見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2015年2月@東京:南京の書画(東博)、天理ギャラリーなど

2015-03-04 22:27:33 | 行ったもの(美術館・見仏)
国立博物館 東洋館・8室 『南京の書画-仏教の聖地、文人の楽園-』(2015年2月24日~4月12日)

 古都・南京の文化に着目した展覧会。私は、はるか昔(学生時代)に初めて南京を訪ねた。そのときの記憶はあまりないのだが、10年くらい前の二度目の訪問はとても楽しかった。担当研究員の一言に「中国の都市を日本に例えれば、政治の中心の北京は東京、商業の中心の上海は大阪、古都・西安は飛鳥、杭州は京都、そして南京は奈良と言ったところでしょうか」とある。なるほど。私は、大阪よりも京都よりも奈良に惹かれるたちなので、非常に納得がいく。

 展示は時代順。作品以外にも、パネルで南京の歴史を読み進めるのが楽しい。六朝の昔から長江流域の中心地として栄え、梁の武帝など仏教を深く信じた帝王が活躍した。インドからもたらされた栴檀釈迦瑞像がおかれていたが、北宋時代に開封に持ち去られてしまう。そして、日本僧・然(ちょうねん)が開封で見たこの像の模刻を嵯峨野の清凉寺にもたらした。おお、そうであったか。

 元を滅ぼし、明を建国した朱元璋は南京を首都と定め、壮麗な宮殿を築く。永楽帝が北京に遷都した後も、南の都として栄えた。明末清初の混乱期には亡命政権の精神的な首都として、多くの遺民たちが集った。清朝になると次第にその意識は薄れ、秦淮河を中心に繁華街が発達し、江南文人文化が花開く。

 展示作品は明清から20世紀まで。「個人蔵」作品が多くて新鮮だった。どなたのご親切か存じませんが、ありがたや。明の李著筆『漁楽図巻』は、べたっと乱暴に黒々した墨を置くところが雪舟っぽいとか、手慣れた人物の描き方は応挙みたいだとか思った。龔賢筆『山水図』は何度か見ているが、幻想的な巨幅。姚允在筆『倣宋元六家山水図巻』は色彩がきれいだった(残念ながら撮影禁止)。王冶梅筆『柳溪泛舟図』も少ない色数が効果的できれい。石濤筆『花卉図巻』は珍しく(?)墨画。蓮や菊の花を大きく描いている。

 近代になると、色彩豊かな作品が増える。でも「線」の存在感は薄れない。そこが近代日本画と異なるところかもしれない。張大千の『金陵赤山図』は蜃気楼のように宙に浮かぶ山の姿を描いたもの。淵上旭江の『海市図』を思い出した。傅抱石(1904-1965)になると、線の呪縛が消える。あ、横山大観の影響を受けたという解説があったかもしれない。

 個人的にイチ押しは蕭雲従の『秋山行旅図巻』。淡い色彩が美しいが、微妙に下手で「素朴画」っぽい。それでも「乾隆帝内府旧蔵品」だという(ちゃんと御覧の印がある)のが面白い。↓左下で馬か驢馬がひっくり返っている?



↓なんともいえない「ゆるふわ」感。古陶の染付の絵みたいだ。


しかし、東博の「名品ギャラリー」で見ると、特にとりえのないフツーの淡彩画に見える。どうしてかなあ…。

↓もう1点、袁樹筆『小倉山房図巻』も、丁寧な庭の植物の描き方が絵本みたいで可愛かった。左右対称の建物が「ちいさいおうち」に似てるなあ。



 この8室(中国の書画)は、ふだん半分が書、半分が絵画の展示なのだが、今回は部屋全体で絵画40点あまりが展示されている。質も量も眼福。また南京に行ってみたい。

 あとは、庭園の梅につられて、久しぶりに法隆寺館に寄った。それから、神田に出て、天理ギャラリーで第154回展『台湾庶民の版画・祈福解厄-幸せを願い、邪悪を祓う-』(2015年2月21日~4月4日)を見た。 美術展というより民俗文化の展示だったが、面白かった。台湾には、七星娘娘という信仰の対象がある。台南には七星娘娘を祀る開隆宮という寺廟があって、7月7日には、16歳の男女が両親とともに訪れ、紙で作った神殿の模型の下をくぐって、成人を祝うのだそうだ。面白い~。台湾は台北しか行ったことがない。台南にも行ってみたい。

 このあとは国立劇場で文楽鑑賞。翌日は、北海道に「暴風雪」の予報が出ていたので、夜便の予約を急遽午前便に変更して帰った。
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