見もの・読みもの日記

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春三月また秘仏の旅(2):泉屋博古館ほか、美術館三昧

2009-03-24 00:03:20 | 行ったもの(美術館・見仏)
 連休2日目は京都観光。朝の早い清水寺から。

■西国第十六番 音羽山清水寺(京都市東山区)

 清水寺のご開帳には、昨年の秋も来たし、その前、2000年にも来ている。だんだん物珍しさが減って、人が少なくなってきたのはいいことだ。私は何回見ても、いい仏像だと思う。特別拝観料100円という薄利多売(?)精神も嬉しい。開山堂では、衣冠束帯姿の田村麻呂公像も公開中。

泉屋博古館 平成21年度春季展『住友コレクションの中国絵画』(2009年3月14日~4月26日)

 今回の関西旅行でいちばん楽しみにしていたのは、実はこの展覧会。到着したときは、まだ開館(10:30)のちょっと前だったので、疎水沿いの山際に建つ大豊(おおとよ)神社に立ち寄る。花木の多い、のんびりした雰囲気が鎌倉を思わせて、和む。

 さて、この展覧会は、第15代住友吉左衞門(1864-1926)と息子・住友寛一(1896-1956)が蒐集した中国絵画を紹介するもの。同館のコレクションには「宋代画院に始まる宮廷画家の系譜」と「明末清初の文人たちの系譜」という、大別して2つの流れがあるという。私が関心を持つのは、圧倒的に後者である。いや、むかしは、東洋美術は古いものほど価値があるという、誤ったドグマに囚われていたので、明清絵画なんて一顧だにしていなかったのだけど…。

 会場を入ってすぐ、八大山人の『安晩帖』を見つけ、再会の喜びにひたる。今回は、絶妙のバランスで粟の穂先に静止した小鳥を描く。スズメなのかな? 妙に人間くさいかしこまった表情をしている。薄墨をなすりつけたような粟の穂が見事。う~ん、もっと他の画も見たい!

 石濤筆『廬山観瀑図』は、昨年秋、大和文華館の『崇高なる山水』で見たもの。こっちの会場のほうが、薄暗いせいか、色に柔らか味が感じられていいと思う。石渓筆『報恩寺図』も、少ない色彩が「渇筆ですり込まれた墨色と融けあって」もどかしいくらいなのがいい。漸江の神経質なまでに澄明な作風も好き。日本人の水墨画は、黒々とした墨色を使うものが多くて、こういう不安なほどの「白っぽい」画って、あまりないように思う。

 ときどき外のソファで休憩しながら、何度も展示室に戻って、飽きずに見続ける。ソファの上に『泉屋博古:中国絵画』というコレクション図録があって、冒頭の鈴木敬氏の文章「住友コレクション随想」を読んだら、石濤に対してずいぶん厳しいことを言っている。学者の言うことは素人とは違うなあ、と妙に感心して、この図録、買って帰ってきた。久しぶりに常設展示室を覗いて、青銅器(銅鏡)も眺めていく。

承天閣美術館 『狩野派と近世絵画~爛漫と枯淡と~』(後期)・併催『名碗三十撰』(2008年12月6日~2009年3月29日)

 光悦作『赤楽茶碗・加賀』を特別公開中。赤釉に残る白むら、泥をなすりつけたような箆(へら)のあとが面白い。俵屋宗達『蔦の細道図屏風』は深緑と金のコントラストが、ためいきの出るような美しさ。これ、どっちが右隻でどっちが左隻か議論があるのだっけ? なぜか、同美術館で販売中のポストカードと、現在の展示では、左右が逆になっていた。

京都市美術館 所蔵品展『画室の栖鳳』(2009年1月24日~3月29日)

 近代日本画の先駆者・竹内栖鳳のスケッチや下絵を多数紹介する展示。既に洋画家が使い始めていた裸体モデルを使ってみたり、洋行した際に念願のライオンをスケッチしてみたり、「果敢なチャレンジ」の数々が興味深い。

細見美術館 『萌春の美-重要文化財 豊公吉野花見図屏風とともに-』展(2009年2月13日~4月19日)

 上記屏風は、秀吉の傍らには南蛮人姿の供の者が描かれていて、伊達政宗ではないかという。また、春に江戸琳派(抱一、其一)は似合いだなあ、と思う。

 この日は、やはり熊野・那智をまわって1日遅れでやってきた東京の友人と合流、京都駅前で日付の変わる頃まで飲む。これも旅の楽しみ。
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