 『文字の力・書のチカラ-古典と現代の対話-』(2009年1月10日~2月15日)
http://www.idemitsu.co.jp/museum/
古代から現代まで、多様な書の魅力に迫る展覧会。冒頭は漢字2文字や3文字を大書した禅僧等の扁額が並ぶ。それから、5~7文字の一行書。スピード感があって気持ちいい。畳目が写って見えるような書もあって、榊原悟さんが江戸絵画の特徴として挙げられた「即画(即席画)」のパフォーマンスって、書の伝統とのかかわりもあるんじゃないか、と思った。
仮名では、忘れてならない古筆手鑑『見努世友(みぬよのとも)』。2005年の『平安の仮名、鎌倉の仮名』展以来だろうか。前回と同じく(?)紀貫之の高野切を貼った丁から開いてあった。すぐ後に「三蹟」こと小野道風・藤原佐理・藤原行成が続くので、ここを外すわけにはいかないのだろう。また「鼠跡心経」(→臨川書店)と呼ばれる般若心経の貼り込みも展示されているが、なんでこれが空海筆と言われるようになったのかなあ。下手すぎ。
うーん、と唸ったのは『継色紙』(伝・小野道風筆)。粘葉装の冊子本を開いて貼ったもの(→文化遺産オンライン)だが、展示品は、右が青色、左が黄色という対照的な料紙を用いている上に、右(青色)の丁は空白なのだ。あまりにも絵画的すぎてズルイ。パウル・クレーの絵みたい。左(黄色)の料紙には「あめにより た/みのゝしまを/けふみれは」という上の句だけが、現代詩のように投げ出されている(古今918 紀貫之か)。『石山切』(伝・藤原公任筆)は料紙も筆跡も本当にきれいだ。筆跡はリズミカルな肥痩を繰り返しながらも、力強さとみずみずしさを失わず、絶対に掠れないところがすごい。これぞ王朝の美学だと思う。書家・深山龍洞氏が心血をそそいだ昭和の模作を並べて楽しむことができる。
縦線の太さ・横線の細さが極端な「定家流」を説明して「アラビア文字を髣髴とさせる」と書いてあったのは、唐突だけど上手い比喩だと思って苦笑させられた。展示の最後に、甲骨文字・楔形文字など珍しい考古資料に加えて、アラビア文字(クーファ書体)のコーラン片も見ることができるので、検証してみてほしい。光悦を評して「当時の前衛」であるとか、本展は解説の文言がさりげなく面白い。
それから『開通褒斜道刻(かいつうほうやどうこくせき)』(拓本)とは思わぬ再会。以前、日本民藝館で見た拓本は、得体の知れない妖気みたいなものを感じたが、これはそれほどでもなかった。でも、なるほどゴチック書体に似ていて、変わった石刻文である。
http://www.idemitsu.co.jp/museum/
古代から現代まで、多様な書の魅力に迫る展覧会。冒頭は漢字2文字や3文字を大書した禅僧等の扁額が並ぶ。それから、5~7文字の一行書。スピード感があって気持ちいい。畳目が写って見えるような書もあって、榊原悟さんが江戸絵画の特徴として挙げられた「即画(即席画)」のパフォーマンスって、書の伝統とのかかわりもあるんじゃないか、と思った。
仮名では、忘れてならない古筆手鑑『見努世友(みぬよのとも)』。2005年の『平安の仮名、鎌倉の仮名』展以来だろうか。前回と同じく(?)紀貫之の高野切を貼った丁から開いてあった。すぐ後に「三蹟」こと小野道風・藤原佐理・藤原行成が続くので、ここを外すわけにはいかないのだろう。また「鼠跡心経」(→臨川書店)と呼ばれる般若心経の貼り込みも展示されているが、なんでこれが空海筆と言われるようになったのかなあ。下手すぎ。
うーん、と唸ったのは『継色紙』(伝・小野道風筆)。粘葉装の冊子本を開いて貼ったもの(→文化遺産オンライン)だが、展示品は、右が青色、左が黄色という対照的な料紙を用いている上に、右(青色)の丁は空白なのだ。あまりにも絵画的すぎてズルイ。パウル・クレーの絵みたい。左(黄色)の料紙には「あめにより た/みのゝしまを/けふみれは」という上の句だけが、現代詩のように投げ出されている(古今918 紀貫之か)。『石山切』(伝・藤原公任筆)は料紙も筆跡も本当にきれいだ。筆跡はリズミカルな肥痩を繰り返しながらも、力強さとみずみずしさを失わず、絶対に掠れないところがすごい。これぞ王朝の美学だと思う。書家・深山龍洞氏が心血をそそいだ昭和の模作を並べて楽しむことができる。
縦線の太さ・横線の細さが極端な「定家流」を説明して「アラビア文字を髣髴とさせる」と書いてあったのは、唐突だけど上手い比喩だと思って苦笑させられた。展示の最後に、甲骨文字・楔形文字など珍しい考古資料に加えて、アラビア文字(クーファ書体)のコーラン片も見ることができるので、検証してみてほしい。光悦を評して「当時の前衛」であるとか、本展は解説の文言がさりげなく面白い。
それから『開通褒斜道刻(かいつうほうやどうこくせき)』(拓本)とは思わぬ再会。以前、日本民藝館で見た拓本は、得体の知れない妖気みたいなものを感じたが、これはそれほどでもなかった。でも、なるほどゴチック書体に似ていて、変わった石刻文である。