○東京国立博物館 特集陳列『新春企画 博物館に初もうで』(2009年1月2日~1月25日)、その他
http://www.tnm.jp/
今年も初詣は東京国立博物館から。公的機関の法人化には、いろいろ弊害があると思っているが、博物館が1月2日から開くようになったことだけは、ありがたい。本館前では、獅子舞や物真似芸(江戸売り声)など、楽しいイベントショーに人が集まっていた。明治の初め、上野の山の開発をめぐっては、イベント的な「博覧会」の聖地をめざす田中芳男と、常設の「博物館」建設を悲願とした町田久成の間で、激しい確執があったはずだが、今やめぐりめぐって両者の夢が融合したようにも見えた。
本館2階の特別1室では『豊かな実りを祈る-美術のなかの牛とひと-』と題して、今年も干支にちなんだ美術を特集。冒頭の『北野天神縁起絵巻(建治本)断簡』は、後ろ足を天に向けて(股間も露わに)派手にひっくり返る牛の姿で、ちょっと吹いてしまった。何もこんな姿を、新春吉例の冒頭に据えなくてもよさそうなものを。『駿牛図巻断簡』の黒牛は気品にあふれ、美しい。神に近い動物のひとつとされるのも分かる気がする。宗達筆『牛図』は三白眼がおかしすぎる…。
このほか、3室「仏教の美術」が充実。国宝『十二天像(風天)』は京博本?と思ったら、そうではなくて、奈良・西大寺が所蔵する日本最古の十二天像だった(→Wikipedia)。色彩が剥落して判別しにくいが、やっぱり「牛に乗っている」ので(干支つながり)風天を借りてきたのかしら。別種の十二天像から「日天」「毘沙門天」も公開中。鎌倉時代の立像図で、非常に色彩が美しい。どこかで見たことあるなあ、と思ったら、滋賀・聖衆来迎寺蔵。もしかしたら琵琶湖文化館で出会っているのかもしれない。
江戸モノでは、さりげなく若冲の大作『松梅群鶏図屏風』を公開中。オシャレなニワトリたちは、ロートレックの描くパリの貴婦人みたいである。私は、左隅に添えられた梅の枝に飽きず見入ってしまった。
1階では、16室「歴史資料」の『歴史を伝えるシリーズ・特集陳列・文化財の保護』が面白かった。明治20年代に行われた「臨時全国宝物取調(りんじぜんこくほうもつしらべ)」について紹介するもの。この調査に関する文書類と、調査の一環として制作された複製美術品を展示する。大阪・四天王寺蔵の『扇面法華経』は、平安時代の風俗画として貴重なものだが、実物は絵の上に経文が墨書されていて見にくい。むしろ複製では、純粋に絵画を味わうことができて、ありがたい。
もっと面白かったのは文書類である。明治21~30年作成の『宝物目録』(調査結果)って、何冊くらいあるのかなあ。「山形」や「島根」の背表紙には「単」とあったから1県1冊かもしれないが、「和歌山」は「天」とあったから、天地人の3冊なのかな?などと想像する。使われている罫紙はいろいろで、記載方法もさまざま。ちょうど開いていた「奈良(興福寺東金堂分)」は、記入者の性格が大雑把そうで、笑った(でも簡潔で要領は得ている)。こんな古い事務文書を、公文書館に移管するでもなく、よく取ってあったなあ、と感心する。博物館なのだから当たり前なのかもしれない。でも状態(虫喰いのひどさ)を見ると、文書の保存がそれほど「当たり前」であったとは思えない。ちゃんと補修をして、後世に伝えてほしいと思う。
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今年も初詣は東京国立博物館から。公的機関の法人化には、いろいろ弊害があると思っているが、博物館が1月2日から開くようになったことだけは、ありがたい。本館前では、獅子舞や物真似芸(江戸売り声)など、楽しいイベントショーに人が集まっていた。明治の初め、上野の山の開発をめぐっては、イベント的な「博覧会」の聖地をめざす田中芳男と、常設の「博物館」建設を悲願とした町田久成の間で、激しい確執があったはずだが、今やめぐりめぐって両者の夢が融合したようにも見えた。
本館2階の特別1室では『豊かな実りを祈る-美術のなかの牛とひと-』と題して、今年も干支にちなんだ美術を特集。冒頭の『北野天神縁起絵巻(建治本)断簡』は、後ろ足を天に向けて(股間も露わに)派手にひっくり返る牛の姿で、ちょっと吹いてしまった。何もこんな姿を、新春吉例の冒頭に据えなくてもよさそうなものを。『駿牛図巻断簡』の黒牛は気品にあふれ、美しい。神に近い動物のひとつとされるのも分かる気がする。宗達筆『牛図』は三白眼がおかしすぎる…。
このほか、3室「仏教の美術」が充実。国宝『十二天像(風天)』は京博本?と思ったら、そうではなくて、奈良・西大寺が所蔵する日本最古の十二天像だった(→Wikipedia)。色彩が剥落して判別しにくいが、やっぱり「牛に乗っている」ので(干支つながり)風天を借りてきたのかしら。別種の十二天像から「日天」「毘沙門天」も公開中。鎌倉時代の立像図で、非常に色彩が美しい。どこかで見たことあるなあ、と思ったら、滋賀・聖衆来迎寺蔵。もしかしたら琵琶湖文化館で出会っているのかもしれない。
江戸モノでは、さりげなく若冲の大作『松梅群鶏図屏風』を公開中。オシャレなニワトリたちは、ロートレックの描くパリの貴婦人みたいである。私は、左隅に添えられた梅の枝に飽きず見入ってしまった。
1階では、16室「歴史資料」の『歴史を伝えるシリーズ・特集陳列・文化財の保護』が面白かった。明治20年代に行われた「臨時全国宝物取調(りんじぜんこくほうもつしらべ)」について紹介するもの。この調査に関する文書類と、調査の一環として制作された複製美術品を展示する。大阪・四天王寺蔵の『扇面法華経』は、平安時代の風俗画として貴重なものだが、実物は絵の上に経文が墨書されていて見にくい。むしろ複製では、純粋に絵画を味わうことができて、ありがたい。
もっと面白かったのは文書類である。明治21~30年作成の『宝物目録』(調査結果)って、何冊くらいあるのかなあ。「山形」や「島根」の背表紙には「単」とあったから1県1冊かもしれないが、「和歌山」は「天」とあったから、天地人の3冊なのかな?などと想像する。使われている罫紙はいろいろで、記載方法もさまざま。ちょうど開いていた「奈良(興福寺東金堂分)」は、記入者の性格が大雑把そうで、笑った(でも簡潔で要領は得ている)。こんな古い事務文書を、公文書館に移管するでもなく、よく取ってあったなあ、と感心する。博物館なのだから当たり前なのかもしれない。でも状態(虫喰いのひどさ)を見ると、文書の保存がそれほど「当たり前」であったとは思えない。ちゃんと補修をして、後世に伝えてほしいと思う。