○府中市美術館『三都画家くらべ:京、大坂をみて江戸を知る』(2012年3月17日~5月6日)(前期:3月17日~4月15日)
前後期とも行きたかったので、まだ桜には早いと思いながら、先週末に出かけた。冒頭に「京」「江戸」「大坂」を代表する3点の花鳥画。京が応挙の鶴なのは遠目にすぐ分かった。江戸は、胸の赤い、雉みたいな鳥が汀で咆哮する図。どぎつくなりそうな配色を、薄く品よく抑えている。誰? 近寄ったら、宋紫石だった。あ、
宋紫石(本名:楠本幸八郎)って江戸の人だったのか。何度覚えても混乱する。大坂は林閬苑(りんりょうえん)。知らない名前だった。当時の大坂では、非常に有名な画家だったそうで、検索したら、2010年に大坂歴史博物館が
特集展示を行っていることが分かった。へえ~今回、府中に来てない作品にも、ずいぶん面白い作品がありそう。
展覧会は、三都の風景と特色をざっと概観し(さほど有名でない画家の描いた京の風俗画に和む)、「花と動物」「人物」「山水」と進む。どのパートも、基本的には、京→大坂→江戸の配列。文化の発展順ということだろうな。順番に見て行ったあとで、ざっと会場を見まわすと、三都の絵の違いが感じられるように思う。
特に「山水」は、違いが分かりやすかった。ほんわりした大和絵の山水の伝統を受け継ぐ京都。ゴリゴリに中国風な大坂。でも、大坂絵画って、こんなに中国好みだったのか。知らなかった。墨江武禅は、
2009年、府中市美術館の山水画展で知った画家。『月下山水図』に再会し、『雨中山水図』も面白いと思った。唐絵好みの大坂の風土の中で育った画家であることも初めて認識した。江戸の山水は、なんというか、背景に背負う伝統が浅い分、風の吹き抜ける解放感があって、ああ、私(東京人)の育った空気だ、と感じられる。
それから「和みと笑い」。蘆雪の『なめくじ図』、これ和みますかね。私は、かなりナンセンスな笑いを感じたのだけれど。耳鳥斎の『地獄図巻』では、「歌舞伎役者地獄」に吹いてしまった。縛り付けられた亡者の口に大きな大根が押し込まれている。淡々と仕事をこなす鬼の無表情が可笑しい。展覧会図録に掲載されていないのが残念。中村芳中の描く蝦蟇仙人と鉄拐仙人(白いガマも)かわいいなー。江戸の笑いが「理」にこだわる、というのは納得。
最後の「三都の特産」は「京の奇抜」(若冲登場!)「大坂の文人画」「江戸の洋風画」を挙げる。なるほど、なるほど。大坂の岡田米山人、あまり意識したことのない画家だったが、『界住吉図』『山水・人物・花卉図屏風』など、ずいぶん面白い作品を見せてもらった。司馬江漢の『異国戦闘図』は、実は、途中でソファの上にあった図録を広げて、おお、これはすごい!と思ったのだが、本物を見たら、とても小さい作品だった。でも拡大しても迫力の衰えない(というか、迫力も拡大される)画力というのは、すごいものだ。若冲の『垣豆群虫図』も、拡大図版で見ると、ハチ(ハエ?)の表情の愛らしさに癒される。展示図録で確認を。
後期(4/17~)は、かなり展示替えがあるようだ。「でろり」人物画の祇園井特は出ないのかな?と思ったら、3点出陳が予定されているが、全て後期。また行きます。