見もの・読みもの日記

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板画だけでなく/東北の工芸と棟方志功(日本民藝館)

2012-04-11 23:45:53 | 行ったもの(美術館・見仏)
○日本民藝館 特別展『東北の工芸と棟方志功』(2012年4月3日~6月10日)

 週末、散歩にちょうどいい陽気だったので、桜を求めて歩いていたら、行くつもりのなかった日本民藝館に着いてしまった。まあそれなら、見ていくか。ガラガラと重たい引き戸を開けると、正面の階段の左右には「東西」「南北」の書。棟方志功の字だ。中央に大きな木製の面。近寄って、その巨大さに圧倒される。仙台の竈神(かまがみ)の面だという。何の気なしにメモしてきたが、いま調べたら、竈神を面で祀る習俗は「旧仙台藩領内にのみ見られるもの」だそうだ。

 踊り場の箪笥の上には、岩手産の壺。階下の展示ケースは、右に焼き物、左に塗り物。根来かな?なんて、寝ぼけたことを考えたが、岩手の秀衡塗(南部塗)だった。左右の壁に、さりげなく志功の板画の大幅。「2階からご覧ください」の声に押されて、階段を上がる。

 大展示室を見渡して、おや、と思う。もっと「棟方志功」の目立つ展覧会かと思っていたので。主役は、あくまで「東北の工芸」なんだな、と考えを改める。樺細工、刺子、陶器、鉄器など。蓑、背中当(ばんどり)が珍しくて目を引く。会津本郷の白釉緑流の甕、いいなあ。

 正面に、棟方の板画(版画)屏風『東北経鬼門譜』。六曲一双の屏風で、左隻に女たち(羅刹女)、右隻に男たち(羅漢?鬼?)、左右の合わせ目に三尊図が描かれており、中尊は身体の中心線を二つに立ち割られた状態である。あとでリーフレットを読んだら、「棟方は、身を割った仏の間から諸々の悪霊や禍を通すことで、それらを鎮めてくれるよう念じた」のだという。大展示室に棟方の作品は、これ1点か、と思ったが、ふと振り返ったら、対面の入口の上に「道」という書が掛けてあった。

 棟方作品は、このほか2階の第3室と階段まわりにいくつか展示されていたが、私は『岩木山』という墨一色の倭画が好きになった。同じく倭画『暁陽 十和田湖』という作品は、小島の多い入江に差し込む朝日を、明るい色彩とすばやいタッチで描いていて、印象派の絵画を思わせる。板画『雪しんしん』は、草野心平の詩をモチーフに、板画に施した淡い蛍光色が華やか。泥臭い東北の風土という私の先入観と異なり、意外と都会的なセンスで驚く。

 このほかにも、泥人形・張子人形、漆器、絵馬など、東北の工芸品を見て、河井寛次郎・濱田庄司の展示室に入ったとき、河井のモダンさをあらためて意識した。優劣をいうわけでなく、無名の工人が残した日用雑器の美と、意識的に造形された作家作品の違いを感じた。どちらも好きなんだけど。

 桜に惹かれて、近くの駒場野公園(駒場農学校の跡地)にも、初めて足を踏み入れてみる。田圃がある! 知らなかった。
コメント
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