見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2021年11月関西旅行:畠山記念館の名品(京博)ほか

2021-11-25 16:48:22 | 行ったもの(美術館・見仏)

京都国立博物館 特別展『畠山記念館の名品-能楽から茶の湯、そして琳派-』(2021年10月9日~12月5日)

 週末関西ツアー2日目は終日京都で過ごす計画で、まず京博に赴く。本展は、荏原製作所の創業者である畠山一清(1881-1971、即翁)が蒐集した美術品を収蔵する畠山記念館のコレクションを紹介するもの。前後期で200件以上が展示される。港区白金台の畠山記念館(2019年3月から休業中)は何度か参観しており、庭は広いが小さな美術館という印象だったので、こんなに多数のコレクションを所有していると知って驚いた。

 いちばん楽しかったのは、展示室1室をまるごと使った能面・能衣装の展示。展示ケースの壁に能舞台ふうの板壁の壁紙をあしらうことで、衣装が一段と映えて見えた。華やかな赤地の『扇面枝垂桜巻水文様長絹』、涼しげな緑で統一された『竪縞に桐唐草・花菱入格子文様段片身替厚板』が私の好み。

 畠山記念館を代表する名品、雪村の『竹林七賢図屏風』と光悦の『扇面月兎画賛』を見ることができたのは嬉しかった。伝・牧谿筆『瀟湘八景図』のうち『煙寺晩鐘図』は、正直、何が描かれているのかよく分からない。伊賀花入の豪快な造形は理解していると思っていたが、『銘:からたち』の破天荒ぶりには驚いた。光琳筆『四季草花下絵古今集若巻』は、いろいろなバージョンがあるが、これは抜群に豪華でいいと思う。残念ながら、鈴木其一の『向日葵図』(前期出品)は見ることができなかった。私は、どうもこの作品とは縁が薄いのである。

蓮華王院 三十三間堂(東山区)

 次の伝道院の見学予約まで時間があったので、三十三間堂に寄っていくことにした。何度も来ている場所だが、ちょっと変化に気づいたので書いておく。本堂に入って、二十八部衆を端からゆっくり見ていったのだが、中央の本尊まで来て、あれ?と思った。二十八部衆のひとりで、私の好きな婆藪仙人が本尊と同じ台上にいらっしゃる…。よく見ると、同じようにこれまで千体千手観音の前列にいらしたはずの、梵天、帝釈天、弁財天も台上にあって、本尊の四隅を固めている。

 帰京してから調べたら、三十三間堂を管理する妙法院では、2018年、千体千手観音+中尊の修理完了と国宝指定を機に、二十八部衆像の配置換えと一部の像の名称変更を行い、学術的により正確な名称と配置に改めた(Wiki)のだそうだ。

三十三間堂で配置換え 80年ぶり、風神・雷神像(産経ニュース 2018/7/31)

 三年経って気づくのも迂闊な話だが、このところ、コロナ禍で旅行の機会が少なかったせいもある。しかし記事を読むまで、風神と雷神の位置が入れ替わったことは気づいていなかった。本堂には「世界的にも唯一の貴重な形式です」と掲示してあったが、どうなんだろう。台上に安置された「四天仙」、拝観者から遠くなってしまって悲しい。

 配置の変更以外では、絵馬のいくつかが梁の上から降ろされ、展示されていた。「総矢数〇本、通し矢〇本」の数字を見て、これだけの本数を射続けることのできる体力に驚く。あと、新しいサービス(?)で、千体千手観音の写真を1体ずつ検索・表示できるデータベースの端末が置かれていた。館内オンリーなのかな。外にも公開してくれたら楽しいのに。

東寺宝物館 『東寺の星マンダラ-除災招福の祈り-』(2021年9月20日~11月25日)

 伝道院と祇園閣を見学したあと、最後に東寺へ。そろそろ夕方で、弘法市の出店が片付けを始めていた。本展は、寺宝の中から、星や北斗法(北斗曼荼羅=星曼荼羅を本尊として行う修法)に関する仏画・仏像を紹介するもの。室町時代の『妙見菩薩像』(四臂で片足を上げている)など、珍しい仏画をいくつか見た。東寺には、立体の小さな九曜像A~Fセットも伝わっている(全て江戸時代、9躯揃っていないものもあり)。九曜とは、日・月・火・水・木・金・土の七曜星に、計都星(彗星)と羅睺星(日食・月食)を加えたものをいう。木像の姿は、女性的だったり鬼神のようだったりした。

 また、北斗法は強力で重要な修法である。歴史上、天皇の息災を祈る御修法において生身供(弘法大師へのお供え)が「破裂」したことが複数回あり、凶事を避けるため、北斗法を修したという記録があるそうだ。これ…今でも行われているのかもしれないが、生身供が破裂や鳴動したなんて、外に言えないだろうな。密教の奥深さを感じつつ、京都の1日が終わった。

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