見もの・読みもの日記

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2014年3月@東京:江戸絵画の19世紀(府中市美術館)

2014-04-01 23:08:22 | 行ったもの(美術館・見仏)

府中市美術館 企画展『春の江戸絵画まつり 江戸絵画の19世紀』(2014年3月21日~5月6日)

 恒例「春の○○まつり」。いや、パンまつりではなくて、府中市美術館といえば、江戸絵画である。今年のテーマは19世紀。18世紀には、応挙、若冲、蘆雪、蕭白らがいた。さて、19世紀といえば?

 最初に着目するのは「19世紀の造形感覚」。「伝統」の形式にとらわれず、あるものを見たままに描く迫真の迫力が、風景画にも人物画にも花鳥画にも出現する。逆に、ひねりを効かせた造形で、人々の目を釘付けする作品も。国芳の『通俗水滸伝』シリーズはいいなあ。「智多星呉用」は初見かもしれないが、足元に天球儀と八分儀(?)が置かれている。狩野一信の『七福神図』は遠望の楼閣山水図に七福神の姿を小さく描き込んだもの。ほんとに一信筆かなあ。北斎の弟子、魚屋北渓(ととや ほっけい)はよく知らなかったが、エイリアンみたいに爪の大きい『雲龍図』が気に入ったので、画像検索してみたら、かなり好み。

 「心のかたち」を経て、鎖国下の人々にとっての「世界」について考える。ううむ、安田田騏の『異国風景図』(Wikiに画像あり)も安田雷洲の『捕鯨図』も後期展示なのか~。見たい。春木南溟の『虫合戦図』は面白かった。以上4件は、いずれも板橋区立美術館所蔵(寄託)の「帰空庵コレクション」の一部だという。亜欧堂田善の作品も、たくさん見られて楽しかった。絵画史的にはマイナーな画家の作品が、こんなに見られる機会はなかなかない。

 冷泉為恭の『在原業平像』は、あまり印象に残らなかったが、図録で拡大図を見て、精緻な描写に驚いている(ただし鎌倉時代の原本がある由)。「光と陰影」については、こうして類似の表現を集めてみると、いろいろと面白い。やっぱり亜欧堂田善の視覚は変だわ。銅版画『吉原土堤の景』など。

 最後は選りすぐりの(意外な)名品。鈴木其一の『毘沙門天像』『武内宿禰図』(着物の色柄!)、狩野芳崖の『鏻姫(れいひめ)像』、どれも「江戸絵画」というカテゴリーをはるかに超えて素晴らしい。後期も行きたいなあ。

 図録は、巻末に部分拡大図がたくさん付いていて、お買い得。図版と同じページに解説(誰にでも読める文章)を配した「読む図録」なのも嬉しい。

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