見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

駆け足で奈良文化財めぐり(3)/奈良博・なら仏像館(2013/7月)

2013-07-30 23:57:18 | 行ったもの(美術館・見仏)
○奈良国立博物館 なら仏像館(2013年7月11日~)

 開催中の『みほとけのかたち』展に、おなじみの仏像がかなり移動しているので、常設展示はこんな感じになっている(※出品リスト)。いくつか新顔あり。



(1) 広目天・興福寺・平安
(2) 多聞天・奈良博・平安
(3) 十一面観音・勝林寺・平安
(4) 地蔵菩薩・万福寺・奈良
(5) 天部形立像・兵庫県・平安
(6) 准胝観音・文化庁・平安
(7) 梵天・秋篠寺/伝救脱菩薩・秋篠寺
(8) 十一面観音・西光院・平安
(9) 地蔵・新薬師寺・平安
(10) 十一面観音・元興寺・平安
(11) 観音・文化庁(もと瑞景寺?安置)・平安
(12) 十一面観音・地福寺・平安
(13) 聖観音・勝林寺・平安
(14) 阿閦如来・西大寺・平安
(15) 弥勒菩薩・薬師寺・平安

(5)の天部形立像は、丈の高い宝冠をかぶり、どっしりした造形。わりと好き。

※印の奥の壁沿いのケースには、室生寺の辰神・未神および、長谷寺の法華説相図と薬師寺の文殊菩薩坐像(これも珍しい)が並ぶ。第2室は、阿弥陀如来・浄土寺・鎌倉は変わらず。でも浄土寺の現地に行ってきて初めて仰ぐ阿弥陀如来である。あとは「肖像」と「如来の種々相」。第3室、大阪・金剛寺の降三世明王坐像も相変わらずだった。
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駆け足で奈良文化財めぐり(2)/みほとけのかたち(奈良博)他

2013-07-30 22:27:03 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 特別展『みほとけのかたち -仏像に会う-』(2013年7月20日~9月16日)

 絵画や彫刻であらわされた仏像の「かたち」に注目しながら、仏像のもつ意味や、魅力の源をたどっていく展覧会。だから、信仰とか歴史、由来などにあまりこだわらず、「服」「髪」「顔」「姿勢」など、目に見える特徴から仏像を分類し、語っていく。奈良博の所蔵品、もしくはふだんから奈良博で見られる寄託品(?)が多いが、ときどき、おや、と思うものもある。北僧坊の虚空蔵菩薩坐像は、私の好きな、威厳のある平安初期の仏像。北僧坊(矢田寺)にはまだ行ったことがない。林小路町自治会の弥勒菩薩立像は全身が金色を呈し、さらに細やかな截金をまとう。キリッとしたプロポーションが鎌倉時代らしくて好き。橋本院の涅槃像は、やや仰向き加減なところが、夏の昼寝みたいだった。

 彫刻ばかりかと思っていたら、仏画もたくさん出ていたのが嬉しかった。奈良博所蔵の十一面観音菩薩像(12世紀)は、運がいいと奈良博トップページの飾りバナーに足元だけ表示される。久しぶりに天寿国繍帳も見た。ただし、仏画は展示替えが多いので、いま図録を見ながら、うわー京都・知恩院の地蔵菩薩像、見たかったなー。個人蔵(!)の不空羂索観音菩薩像も。蓮台に両足を下ろして「腰かける」姿がめずらしい。兵庫・太山寺の十一面観音菩薩像も、等々、悔やんでいる。いずれもかなり宋の影響の強い鎌倉時代の仏画。意外と平安・院政期の仏画のほうが博物館等に寄託等されているのに対し、鎌倉期の仏画って、お寺に大事に仕舞われていることが多くて、見る機会が少ないかもしれない。後期(8/20-9/16)展示。9月にもう1回、来られるだろうか。

 平常展(なら仏像館)の名品展『珠玉の仏たち』がどうなっているかも、もちろんチェックしてきたのだが、これは時間があったら別稿に起こすことにする。

寧楽美術館 企画展『中国の書画と陶磁器など』(2013年4月1日~9月16日)

 いつも通り過ぎていた小さな美術館に初めて寄ってみる。古鏡、古印、碑帖、陶磁器などが、少しずつ並んでいた。

東大寺ミュージアム 修理完成記念特別展『国宝・東大寺金堂鎮壇具のすべて』(2013年3月1日~9月29日)

