見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

正倉院展の参観記録

2021-11-05 14:20:13 | 行ったもの(美術館・見仏)

 個人的なメモとして、正倉院展の参観記録をまとめておく。このブログに記事があるのは、2004年の第56回展からだが、「このところ3年連続で行っている」と書いているので、第55回、第54回は行っている模様。その前にも一二回、行ったことがあると思う。

平成14(2002)第54回正倉院展
平成15(2003)第55回正倉院展

平成16(2004)第56回正倉院展
平成17(2005)第57回正倉院展
平成18(2006)第58回正倉院展
平成19(2007)第59回正倉院展
平成20(2008)第60回正倉院展

平成21(2009)第61回正倉院展
平成22(2010)第62回正倉院展
平成23(2011)第63回正倉院展
平成24(2012)第64回正倉院展
平成25(2013)第65回正倉院展

平成26(2014)第66回正倉院展
平成27(2015)第67回正倉院展
平成28(2016)第68回正倉院展
平成29(2017)第69回正倉院展
平成30(2018)第70回正倉院展

令和元(2019)第71回正倉院展
令和2(2020)第72回正倉院展
令和3(2021)第73回正倉院展

 まとめてみたら、20年連続で行っていることが分かった。埼玉県の奥地住まいだったり、北海道住まいだった時期もあるのに、よく続けたものだ。でも、まだまだ初めて見る宝物や新たな発見があるので、秋の正倉院展通いは今後も最優先で続けたい。

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2021年11月関西旅行:正倉院展(奈良国立博物館)

2021-11-05 10:11:33 | 行ったもの(美術館・見仏)

奈良国立博物館 『第73回正倉院展』(2021年10月30日~11月15日)

 正倉院展は、昨年同様、今年も完全予約制と聞いたので、チケット販売開始と同時に希望の日時を予約した。10月31日(土)朝9時の予約だったので、30分前に行ってみると、すでにピロティの折り返し2列目の中央くらいまで人が並んでいた。予約済なので並ぶ必要はないのだが、この開館を待つ時間も、正倉院展の楽しみなのである。

 9時ちょうどに開館。コロナ前のように、あっという間に会場内が人で埋まることがないのは、本当にありがたい。それでも冒頭の光明皇后の書『杜家立成』の前は混んでいたので、あとに回す。単立ケースに出ていたのは『刻彫尺八(こくちょうのしゃくはち)』。竹の表皮を彫り残し、全体を花鳥や女性の姿の文様で覆っている。『山水夾纈屏風(さんすいきょうけちのびょうぶ)』はシンプルな染織だが、左右対称の岩山・樹木・遠景の山並みが、仙界らしくて面白かった。雲に乗った小さな仙人が浮遊している。

 今年は視覚的に華やかな宝物が多いと感じたが、中でも随一なのが『螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)』。 比較的最近の記憶があると思ったのは、2019年に東博の御即位記念特別展に出ていたためだ。チョコレート色の紫檀の地に、乳白色とオレンジ色の螺鈿で、連珠を咥えた二羽のインコを表現する。大ぶりな文様が実に贅沢な感じ。捍撥(かんばち、撥受け)には、現物では分かりにくいが、楽器演奏を楽しむふくよかな唐美人たちが描かれている。こういう美品を見ると、天平の宮廷というよりも、直接、唐の盛世に想像が飛んでいくのは、最近の中国ドラマの影響である。

 『曝布彩絵半臂(ばくふさいえのはんぴ)』は袖の短い上着の一種で、正倉院には30着以上伝わっているが、彩絵が施された麻製のものは、今年の展示品のみだという。背中側に、唐草の蓮華の上で向き合う二羽のオシドリと、宝相華を咥えて後足で立ち上がった二頭の獅子が描かれていて、おしゃれなスカジャン(笑)みたいだと思った。繊維に残る成分から、当初の彩色を復元した図も掲示されていた。実は1階エントランスのバナーに、やけに可愛い獅子が描かれていて、どの宝物から取ったのか分からなかったのだが、これか!と判明した。『十二支彩絵布幕(じゅうにしさいえのぬののまく)』は何に使われたのか、よく分からないのが面白い。

 『漆金薄絵盤(うるしきんぱくえのばん)』も、今年のメインビジュアルに使われている。全然記憶になかったのだが、実物を見た瞬間、これは見たことがあると思い出した。蓮華をかたどった台で、香印盤を載せ、焼香を行ったと考えられている。確かに美しいのだが、手が込みすぎて、完全に実用を離れている点が、ちょっと正倉院宝物らしくない。ちなみに奈良博のホームページに上がっている「出陳宝物一覧」リストでは、前回出陳が1993年になっているが、2013年の誤りと思われる。

 最後の展示室には、筆・墨・硯・料紙などの文具類がまとまって出ていた。特に筆は、毛と紙を交互に巻き付けて作られた(有芯筆、巻筆、雀頭筆などと呼ばれる)という説明が、興味深かった。一つの筆に複数の種類の毛を用いたり、毛と紙の層の数、巻紙の種類もさまざまであるとのこと。割竹のキャップをつけた筆もあった。こういうの、中国の古装ドラマで再現されていないかな。絵紙や色麻紙は、作りたてのような色鮮やかさ。この色麻紙を用いた作品が、冒頭の光明皇后の『杜家立成』なのだが、やや右肩上がりの癖のある字で、墨をつけすぎの箇所もあり、自由でのびのびした書体が微笑ましかった。

 役人や写経生が使用したと思われる『早袖(はやそで)』や『白絁腕貫(しろあしぎぬのうでぬき)』も面白かった。『白絁腕貫』は左右が紐でつながった腕カバーだが、紐に使用者と思われる「高市老人」の名前がある。この解説を読んで、あれ?と思って、慌てて展示室を戻る。『正倉院古文書正集第19巻(伊豆国正税帳ほか)』の紙面に「高市老人」の墨書があったのだ。ただしこれは、本来の文書の上にあとから書き付けたメモのようにも見えた。また、同一人物であるかどうかも分からない。展示図録を読むと、高市老人の閲歴は(正倉院文書から?)かなり分かっているようだ。無名の人物なのに、面白いなあ。

 図録とあわせて、正倉院カレンダーを初めて買ってしまった、来年1年はこれを眺めて過ごすのである。

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