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九州国立博物館 特別展『宗像・沖ノ島と大和朝廷』(2017年1月1日~3月5日)
仕事で福岡へ行くことになったので、自費で前泊して大宰府に寄った。梅の花が満開で暖かかった。九博は、なかなか来られないが、好きな博物館である。事前に特別展のバナーを見て「あ、沖ノ島か!(九博らしい~)」と早呑み込みをしていたら、見どころは「宗像・沖ノ島の国宝と大和の国宝・重要文化財を一斉公開」「考古学から読み解く日本神話」「史上初! 日韓の黄金の指輪が集結」の3点なのだそうだ。したがって、会場に入ると、奈良や大阪や埼玉で出土した埴輪や土器、銅鐸、銅矛などが並んでいて、なかなか沖ノ島に行きつかない。まあでも、これだけまとまった量の古墳時代の遺物を見る機会はあまりないので面白かった。イモガイの伝播と加工・使われ方が面白かった。
会場の半分くらいまで進むと、ようやく「神宿る島の源」と題したセクションが始まる。沖ノ島からも三角縁神獣鏡が出土していることに驚く。隣には奈良・黒塚古墳の三角縁神獣鏡も。よく見るとキャプションに「大和」「沖ノ島」そして「韓国」というマークが入っていて、展示品の由来が識別できるようになっていた。ほかにも奈良県出土の勾玉や子持勾玉、車輪石、鍬形石、石釧(いしくしろ)と沖ノ島出土のそれらを並べてみると、類似性がはっきりする。一方、金属製品、特に金製指輪は、韓半島との親近性を強く感じさせる。
途中に、沖ノ島の自然風景や宗像大社の沖津宮の映像を映し出す大きなスクリーンがあった。女人禁制の沖ノ島へは、たぶん私は一生、近づくことができないだろう。そう思うと、どんなに遠い外国の風景にも感じない、不思議な感覚を持った。
それから常設展(文化交流展示)へ。見通しのきくワンフロアで、先史時代から近代まで、日本とアジアを往還し、さらにヨーロッパとの文化交流も体感できるのがとても楽しい。複製品が多い印象だったが、今回、本物のいい仏画が出ていた。元代の釈迦如来図、南宋・陸信忠筆の羅漢図、南宋の諸宗祖師像は水陸画の一種。彫刻(アジア人の理想の姿)の部屋に、興福寺の五部浄の右腕があるのは驚かされる。空をつかむように、細い指を中途半端に曲げている。いつか本体と会わせてあげたいものだ。それから「アジアの面」で見た神楽面の荒神は、よく似たものが霧島神宮にあるというが、あごの長い赤い面だった。
交易関係では、対馬宗家旧蔵の各種の印(偽造印)が面白い。それらしい架空の人物の名前を刻んだりしている。ウンスンカルタは楽しい。「多彩な江戸文化」の部屋で、蘆雪の『宮島八景図』を見ることができたのも嬉しかった。
最後に1階エントランスホールの「博多祇園山笠」の飾り山。いつも同じものがあるのかと思っていたら、時々変わるようだ。現在の作品は『真田丸』にちなんで、表が「大坂冬の陣」、裏(見送り)が「大坂夏の陣」(
2018年8月11日~2017年3月頃予定)。見ることができてよかった。
↓冬の陣の大坂五人衆。上の方で床几に座っているのが家康。
↓夏の陣。これも大坂五人衆。燃え上がる大坂城を背景に秀頼と淀殿。