 東大寺の境内に入り、久しぶりに東大寺ミュージアムに入り、『西大門勅額』や『誕生釈迦仏立像及び灌仏盤』と久しぶりに再会する。奈良博の常設館にあったときは、年に1、2回は必ず見ていたのになあ。2011年秋にここを訪ねたときは、三月堂(法華堂)の不空羂索観音立像がいらっしゃったが、今年5月、予告どおり、もとのお堂に戻られたようだ。けれども日光、月光菩薩は、ここに残ることになった。間に不空羂索観音の巨像を挟まず、日光、月光菩薩が並び立つ様子は、とても不思議な感じがした。ぽっかり空いた空間に物足りなさが残るようでもあり、距離も近くなって、二体が仲良く並んだ姿を見ていると、「これでよかったんだ」と思う気持ちも徐々に湧いてくる。

 表題の特別展には、「陽剣」「陰剣」の象嵌銘(肉眼ではほとんど見えない)を持つ『金銀荘大刀』2件が出ていた。これ、あれじゃないか。明治時代に大仏の基壇下から出土した鎮壇具で、『国家珍宝帳』にも記載がある宝物。およそ1250年間にわたり行方不明だったが、2010年、X線調査によって判明した(→ニュース記事2010/10/25)。そのあと、東博の『東大寺大仏-天平の至宝-』展で公開されたらしい(おぼろに記憶がある)のだが、私は関心が薄かったのか、何も記載がない。でも今の展示なら、繊細な金平脱唐草文様など、じっくり見られる。上記の大刀は装飾品の印象が強いが、むしろ印象的なのは、鉄製の小札を綴った挂甲残闕。武器の印象が生々しい。

■東大寺境内(三月堂~二月堂)

 5月18日から拝観を再開したはずの三月堂にも寄っていくことにする。前回の奈良訪問は、拝観再開の直前だった。石段を上がっていくと、白壁・黒い瓦屋根の静かな風景に和む。



 入ってみると、定位置に戻られた不空羂索観音立像。手前に金剛力士像1対。左右に帝釈天と梵天。四隅に四天王。いずれも本尊に引けを取らない大きな乾漆像だ。秘仏の執金剛神を除くと、檀上には計9体。全体にすっきりと見通しのいい空間になった。梵天・帝釈天の足元とか、いや本尊の足元も、以前はこんなふうに見えていなかったよなあと思う。いただいたカラーパンフレットも新しくなっていた。これから、このお堂を訪れる若者たちは、この配置を記憶していくんだろうなあ。まるでテイスト違いの日光、月光菩薩や、吉祥天やら弁財天やら地蔵菩薩や不動明王まで、この檀上に肩を寄せ合っていたなんて、想像もできないだろうなあ、としみじみ。

 そろそろ帰りの時間が近づいたので、奈良→再び神戸空港から札幌へ帰着。札幌で、関西から遊びに来ていた友人に迎えられ(話が逆w)駅前のバルで休日の最後を楽しんだ。
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駆け足で奈良文化財めぐり/大和文華館

2013-07-30 00:18:47 | 行ったもの(美術館・見仏)
先週末の関西旅行の記事を、メモ程度でも取り急ぎ。7/21(日)は奈良へ。

大和文華館 特別企画展『海を越える美術-日本をとりまくアジアとヨーロッパ-』(2013年7月5日~8月18日)

 近世(17~19世紀)の東アジアの美術工芸を展示。神戸市立博物館からの特別出品がかなりあり。和(日本)と洋(ヨーロッパ)という二項対立ではなく、日本-中国-朝鮮-西洋の交流と影響関係に着目する多角的な視点が面白いと思った。伝・余(よしょう)筆『桐下遊兎図』は同館の新収品。紅白の鳳仙花に見え隠れする三匹のウサギの表情がかわいい。明るい色合い、描き込み過ぎないさっぱりした画面。伝・郎世寧筆『閻相師像』は何度見ても好き。『台湾征討図巻』は古いSFの挿絵を見るようだ。全12図のうち4図が開いていて、大砲による火攻めの図と、海から攻める図が特に好き。

 蘇州版画は、こういう「海を越える美術」の文脈で、どこに注目していいのか、よく分からなかったが、西洋由来の透視図法や陰影法などを、日本の浮世絵に影響を橋渡しする役割を果たしている。どちらも新奇なものを好む庶民の闊達な美意識に根差している点が共通する。

 明末の画家・張宏筆『越中真景図冊』は見たかったもの。今回、6面が開いていた。「極端にまでつけた遠近」で表された川下りの船とか長い橋の図が面白い。それから、『冠岳夕嵐図』の鄭敾(ていぜん、チョン・ソン、1676-1759)は朝鮮後期を代表する画家で、中国画の模倣から脱して朝鮮独自の山水画を描いたという。瀟湘八景にならって、漢江流域の名所を描いたものだが、穏やかで湿潤な空気が感じられる。

 後半は、ガラス工芸、紅型衣装、沖縄(琉球)人に関する書画などで、涼しくまとめていた。

以下、続く。
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