見もの・読みもの日記

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異界としての四国/巡る楽園(三好和義)

2014-12-07 19:51:05 | 読んだもの(書籍)
○三好和義『巡る楽園:四国八十八ヶ所から高野山へ:三好和義写真集』 小学館 2004.1

 先月、徳島県立博物館の『空海の足音 四国へんろ展』《徳島編》で、著者の写真展に出会い、ミュージアムショップで買ってきた。写真集といっても、ソフトカバーでA4サイズ。そのかわり350ページ以上あって、かなりぶ厚い。

 著者(写真家)の三好和義さんは徳島県生まれで、これまでタヒチ、モルディブ、沖縄、ハワイなど「楽園」をテーマにした写真集を数多く出版しているという。そう言えば、そんなタイトルの写真集を書店で見かけたことがあるかもしれない。本書は2004年のお仕事だというが、全然存じ上げなかった。仏像にも巡礼にも興味はあるけれど、まだ「四国」には手を出さないでおこうと、心理的に抑制していた所為もある。あと表紙が蓮の花のアップなので、こんなに充実した寺院と仏像の写真集だとは、中を開けてみないと分からないこともある。

 巻末付録に、著者と宮崎信也氏(高野山般若院住職)の対談や各札所の紹介、撮影メモコラムなどが掲載されているが、冒頭から300ページ超は、ただひたすら八十八札所と高野山の写真のみで、説明が一切ないのが清々しい。写真はお遍路さんの姿だったり、門前の風景だったり、露天の石仏や苔むした大木だったりする。仏画や仏具もあり、仏像は全身像もあれば、部分アップもある。古色のにじむ仏様もあれば、新造とおぼしき金ピカの仏様も。どれが「重文」や「国宝」なのか、いや、どれが「本尊」でどれが「秘仏」なのか(実は何件か混じっているらしい)などの説明もない。ところどころ、コイツ何者?という謎の写真も混じっているのが、たいへん面白い。

 京都や奈良に比べて金ピカ仏の出現率が高いのは、四国札所が「史跡」ではなく、信仰の対象として現役だからだと思う。だいたい仏像写真というとモノクロが多いが、本書のプリントは「金」の発色が非常に美しくて、金ピカ仏がとても魅力的に撮られている。実物に会いに行ったらこんなに感動しないかもなあ、と思って、うっとり眺めている。

 巻末の対談で、宮崎信也氏が「日本の中にある非近代というものが、四国遍路だと思うんです」「四国という島がもっている物の怪というか、迫力が強烈に伝わってくる」云々と語っているのはよく分かる。私は、実際の四国巡礼はもう少し人生の晩年に取っておこうと思っているのだが、楽園すなわち「物の怪」に満ちた島であることを、どうかいつまでもやめないでほしい。
コメント
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